プロローグ⑤ 騎士ウィリアム
「って、まーたコーディアル君の仕業か!」
先頭を歩いている人が、先程の女の人に大げさなリアクションで突っ込みを入れる
「こっちの台詞さね、ウィリアム」
コーディアルと呼ばれた人が不満そうな顔をする
「あーあー又投げ飛ばしちゃったんだ? 何しちゃったのこの人」
ウィリアムは倒れている男に近寄る
「元カノに別れを切り出されて大きな声で物騒な事を騒いでいた上に
あたしに殴りかかろうとしたから投げた以上」
コーディアルは一息に言うと「ふん」と鼻を鳴らす
「うーん、それは投げていいかもね!正当防衛 正当防衛」
にっこりとウィリアムは微笑む
いいのかな……?
私も突っ込みを入れていると、倒れている男の人の手がピクリと動くのが見えた
あ!?
知らせようとしたものの、男の人が起き上がる方が早かった
その、刹那
横切る何かが見えた
「ーーーーー無駄だよ」
次に見えたのは、男の腹に横に剣を叩き込むウィリアムだった
幸いいにも剣は鞘に入ったままのようで
男は又音をたてて倒れこんだ
「峰打ちってやつだよ」
手間取らせないで欲しいよねえ、と、
先程のにっこりと人懐っこい表情はどこへいったのか真面目な表情で
後ろに控えるローブの人に呟く
「アリサくん、拘束、宜しくね」
ウィリアムに「アリサ」と呼ばれたローブの人が大柄な男に指を向け「∞」を描く
光の粒子が男に向かったかと思うと、粒子から輝く紐のような物に変化し
男の手や足に巻き付き拘束する
空中でスイっとその紐を引っ張る動きをすると、
大柄な男は空中にふわりと浮かび上がりアリサの真上に移動した
「完了しました、ウィリアム様」
アリサと呼ばれた人が初めて口を開いた、声的には女性のようだ
「ありがとー」
真剣な表情をしていたウィリアムは、又先程のように戻っていた
「本当、こんな世界に来てまでする事がこれって……何なんだろうねえ」
何を願ってああなったのかは知らないけどさ、と呟き、ウィリアムは又コーディアルに向き合う
「コーディアル君さあ、君も注意しなよ?
わかってるだろうけど、最近多いんだよ、こういう人たち」
「わかってるさね、その時は又呼んでやるから来とくれよ」
「いやいやいやいや、ことを荒だ立てるなって事をだね!?
言いたいんだよねえ僕は!」
もー!!と怒るウィリアム
「ーーウィリアム様、そろそろ戻った方が宜しいかと」
後ろに控えていたアリサがウィリアムに耳打ちする
「やっば、僕、謁見後回しにしちゃってたんだよね、
アリサ君もごめんねー拘束するのも疲れるのにさあ」
「いえ……」
顔は見えないけど、照れているように見えるのは私の気のせいだろうか……?
「じゃ、僕は帰るから、人助けもいいけど、本当気をつけてよー!?」
ウィリアムがコーディアルにそう言うと、アリサはウィリアムの足元に向けて何かを唱える
緑の魔法陣のような物が広がったかと思えば2人の姿は消えてしまっていた
2人が消えると周囲にいた人々は蜘蛛の子を散らすように、元いた場所に戻っていった
何か、凄いなあ夢の世界って……
(続く)
プロローグ、もう少しで終わります