おりるぜっ
「後部から着艦お願いします」
マリアが無線でタイプゼロに言った。
「了解なのジャ」
シャルロッテの駆る機体がやまとんの後ろに回る。
表準的な宇宙戦闘機より少し小さい。
宇宙戦艦、”やまとん”の後部ハッチが上に開いた。
ミシン目の様な白い光のガイドビーコンが出る。
◆
飛行形態だ。
中央に丸いメインカメラ。
その四方に小さくて丸いサブカメラ。
流線型のヘルメット。
それに、鳥のくちばしのような本体。
前に突き出した腰のアーマーが機首のように続く。
肩、二の腕、太もも、すね、本体、以外はアクチュエーターがむき出しである。
両腕から可動式アームに支えられたシールドブースター。
シールドは小さく、20ミリ超電磁砲が突き出ている。
胸部には、7,5ミリレーザー機銃二門。
電磁防御壁は本体の周りのみ。
最低限の装甲しかない、軽量、高機動な元東和皇国の主力機。
”零式艦上宇宙戦闘機”である。
本来は濃緑色だが、シャルロッテ専用機用の、白に螺鈿細工が施されていた。
◆
「王女様が乗ってますノ?」
格納庫にゼロ式の着艦を見に来たレイカだ。
与圧区画のガラス越しに益荒男が見える。
「ああ、ガゼフの王族は軍役について前線に出る習慣があるんだ」
――王女はパイロットを選んだ
隣にサカイもいた。
ヴィイイ、ヴィイイ
「ゼロ戦、着艦、入ってくるぞお」
宇宙服を着たオフィサーの艦内放送と共に赤い警告灯が回る。
星の見えるの宇宙から軽量な機体が、ソリ状の降着装置を出しながら艦内に滑り込んできた。
「お上手ですヮ」
――着艦が
「ああ、王女の傭兵ランクは、”B”なんだ」
サカイが答える。
着艦した零戦が、益荒男の横に移動される 。
と同時に、天井にふちに沿ったスリットが開放。
格納庫に空気が流される。
白い煙となって一瞬ガラスが曇る。
赤い警告灯が青く変わった。
「格納庫、気密確保っ」
格納庫に空気が充満した。
サカイ達が、与圧区画から格納庫に移動する。
バシュウウ
タイプ零のコックピットハッチが上に開いた。
小柄な少女が出てきた。
「サカイ師匠っ、お久しぶりなのジャッ」
少女がヘルメットを外しながら元気に言った。
「王族女子語尾……ですヮ」
隣に並ぶレイカが小さな声で言った。
上位貴族女子語尾と、”金髪縦巻きドゥー・リー・ル”は上位貴族の証し。
カツラ……ではあるが。
小柄な少女がちらりと見た。
「ふむ、ガゼフ王国第二王女、”シャルロッテ”ジャッ、名乗れ」
「はっ、メイ・クイーン王国、バレイショ―(貧乏)侯爵家が娘、”レイカ”と申します」
レイカがカーテシーをしながら言った。
「うむ……、おお、エキシビションマッチの動画は見たゾョ」
シャルロッテが頷きながら言った。
その後、隣に並んだ益荒男を仰ぎ見たのである。