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「しょーがない先生とクラスメートですね」
アタシは深く息を吐くと、ズイッと顔を近づけた。
「なら先生、噂には噂で対応しましょうよ」
「どっどうやって?」
「アタシが今から言うことを、それとなくクラスの1人1人に言ってってください。結構効果あると思いますよ?」
アタシはニッコリ笑って、その方法を伝えた。
『みぃ』というのは、この学校の守り神。
篠原紅海はその守り神を信仰していた。
だけど彼女は自殺をしてしまったことから、守り神は悲しんで暴れている。
この悲しみを鎮める為には、彼女が自ら命を絶った屋上へ行き、お供え物をして、心から成仏を祈れば、いずれは悲しみも癒えるだろう。
「―と伝えてください。いきなりはムリですが、そのうち効果は発揮すると思いますから」
「あっああ」
数週間後、効果は少しずつだが現われていた。
クラスメート達の顔には、少しずつ笑顔が出てきた。
アタシへの扱いも、普通の友達のようになっていった。
そこでふと、彼女が命を絶った場所へ行きたくなった。
本当に言ったことがやられているのか、見てみたくなったのだ。
放課後、1人で屋上へ向かう。
けれど扉は鍵がかかっていた。
扉には張り紙がされていて、『立ち入り禁止』となっているらしい。
けれど、扉のすぐ隣には窓があり、鍵は内側にある。
だから鍵を開ければ、窓から屋上に出れる。
…この造りは意味があるんだろうか?
疑問に感じながらも、花束やお供え物がしてある場所へ向かった。
多くの花束や、お供え物がある場所へ立った。
ここで彼女は…。
ぎゅっと目を閉じ、心を静める。
ふと開けると、小さなアルバムが目に映った。
手にとって見ると、生前の彼女とクラスメート達の写真集だった。
最初のうちは楽しそうな彼女の笑顔。
だけど捲るうちに、笑顔が曇っていく。
最後の方では、肩まで伸びていた髪が、ざんばらなショートカットになっていた。
多分…切られたんだろうな。
それでも彼女は笑顔を絶やさなかった。
自分には守護天使がいるから、と…。
最後まで『みぃ』の存在を心の支えにしていたんだろうな。
アタシはアルバムをぎゅっと抱き締める。
その衝撃で、一枚の大きな写真がアルバムから出た。