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パラレルの君  作者: Log


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3/6

再会

水が薄く張ってる地面。

所々に咲いているドス黒いような赤い花が不気味さを際立てている。


「わっ、めっちゃ滑る」


いつものような能天気な反応は精神が安定している事を暗示している。


「お前、切り替え早いな…俺まだ大分混乱してんだけど」


「バカだな…こういうのは大体夢なんだよ!ほっぺつねって」


「あ…うん」


シオンの頬を力いっぱいひねる。


「いだだだだだ!

もういいよ…とりあえず夢じゃなさそう…」


ナギは無言でもう一度同じことをしてやった。

彼の表情に感情はない。


「ば、バカ!もういいって行ってるだろ!」


「いや、まあ日頃のお返し?的な?」


「あとで殺す」


小声で言ったおかげか、

幸いナギの耳には届かなかった。


どうやらここは夢の中ではないらしい。

動かないのもなんなので二人は校舎内を散策する事にした。


「植物が壁に寄生してるのか?」


「そうだね…根っこが壁に引っ付いてるし…」


「あ、見てみて」


「うん?」


シオンの方に目をやると木の棒を持って得意げな顔をしている。


「木の棒だ!」


小学生低学年の様なはしゃぎ方をする。


「…で?木の棒がどうかした?」


冷静に返す。


「木の棒?何を言ってるのかねワトソンくん」


「誰がワトソンだ!」


ワトソンって誰と思ったが、ツッコミが反射的に出てしまっていた。


「これは木の棒ではない…棍棒だ!」


鼻息を荒くしてして語る彼女の顔には興奮と喜びが同居している様だった。


「ドラ⚪︎エかよ!」


ナギは渾身の一撃を放つが、いまの彼女の熱量の前ではそんなもの蚊が刺した程度のものでしかない。

そんなことを言いながら歩いていると、人影が見えた。複数の影だったので少し警戒を強める。

音を殺して近づく…するとその正体を認識した瞬間、呆気に取られる。


その正体はなんと帰ったはずの3人組だったからだ。


「ゲっ」


さっきまで子供のように明るかったシオンの表情が雲掛かる。

いつのまにか霧みたいものが濃くなっていることに気がついたが、そんな事は今は気にならない。


「ここどこかわかる?」


強めの口調でリーダーっぽい茶色の髪のやつが尋ねる。そうシオンを屋上に呼び出した3人組の主犯の人物。


「いや、わからない。だから脱出できないか探してる」


シオンが答える気配がなかったので代わりに答える。

霧のせいか首元にかゆみを感じる。


「まあ、お互い出れないわけだから、ここは協力しない?」


彼女がそう提案した時シオンは目に温度がないと思えるくらいの冷たい目をそいつに向ける。


「ああ、わかった」


ナギは渋々、答える。あまり気は乗らないが、この選択肢が最善かつ穏便に終わると思ったのも事実。


「それはそうと、お前」


茶髪のやつがシオンを睨みつける。

きっとシオンの殺気を帯びたような視線がずっと刺さっていたのだろう。


「何その目つき?小動物のメスの分際で」


その発言は明らかにシオンを下に見ている事を彷彿とさせる。

そいつが迫り、胸ぐらを掴み拳を上げる。

シオンの表情に変化は無く、彼女をじっと見ている。

その時ナギは怒りに近いドス黒い何か自分の中で感じた。


「また殴らないと、わかんないのかなっ」


拳が下ろされる瞬間、ナギが間に割って入る。

ナギの額は赤に染まるがそんな事意に返さず同じことを彼女にやる。

骨が折れた時のような鈍い音が廊下に響く。


「いった!何すんだよお前!」


彼女は頬に手を当てる。

その手は痙攣を起こしていた。おそらく人を思いっきり殴ったことがなかったのだろう。

他の二人も彼女の肩を持ち、「男のくせに」とか「普通じゃない」とか言った言葉でナギを非難する。


「ぎゃーぎゃーうるせーな…弱い犬ほどよく吠えるってこのことだな」


