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今までスラスラしゃべっていた男子生徒は、そろそろ限界らしい。
「ふぅん…。ねっ、その子の名前って何て言うの?」
「篠原…紅海」
「へぇ。他人の空似かしらね?」
「たっ多分、な」
そう言うとついに耐え切れなくなったのか、向こうへ行ってしまった。
その後はまあ無事に(?)過ごせた。
空気が重くなったのは、5時間目の体育の時だった。
女子は体育館でバスケットボール。
男子は校庭でマラソンをしていた。
しかし授業中に、校庭の方から大きな音と悲鳴が響いてきた。
「なっ何?」
驚いて数名の女の子達と共に、外に出た。
すると数人の男子生徒が倒れていた。
そして校庭には大きく長い木製の棒が倒れていた。
「『みぃ』よ…!」
「『みぃ』の祟りだわ!」
「はっ? 『みぃ』?」
校庭の様子を見て、女子生徒達は口々にそう言った。
顔を不安そうに歪めながら。
「『みぃ』って何? ネコ?」
「違う…。『みぃ』は篠原さんの守護天使なの」
「はあ?」
そこで体育の先生に呼ばれ、会話は終わってしまった。
けれど6時間目の自習時間に、詳しいことを聞けた。
「篠原さんってね。明るくて良いコだったんだけど、時々変なことを言ってたの」
「それが『みぃ』という存在。何でも『みぃ』は篠原さんの守護天使で、守ってくれる存在なんだって」
「でも彼女は死んじゃったから…『みぃ』が祟っているんじゃないかって噂が流れているの」
「何で『みぃ』がクラスのみんなを祟るのよ?」
アタシの一言は、クラス中を凍り付かせる威力を発揮してしまった。
「もしかして…自殺の原因って、イジメ?」
なので思いきって言うと、今度は何かが壊れたような音がした。
「ちっちがっ…!」
「何の証拠があって、そんなこと言うのよ!」
「だって祟られる心当たり、あるんでしょ? しかもクラスメート全員が」
アタシの冷静な一言に、全員目を見張ってしまった。
「うっうわーん!」
すると1人の女子生徒が泣き出し、次々と泣き出す生徒が増えた。
「あっアレ? マジだったの?」
軽い気持ちで言った一言だったのに、思った以上にダメージを与えてしまったらしい。
…その後、騒ぎを聞きつけた担任に呼び出されたのは言うまでもない。