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お昼の時間です  作者: ギーク
始まりのお昼
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始まりのお昼

ある日、私たちのお昼時は特別になった。















「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ヒマア」

そう唸るのはある1人の女性。ストレートの黒髪にツリ目がちな切れ長の目が特徴の美人だが、容姿を台無しにするオヤジ臭い唸り声をあげている。


「だからセリナはモテないんだよ。」

唸り声をあげるセリナに容赦ないのは、茶髪のショートボブとグラマラスなスタイルが特徴のリコである。


「コラコラー、ダメだよリコちゃん」

そうリコを制したのは色白の肌と大きな目が魅力の、150cm程の背丈と1番背が低いユキミだった。


「いや、セリナはモテないよ?」

折角ユキミがフォローしてくれたのに、1番失礼な発言で台無しにしたのはどこかあどけなさが残る、可愛いと美人とナチュラル失礼を兼ね備えた存在のミキであった。




ここで少し、今登場した4人の関係性について説明しよう。

この4人は高校時代の同級生であり、親友同士である。

リコの祖父母が経営していた「ストロベリーローズ」という名の飲食店を今は親友4人で経営しているのだ。

店は基本的には暇であり、元々の常連さんやミキ目当てに足を運ぶ人が主な客層となっている。


店の特徴としては良くいえば多種多様のメニュー、悪くいえば全く統一性のないメニューであろう。

4人の味覚がかなりバラバラなのと、作れる料理に偏りがあるのが原因である。

そして困ったことに、それは4人それぞれの性格や人間性にも当てはまるのだった。


以上。




今日はかなり雨が強くお客さんが来ない為、ものすごく暇であった。

そのせいか、退屈を嫌うセリナはやや不機嫌である。

「モテないモテないうるさいよ!それは世の男がおかしいんだ!」

「世の男じゃなくてセリナが変な人なんだよ。」

「ミキは変な子だけどモテるじゃないか!」

リコの意見に納得がいかなかったのか、急に矛先をミキに向ける。

「えっへへ。」

矛先を向けられたにも関わらず余裕をみせるミキ。

「モテる」という部分を否定せず、満更でもなさそうなミキの態度に

「ムキィィィィィイイ」

セリナは確かに矛を向けたはずが、余計な傷を負っただけであった。

「大丈夫、いつかいい人が現れるって。」

「優しいのはユキミだけだよぉ。」



(カランコロン)


騒いでいたところに、店の扉が空いた音がした。

4人が一斉に入口を見てみると、60歳前後であろう紳士がいた。ごちゃごちゃした店の雰囲気には似合わない上品な空気を纏った男性。

この店の常連さんである。

名を佐々木さんと言うが、あまり日本人らしい顔立ちはしておらず、美形のイケおじである。ハーフなのだろうか。

ありがたいことに、2ヶ月前ほどから毎日ランチに来てくれる。

今はかなり親しくなっており、いつも食後に癖の強い4人と談笑して帰るのだった。

たまに仕事を手伝ってくれることもある、素敵なお客様であった。


「いらっしゃいませ!佐々木さん!」

先程までの不機嫌はどこに消えたのか、満面の笑みのセリナが迎える。

「こんにちは。今日も仲良くしてるかな?」

「こんにちは!もちろん、仲良しですよ!」

「佐々木さん、今日は何を食べますか?」

「ウチのオリジナル料理いかがです?」

佐々木さんの挨拶に対してユキミ、ミキ、リコの順で返事をする。

皆、佐々木さんが大好きなのだ。


4人に絡まれながらも、席に座ってメニューを見る佐々木さん。

「今日は煮込みハンバーグにしようかな。」

今日のランチが決定した。


佐々木さんにはいつも通り食事を済ませた後に、リコのオリジナル料理を食べて貰った。

カレーに納豆とプリンを合わせた、ありえない料理だ。ハンバーグを食べた後なので、カレーはかなり少なめの量で提供した。だが、いくら量が少なくとも味が酷いのでカレー完食後は吐く寸前になっていたのであった。


