プロローグ⑦ 導く者
目の前にいるのは、確かにあの時の光る玉さんで
自分の事を「導く者」だと名乗った
「理解したなら戻って良いか? 余りこの姿でこの世界にいるのはこちらの本意ではない」
理解が追い付かないが目の前で変身?されると理解するしかない
どうぞ、と言うと光る玉は又男性の姿へと変身した
この人がまさか、あの光る玉さんだとは思わないよ……
ふぁさっと髪が揺れる、黒いコートに白い髪がとても映える
「ーーで、俺に何の用だったのだ」
「そうだ!あの、これ、夢じゃないんですか?!何度頬を叩いても目が覚めなくて……!」
「夢? 何を言っている」
目の前の光る玉、じゃない、導く者さんは私の言葉に本当に疑問を抱いているようだ
ーー噓でしょ
唇が震える
「じゃあ、ここは海外って事、ですか?そうですよね?帰れます……よね……」
それなら何とかして飛行機や船で帰ると言う手段があるはず
はず、なのに
先程の魔法のようなもの、日本語が問題なく通じた事
顔が変わってしまった事、これが夢ではないのなら、その全てが私をある一点の考えへと導く
ーー夢じゃない
「願っただろう、理想の自分になりたいと、契約書にも書いてあったはずだが?」
・契約後、◆◆◆するまで己の世界への帰還は出来ない
あの最後の文章?!
確かに、「己の世界への帰還」って変な言い方をするなって思っていたけど……
「そんな……あんな要点にもなっていない文字化けみたいな契約書で……!?」
「サインをしたではないか」
サインをした、それは確かだ
「願いを叶えてくれる」と言う、突拍子もない出来事に私は夢を見てしまった
ましてや、願った姿に本当に変わっているのを目の当たりにして夢だと思うなって……
あの空間も、この街も、さっきの人達も……全部、本当のこと
「私、どうすれば良いんですか……?何をすれば、元の世界に帰れるんでしょうか……」
呆然と、その場に立ち尽くす
導く者さんが今どんな顔をしているのかは判らない
「ーーーそれは言えん」
「そんな……」
こんな所に1人放り出されて、どうすれば良いのかわからない
不安で涙が溢れそうになった
恥ずかしくて顔を伏せる
「うっ……」
溢れそうになった、が、溢れなかったのは
導く者さんの手が私の涙を拭ったからだ
された事もない仕草に驚き顔をあげると
ばつの悪そうな顔をした導く者さんが目に入った
「あの……」
口を開こうとした、その時
「女の子の声がしたと思ったら、こんな所にいるの危ないよあんた」
後ろで声がして振り返る
紫のポニーテールに緑の目の女性が荷物を持ち、こちらを見ていた
大柄な男の人を撃退していた……確か、コーディアルと名乗っていた女性だ
「この路地裏、街灯が少ないだろう? 夜はごろつきが良くでるから1人でいるのは危ないって常識さね」
1人じゃ……と導く者さんがいた方を見ると、もうそこに姿はなかった
どうすれば良いかもわからない私を置き去りにしたまま消えてしまった
「ほら、何か用事があるでもないなら、表に……」
コーディアルさんが私の手を引っ張る
でも、私は目の前が真っ暗になってしまい
「ちょ、あんたどうしたんだい!?!?」
私は再び意識を手放した
(続く)
プロローグ終わりです、次、本編開始になります
のんびりの更新ではありますが頑張りますので、読んで戴けたら嬉しいです