クラスメートだけが知る真実
「やっぱり彼女は許しちゃくれなかったのよ…」
「だから止めようって言ったのに…」
「もう遅い。全てが遅いんだ」
アタシを抜かしたクラスメート全員が、夜の屋上に集まっていた。
彼等の頭の中に浮かぶのは、二ヶ月までの出来事。
その時も夜で、屋上にクラスの全員が集まっていた。
そう―篠原紅海も。
だが様子はおかしかった。
篠原紅海以外、全員が嫌な笑みを浮かべている。
追い詰められた彼女は、手摺の向こうへ追いやられた。
必死に手摺につかまるも、クラスメート達は手摺越しに彼女の体を押す。
何度も手を離しかけては、慌ててつかみ直す彼女の様子を、全員が楽しそうに見ていた。
篠原紅海は呼び出された。
クラスメート達から、今までのことを詫びたいと言われて、深夜屋上に来た。
だがクラスメート達は、心を入れ替えていなかった。
のこのこやって来た彼女に、次々と冷たい言葉をかける。
恐怖に脅える彼女の体を何度も押して、誰かが手摺をつかむ指をはがし始めた。
彼女の悲鳴が響くも、口元を押さえられる。
そして手摺から両手が離れた状態で、彼女の体は押されて…落ちた。
一瞬の出来事だった。
誰が原因かなんて分からないぐらいの人数がいた。
全員、すぐに屋上から逃げ出した。
そして次の日、警察やマスコミが動いた。
けれど自分達のせいだとは言えなかった。
何より受験があったし、誰が原因かなんて分からなかった。
だから全員で黙っていることにした。
だけど次から次へと不幸な出来事に襲われた。
もう、逃げる術もない。
「きっと全員が生け贄になれば、終わるよ。担任も、すぐに追いつく」
「だね…」
全員、手摺の向こうへと立ち、みんなで手を握った。
「篠原紅海さん、そして『みぃ』。本当にごめんなさい」
そう言って、全員の体が前のめりに倒れた。
地面に次々と降っていくクラスメート達の肉体を、アタシは冷静な目で見ていた。
屋上の片隅から。
クラスメート達がここへ集まることは、教室にいればイヤでも耳に入った。
だから来たのだ。
彼等が本当に死ぬのかどうか、見届ける為に。
全員が地面に落ちた後、アタシは踵を返した。