「ウプ…それにしても、リコちゃんは相変わらずオリジナル料理の味がひどいね。」

最初にオリジナル料理を食べたときは無理をしてでも美味しいと言ってくれた佐々木さんだが、親しく遠慮がなくなってからは素直に味の感想を言ってくれるようになった。


「リコはレシピ通りだと美味しいんですけどね。舌バカだからかアレンジさせるとちょっと…」

興味本位で味見をしたミキが遠い顔をする。


ミキの反応に納得出来ないリコ。

「いやいや、この組み合わせこそが最高だから!」

納得出来ないリコに納得出来ないセリナ。

「流石にないよ。どんな舌してるのさ。」

リコとセリナは顔を見合わせた。

そして…

「これが美味しくないなんて嘘だ!」

「カレーに納豆はともかく、プリンは無いわ!」

言い合いに発展。


「まぁまぁ、リコちゃんセリナちゃん落ち着いて。」

佐々木さんがなだめても収まる様子のない2人。

結局2人は互いの譲れない主張を賭け、何故かババ抜きで決着をつけることにした。


そして10分後…


負けたのはセリナだった。

余程悔しかったのか、長々と負けた言い訳を始めた。

セリナ曰く、〝負けた〟のではなく〝負けてあげた〟らしい。

言い訳を開始し、30分ほど経過してだろうか。

長すぎる言い訳に全員が飽きてきた頃

「ちょっと4人にお願いがあるんだよね。」

と、佐々木さんがゆっくり口を開いた。


どこか表情が暗い気がする。

今までにない雰囲気を察知した4人は真面目に話を聞くことにした。

トランプを急いで片付け場を整え、佐々木さんの周りを4人で囲った。聞く準備は万端である。

そして、佐々木さんが口に出したのは


「「ちょっと異世界を助けてくれない?」」


「はぁ?」

佐々木さんの話に4人とも同じ反応をした。

深刻な話しをされるのかと思いきや、異世界?

当然、話を聞いた4人は唖然とした顔になった。

そんなユキミ、ミキ、リコ、セリナの間の抜けた顔を見た佐々木さんはクスクスと笑い、

「まぁ、そういう反応になるよね」

と1人納得したような表情をして微笑んだ。


「話の続きをするね。君達には異世界に行き、それぞれの世界が抱える問題を解決して貰いたいんだ。」


そこまで話すと、当然困惑の声が上がる。声を上げたのはセリナだった。

「佐々木さん?いきなり異世界って、なにか変なものでも食べましたか?」

「あ、それならさっきリコちゃんのオリジナル料理を…」

「あれは私の最高傑作です。」

「あれでなんだね…」

「佐々木さん、やっぱりババ抜きでは私が勝つべきでしたね。」

「セリ、まだ言ってるよ…」

全く現実味のない相談であり、話も逸れかけていたので冗談かと4人は思ったが


「いけない、君たちと話すとすぐ話がそれてしまうな。何だっけ…。そうだ、異世界に行って欲しいんだ。」


まさか、言い直すとは予想していなかった。

佐々木さんは冗談が好きな人だが、こうも変な冗談は珍しい。

反応に困っている中、とりあえずミキが

「どういうことですか?」

とシンプルながら良い質問をしてくれた。


また話を聞く空気になったことで佐々木さんは語り始めた。


「少し長くなるけど、聞いて欲しい。少し前に言った通り君達には異世界行き、その世界の問題を解決して欲しいんだ。異世界には困った人が多くてね。そんな人たちを君たちに助けて貰いたいんだよ。私が本来はやるべきなんだけど、少し無理な事情があるから。セリナちゃん、ユキミちゃん、ミキちゃん、リコちゃんにお願いしたい。」


いつも通りの優しい笑みを4人に向けながら。

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