うつるぜっ
三人(二機)は、模擬戦闘を終え、コンペ会場に戻ってきていた。
「か、勝てませんでしたヮ……」
判定は引き分け、相打ちである。
レイカは、崩れるようにひざを落とした。
契約書には、“必ず、芋洗い坂に勝つ”ことと明記されている。
そのための契約、そのためのランクAなのだ。
契約は破棄されるだろう。
大手のミツルギとの契約破棄。
さらに、ガゼフ王国の元ウルトラエースとはいえ、傭兵ランクDのサカイと相打ちである。
「ふふ、最悪、ランクが下がっちゃう」
故郷の残してきた、貧乏侯爵家の家族の顔がよぎる。
震える手で、金髪・ドウ・リー・ルのカツラを手に取った。
「だ、大丈夫……?」
サカイが心配そうに話しかけた。
近くには、益荒男と、(波動砲をつけてシオマネキのような)シルフィード。
その近くで、
「いやっ、そんな、しかし」
サクラギが電話で話をしている。
何か怒られているようだ。
電話が終わった。
「レイカ・バレイショ―」
「仕事は失敗、契約は破棄だ」
サクラギが厳しい表情で言う。
「や、やはりそうですか」
レイカが青ざめた顔で言った。
「それと、私も急遽本社に呼ばれた」
サクラギの苦々しい声。
「そういうことねっ」
突然、背後から大きな声。
「えっ」
レイカが振り向くと、マリアが立っていた。
身体にぴったりとしたパイロットスーツ。
豊かな胸が丸く突き出ている。
「お身体は大丈夫ですか?」
レイカが、気絶したマリアに心配そうに言う。
「ありがとう」
「それで、あなた、うちに来なさいっ」
「益荒男は複座よっ」
「イチローとコンビを組めばちょうどいいのよっ」
強烈な戦闘機動でマリアは気絶した。
流石に懲りたらしい。
「えっ」
「自分は仮契約なんじゃあ……」
サカイは、“まだ”、逃げる気満々なのだ。
「条件はこれよっ」
マリアが契約内容を空間表示。
光り輝く板が宙に浮かぶ。
「こ、これは、前より格段に良い条件……」
「でも、傭兵ランクは下がると思いますノ」
レイカが、金髪、ドウ・リー・ルのカツラを直す。
「ふふふ、いいのよっ、私では益荒男の全てをひき出せないわ」
「これで、益荒男がもっとかっこよくなるんだからっ」
マリアが勝ち誇るように言う。
「わ、分かりましたヮ」
「お世話になりますノ」
レイカが目を伏せて言った。
「……サカイ様、これからよろしくお願いしますヮ」
レイカがサカイに頭を下げた。
「い、いや、自分はまだこの契約を……」
サカイは往生際が悪い。
「さ、いくわよっ」
マリアがサカイの腕をつかんだ。
益荒男の開発チームに、サカイとレイカが参加した。