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パラレルの君  作者: Log


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6/6

戦いの行方

復活したとはいえど勝ち目がある訳ではない。攻撃力で勝負するのはあまりにも無謀だと思う。

そこでナギは決心を固める。


「戦略的撤退っ」


と言いながら職員室に姿を紛らす。

勝ちにこだわる、彼女なら必ず追って来る。そう言う確信が何故だかあった。

職員室は障害物が多くすぐに逃げることが困難だ。

そして物が多いおかげで隠れる場所が多い。


「まちぇ!」


案の定追って来る。そして彼女が部屋に入った時、ナギの姿はない。そう隠れたのである。


「隠れるな、正々堂々戦え」


強くそう言いながら、斬撃を連発しまくる。


「正々堂々って、人間と化け物じゃ釣り合わねっつーの」


と小声で嘆く。

幸い、その斬撃はナギを捉えることはなかった。

職員室の机の残骸やら小物が無造作に散らばっている。

斬撃が止み静寂に包まれるこの部屋に、荒い呼吸音だけが鳴り響く。ここで一つの仮説を立てる。そう斬撃の回数制限。

きっと体力を消費するのだろう。呼吸が荒くなっている事からそんな事を思いつく。だが斬撃の原理はわからない。そもそも斬撃なのかもよくわからない。彼女の足音がこちらへ近づくのを鼓膜が捉える。

一つまた一つと音が大きくなる。

心臓の音が大きく、早くなる。

呼吸をも忘れるくらい緊迫しているのを感じる。

音が最大限になった時、そこから急に出て、渾身の回し蹴りをかます。それはまさかの彼女を捉える。


「オラァァ!」


「うっ」


聞いてそうなセリフとは裏腹に彼女はびくともしない。

そう、鱗で守っていたのだ。初めて蹴ったためか脛に激痛が走るがアドレナリンが脳を支配しているためかあまり気にならない。


「鱗でどこでも守れるって聞いてないんですけどっ」


「やっと見つけた。今度こそアタシの勝ち」


指を上に振る。その挙動がナギの目は捉えていた。

指の方向に斬撃が飛ぶのは、さっき死んだ時に分かっている。

咄嗟の横っ飛びが、ナギの命を繋ぐ。


「あっぶねー!また真っ二つになるとこだったぜ」


「なんで、よけりぇ……」


「俺の動体視力舐めんな!ドッチボールで一回も当てられたことねーんだよ!」


軽口を叩いているが当然、彼に余裕はない。


「ッチ」


彼女の様子はさっきと違い何か焦りを感じているようだった。

余裕が消えたと言うことは仮説通り、斬撃には回数制限、体力をそこそこ使うようだ。

そしてナギは室内を不規則に走り距離を取る。


「オラオラ、どうした?お得意の斬撃は出さないんですか〜

あっそか。体力クソ雑魚だからもう出せないか〜」


煽りを入れ斬撃を出させる魂胆だ。


「っるせー、さっさと死ね」


彼女の声が一段階いや二段階下がる。

そこにはただ純粋な殺意だけがある。


「ヤッベ」


彼女は次々と斬撃を飛ばす。

ナギは最後の切り札を出そうとしているが、その斬撃がその隙を潰す。


「まだそんな出せるとか聞いてないんですけど!」


「喋るな。汚い息を吐くな」


彼女は斬撃での攻撃をやめ、一気に距離を詰める。


「そんな口臭きつかった?毎日歯磨きは欠かさずしてるから、意外と心に刺さるんですけど」


そんなことを言いつつ、どさくさに紛れてマッチをだし火をつける準備をする。


「何もしゃせない」


「っ……今度は打撃戦k」


怒涛のラッシュを噛ます彼女の打撃が一発、ナギを捉える。

その打撃の衝撃は内臓を掻き回されるような激痛。

そして宙を舞い壁にめり込む。


「ヤッベ……体が……動かね……」


「最後に言い残すことは?」


彼女の表情に温度はなく一切の隙がないように見える。「どっかの中ボスみたいな発言じゃん」と頭に一瞬だけ浮かんだことは置いといて、ここを逃したら負け確。彼女は集中している。以上なほどに。


「ああ、そうだな。今だ!ワトソン!後ろからやっちまえ!」


彼女は集中している……だからこそやってしまった。後ろを向くと言うほんの一瞬の隙。


「誰もいな…」


「おらー粉塵様の出番だー」


そして粉塵が無造作に宙を舞い、彼女の視界を奪う。

シュッとマッチの火をつける音が小さくなる。


「お前…….や……」


「俺に隙を見せたのはミスだったな!慢心、それがテメーの敗因だーー!あとワトソンって誰ーーー!」


雄叫びを上げながら、その炎を投げ込む。その瞬間辺りは消し飛び、鼓膜が破れるほどの騒音が辺りを包み込む。天井が崩れ、何が何だかわからないくらいグチャグチャになり、無数の瓦礫が全てを覆う。それはもはや部屋の形をなしてない。


死んだと思う隙もなく、ナギの命は儚く散った___





「___なんか爆発音したんですけど」


主犯の彼女が言った。


「大丈夫、ナギなら」


そんな確証は全くない。だがシオンの目には光が宿っている。


「見にいきましょうよ、流石に心配…」


モブの片割れが重い口を開く。


「じゃあここから出るなら、なんか武器になるもの探そうよ」


「そ、そうだね」


棚にはよくわからない薬品がある。粉塵はナギが全部持って出てしまったのでない。武器はさっき拾った木の棒、いや棍棒しかない。蜘蛛の巣がはった不気味な部屋、足音がよく聞こえる。足音が……


「みんな静かに」


小声でシオンが警鐘を鳴らす。


「なんだよ、急に」


人差し指を立てそれを口の前に置く。それは静かにと言う合図だと視界の悪い今でもはっきりと分かる。


トン、トンと言う音が強調される。そして理科準備室の扉の前でその音が消える。ナギが帰ってきたんだと言い聞かせる。

モブがドアに近づく。きっと確認したかったのだろう。最大限まで近づきドアノブに手を掛ける。


「う…あ…」


彼女の背中から手が生えている。いや違うドアごと体を貫かれたのだ。赤黒い液体が一滴、二滴とこぼれ落ちる。そして奴が手を引いた時、彼女の血は床を染め、シオン達の足元を濡らす。

そして奴がバカデカい斧を片手に周辺の壁ごとドアをぶった斬る。


逃げ場はない。そんな状況が彼女らの絶望をさらに強くするのだった。

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