「行方不明」ショートショート
山田という男が、ある日突然姿を消した。
親しい友人も、同僚も、誰も彼の行方を知らない。何の前触れもなく、完全に消えたのだ。唯一の手がかりは、彼の部屋で見つかった一枚のメモだった。
メモにはこう書かれていた。
「誰も信じるな」
警察はすぐに捜査を開始したが、彼が行方不明になった理由は全くわからない。山田には借金もなければ、敵もいなかった。さらに奇妙なことに、彼の銀行口座も、クレジットカードも、使用された形跡がない。
ある夜、山田の親友である中村は、そのメモをじっと見つめていた。「誰も信じるな」という言葉が、頭の中で繰り返される。彼は一度も、その言葉を深く考えたことがなかったが、急に不安を感じ始めた。
「もしかして、誰かが山田を消したのかもしれない…?」
彼の疑念は膨らんでいく。そして、その夜、ふと気づいた。山田の失踪の直前に、彼自身が何度か奇妙なことを言っていたのを思い出した。
「俺、最近誰かに監視されている気がするんだよ…」
その瞬間、恐怖が中村を襲った。彼自身も危険にさらされているのではないか?心臓が早鐘のように打ち始め、背中に冷たい汗が流れる。中村は警察に行くべきか迷ったが、ふと、田中のメモの言葉が脳裏をよぎった。
「誰も信じるな…」
警察も信じられない?中村は混乱し、どうしていいかわからないまま、そのメモを握りしめた。
数日後、中村もまた姿を消した。
そして、彼の部屋には、また一枚のメモが残されていた。
「誰も信じるな」