勢いで言ってしまったのは昔からの悪い癖だ。

だがこの勢いを止める術を彼は知らない。

血を流しながら笑みを浮かべているがその顔には同時に憤怒が宿っていた。


「男のくせに、女の子を殴るなんて、どうかしてる」


モブ二人が騒ぎ立てる


「殴られる覚悟のないやつが人を殴ろうとすんじゃねーよ、バーカ!協定なんて…!」


と放った時ナギは背筋が凍るような嫌悪間に包まれる。

命を絶たんとする獣の気配。

横にいる人型の黒い何かを横目でだが認知した。

異質な何か、明らかな化け物、この世のものとは思えない。全身黒っぽく、異様に長い腕、目が無く不気味な口だけがついている顔。

やつは霧の中から突然現れた。


首元のかゆみが強くなる。


本能が察知する…何かくる…

そして死を本能的に連想する。


その勘があっているかいないかの正誤はわからない。

でもこのまま止まっていたら確実に命は消える。


「頭を下げろーーー!」


シオンの胴辺り飛びつき、一緒に倒れる。


彼女らも頭を下げるが内一人のモブが反応が遅れる。

たったコンマ1秒___

その瞬間、そいつの頭が床の転がる。

そのあと胴体が床に力無く転がる。


「あああぁぁぁ」


頭を下げた二人が叫ぶ。

目覚まし時計のごとく頭に響く。

黒みがかった血が辺りに広がるが無視して

ナギはシオンを連れてその場から即座に逃げ出す。

幸いやつに動く様子はない。なぜかはわからない。見捨てるのは可哀想と言う情を持ったせいか「今のうちに逃げろ」なんて叫んでいた。

その隙に三人組の二人が俺たちの後を追ってきた。






なるべく遠くバレにくい理科準備室に移動し息を潜める。カタカタと鳴る時計の音が静けさと不気味さを際立てている。

しばらくして茶髪の彼女が口を開く。

正気を取り戻すまでにどれくらいの時間がかかったかはわからない。


「な…なんなのあの化け物…」


声が震えている。


「知らねーよ、ただ一刻も早くここから出なきゃいけないってことはわかる。俺は周囲を探ってくるからシオンを頼む」


彼女らに任せたのは大人数のほうが安全と考えたためだった。あまり気は乗らないが。


霧が薄くなっているおかげで視界は良好だ。


「勢いで出てきちゃったけど…どうしようか…」

(でもあいつらがいたってことは他のやつもいるかもしれねー)


留まって手がかりゼロのままの隠れているのは死をただ待つのに等しい。

一応理科室を出る前に少量の粉塵とマッチを手に入れている。全部使えば周囲が粉々になる程度の量。


(護身用にしては十分すぎる)


静寂の中、自身の足音と時計の針の音だけが廊下に響く。

異世界なんていまだに信じられない…いや異世界というより、並行世界に近しい感じがする。


理科準備室から最長のところにある職員室を見回った。

ずいぶん離れたせいか、さっきのように霧が濃い。そんな事を想っているといつの間にか視界は白で埋め尽くされる。

緊張の中にいたせいか霧のせいか、急な眠気に襲われる。


(眠い…寝ちゃだめだ…でも___)


彼の抵抗も虚しく意識は闇に落ちる。

どれくらい眠っていたのだろうか。

辺りが真っ黒の場所で目が覚める。

すると銀髪の少女が目に入る。彼女はセンニチコウの花の髪飾りをしている。


「お、起きた起きた」


少女がニコニコしながら話しかける。

背丈はなぎより少し低い、百五十五センチくらいの子。

青みがかったその眼光がナギを照らす。

光がないはずなのに顔がしっかり見える。


(ここはどこ?何この…漫画とかでありそうな精神世界的なとこ)

声を出そうとしたが喉元で留まる。

寝起きに声が出ない事は彼にとって多々ある事だった。


「ここ、どこって顔してるね。いいよ教えて上げる。ここはね、君の精神世界だよ」


ナギの思った事がそのまま回答された。

天国、地獄ではないので少し安心したと言う感想と心の中を読まれているのではと言う疑問を同時に持ったのであった。


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