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怪人ノーフェイス

怪異と遭遇したら、あなたならどうしますか?

僕は都市伝説が好きです。中でも、怪異系の都市伝説が好きです。八尺様とか、トイレの花子さんとかそういうのです。ですが、そのほとんどは創作だと思っていた時期が私にはありました。でも、この間私の身の上で怪異と出会ってしまいました。それは、1か月前のことです。


 その日はいつも通り、大学の講義が終わり自宅に帰っておりました。すると、自分の郵便受けに固いボール紙が入っていたのを見つけました。見て見ると、手紙のようでした。


手紙には、以下の内容が書かれていました。




【今夜、あなたの顔を奪いに行きます 怪人ノーフェイス】




始めて見た時は映画の宣伝か、誰かのいたずらかと思いましたが、調べてみると最近話題になっていた怪異の一つだったのです。名前の通り、顔のない怪異「怪人ノーフェイス」と言うそうです。怪盗のようにターゲットに予告状を送り、その人物の顔を盗み取るという怪異だそうです。実際、ノーフェイスからの予告状が届いたという人もいたそうですが、その誰もが被害にあっていないことから信ぴょう性に欠けるものだとスルーしていました。




「こ、今夜? まさかな......」




僕はその予告状を棚の奥にしまって、見なかったフリをしました。その日の夜は、目を閉じても眠れそうになくずっとノーフェイスのことばかり気にしていました。するとトントントンとドアを叩く音が鳴りました。




「はい......。どなたですか?」




こんな遅くに配達を頼んだ覚えはない。ましてや、人に迷惑をかけるほど騒音を立てていたわけでもない。なんの心当たりのない訪問に、僕は少し凍り付きながらドア越しの相手に問いかける。だが、相手からの返信はない。かわりに、またもドアを叩く音が聞こえる。




「な、なんなんだ!? 用件を言ってくれ!!」




僕は声を大きく荒げました。人生一番の大声だったと思います。


だが、返事はありません。やはり、顔のない怪異だから口が聞けないということなのでしょうか......。


どうしてもドアを開けたいと思う気持ちと、開けてしまっては自分の顔がはぎとられてしまうという恐怖に板挟みになり僕は窓からとびだしました。 アパートの1階だったので、気軽に裏側に回ることができました。僕は裏から回り込みながら逃げ出しました。少し振り返ってアパートの方を見ると、そこには真っ白な人影が僕の家の前で立ちつくしていたのが見えました。




「うわ。まじでいる......」




声に反応したのか、その白い影がこちらを向き始めました。その顔は、本当にのっぺらぼうというほかなく、異常でした。ですが、確実に僕の声に反応していますし、僕を認識しているかのように振り向いて見つめてくるのです。瞬きした瞬間、彼は家のそばから消失していました。すると、突然目の前に白い影「怪人ノーフェイス」の顔が近づいていたのです。その顔にはなにもないのですが、ハチの巣のように多角形で構成されていました。その一つ一つの図形にいろんな顔が見えました。男、女。小学生から老人まで。




「ひ、ひぃっ......⁉」




僕はひたすらに走りだしました。しかし、外は不気味なほど誰もおらず助けを呼べる状態ではありませんでした。怪人ノーフェイスは先ほどの瞬間移動能力は使わずにゆっくりと後ろで歩いていました。


それはそれで奇妙でした。ですが、その時彼の能力には限界があるのだろうと推測してできるだけ離れていきました。ただ、彼を撃退する方法が確立されておらず永遠に走るのも到底無理な話です。ですが、ここで僕は近くの神社に逃げ込むことにしたのです。正直、自分でもなんでこんな行動をとったのかよくわかりませんでした。でも、神社には小さいころによくしてくれた神主さんがいたので僕のことをかくまってくれたのでした。




「ありがとうございます」




感謝の意を述べて、僕は神主さんにノーフェイスの事を話しました。すると、彼は僕に気休めのお祓いをしてくれました。気休めと言ったのは神主さんがその怪物は日本の神でも邪神でもない。異界のものだからお祓いが効かない可能性があると言っていたためです。その時は僕もよくわかっていませんでした。


でも、外を見たときに鳥居から先にいけずにウロチョロしているノーフェイスを見た時は少し光明が差しました。




「さっさと消えてくれ!!」




僕は外に出て、怪人ノーフェイスに叫びました。すると、スンと姿を消したのです。

お祓いが効いた証拠なのだろうと、神主の手を握り感謝しました。これで、事件が終わればよかったのですが......。



それから数日、僕を助けてくれた神主が顔なしの変死体で見つかったことが判明しました。

僕はとうとう怯えて眠れなくなりました。その矢先、ノーフェイスからまた予告状が届いたのです。


僕はその予告状を一つ隣の郵便ポストに入れました。すると、その次の日隣に住んでいた方が顔なし死体で見つかっていました。それ以降、ノーフェイスは僕を執拗に追いかけなくなり予告状は届かなくなりました。



「予告状を他の誰かに移せば、助かる......。これさえあれば、自分は助かる。でも、他の犠牲者が出てしまう......。負の無限ループじゃないか......」



 僕は、その対処法をそっと胸にしまい込んでしまった。予告状を押し付け合い、醜い争いをする未来を想像してしまったからです。え? なんで、こんな話をしているかですって? もし、皆さんが怪人に遭われたとき、皆さんならどうするか知りたいからです。あなたは、僕と同じように他の方を犠牲にしてまで行きたいと思いますか? それとも、自分が犠牲になるのを受け入れますか?

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