プロローグ⑥ 夢のはずなのに
「ふぅ……」
あれから串焼きをもう1本食べ、その後にも果物の入ったクレープやたこ焼きに近い物をお腹いっぱい食べた
何件も寄ったからか、辺りはもう夜になっていた
オレンジに光る街灯がとても綺麗だ
食べ歩きをして判ったのは
1番最初の小さいメダルが1ゴル、少し大きめのメダルが5ゴル、お札が1枚1000ゴル
で、多分1ゴルが日本円にすると100円?
なので私のポケットに入っていた所持金の総額は多分10000円位だと思う
食べ物は周ってみると日本食、洋食、中華等々、多種多様
名前はちょっと違う物はあるけど
あと!個人的に嬉しかった事が1つ、お店の人から「可愛いね!」を戴いてしまった事!
感動してしまい、自分に言われたのが理解出来ずに、何度もお店の人に聞き返してしまったのは申し訳ない事をしてしまったかも……
そしてあのお店のラーメンも凄く美味しかった
「嬉しかったなあ……」
可愛い何て言われたの、小さい頃に亡くなった祖父母に言われた時以来で
あれからそう言ってくれる人には出会えていない
ああ
夢の中で、自分の本当の顔じゃなくても満足だよ
もう、目が覚めてもいいよ
言われたかった事、言ってもらえたもの
両手で頬をパンッと叩く
「痛っ」
……
………
…………
「……痛い……し、覚めない……???」
え?
再度両手で頬を何度か叩く
その度に痛みがある事に、目が覚めない事に気付いた
「ちょ……え……???何で目が覚めないの?痛みを感じるの???」
夢って痛覚あるの???
何か、もう、何時間も夢を見ている感覚何だけど……?
こんなに長い夢、今まで知らない
嘘でしょ?と何度も頬を叩くが覚めない
凄く嬉しい夢だけど、流石に起きないと……!
『ごめん、君の事……』
「ーーーーっ」
頬を叩く手がとまる
何でこんな時に思い出すんだろう、折角忘れていたのに
フラッシュバックする映像を振り払う
何で覚めないんだろう
変だよ
『契約後、◆◆◆するまで己の世界への帰還は出来ない』
契約書の最後の文章が脳裏に浮かぶ
ぶるっと身体が震えた
いやいやいや、そんな事ないから!
だが、次々と思い当たる節はたくさんある
門番の言葉も、ウィリアムと名乗る騎士の言葉も、光る玉のーーーー
光る玉!!!!
あの光る玉なら分かるはず!!!!
「ーーーひ!」
叫ぼうとし、我にかえる
街の人と目があった
先程から動転していて気付かなかったが注目をあびてしまっている……
そりゃあ、急に両頬を叩きまくっている人物がいたら注目を集めてしまうのも無理はない
「あ……えっと……」
恥ずかしさがこみ上げ、立ち上がり走る
:
:
:
路地裏に入り込む、ここなら居住区でもなさそうだし、お店もない、余り人も通らないだろう
恥ずかしいけど、もしかしたらって事もあるかもだし……
なるべく大きな声を出そうと、すぅっと息を吸い
「光る玉さーーーーーーーーーーーん!!!」と叫ぶ
思っていたよりも大きい声が出てしまった、思わず手で口を覆う
私ってこんなに大きい声出せたっけ?!
幸いにも人が来る様子はなく安心した
夜とはいえ、表通りには人もたくさんいたので、それにかき消されたのだろうか
「でも、光る玉さんが来てくれない事には」
「ーーーー何だ」
「わああああああ!」
って!?!! 出たーーー?!!?!
急に声をかけられ肩が跳ね上がる
ビックリし……た……って誰?!!
目の前には、黒いロングコートを着た白髪の男性
揺れる長髪が美しい
カッコ良い、と素直に思った
「おい、何の用だ」
見惚れていると声をかけられた
「え?! あの、どなたでしょうか……?」
「呼んだだろう「光る玉」と、思い当たるのは俺しかいないと思うのだが」
光る玉さんの事は確かに呼んだ
呼んだ、けど、この方を読んだ覚えは……
「……仕方ないか」
私が戸惑っていると目の前の男性は溜息を吐いた
次の瞬間に一瞬キラっと光ったかと思うと目の前にはあの時に見た光の玉がいた
「これならどうだ、理解したか?」
「えーーー!?」
(続く)
次の⑦でプロローグ終わりです、少し長めになります
もう少しお付き合い下さいますと幸いです