勇田さんは異世界転移してたっぽい
「私が異世界転移してたって言ったら信じる?」
ん?なんだろう、コスプレの話かな?僕は勇田さんのこの言葉の意味をいまいち理解できていなかった。
「うん、信じるよ、異世界転移いいよね、好きなジャンルだよ!」
そう気楽に返事をすると、勇田さんは神妙な面持ちで、少しだけ深呼吸をしてから話し出す。
「私、中学2年の時に一年間、ドラゴニアっていうドラゴン達が住む異世界に転移してたの」
「なんですと?」
「ドラゴニアに異世界転移してたの」
「ド、ドラゴニア……(コスプレの設定かな?)へー、なんだかかっこいいね」
「私はそこで、、りゅ、竜の勇者って呼ばれる勇者だったのね」
大丈夫まだ、ついて行けるぞ。
「ゆ、勇者、すごい、かっこいいね!異世界で、しかも竜とか、属性モリモリだ」
「ドラゴニアは悪い地獄のドラゴン達の侵略にあって大変だったの」
「なるほど!だから、異世界から勇者を召喚したってことだね!!」
「え?そう、そうだけど、高山くんなんでわかるの?」
先読みで話した僕の言葉に、勇田さんが驚きの表情で反応する。
「いや、その(よくある展開だから)僕は詳しいから」
「そっか……さすが高山くんだね」
「召喚された後は?どうなったの?」
僕は勇田さんの《《設定》》の続きを催促する。
「いきなり訳の分からない状況に放り出されて、最初は戸惑ったけど、いい人達に沢山助けてもらって、私は世界を創ったと言われる、7体のエンシェントドラゴンに力を分けてもらうため、ドラゴニアを旅したの」
「うん、それでそれで(すごい設定だ)」
「力をもらえばもらうほど、私は強くなっていったけど、代償もあって……」
そう話す勇田さんは少しだけ自分の頭に手を伸ばす。
ピンときた。
なるほど、そうやって繋がるのか!と僕は自分自身で妙に納得していた。
「その代償が角なんだね?」
「……!!!!」
勇田さんが驚愕のあまりガタッと椅子から立ち上がる。
「なんで、高山くんがそれを知ってるの?もしかして高山くん!?」
「え?いや、その(よくある展開だから)」
「ドラゴニアに転移した事がある人なの?????ドラゴニックウォーリアー?ドラゴニアンウィザード?竜剣士?もしかしてあっちの世界で会ってたりした!???」
突然の勇田さんの大声にクラス中が注目する。朝の早い時間、人数は少ないが確実に何人かには聞かれてしまった。
「あー!ごめん、今の僕の書いた小説の話だからぁ!気にしないで!はははは……」
とっさにウソで周りを誤魔化すも、勇田さんは動揺したままだ。
「勇田さん、声が大きいって、内緒なんでしょ?」
「あ、ごめん、そうだけど、けど、高山くんは」
そう言うとそそくさと着席し、勇田さんは改めて僕をまじまじと見つめる。
その眼に嘘はつけない。
「結論から言うと、僕は普通の人間で転移とかは未経験です、普通でごめん」
「え?違うの?」
「違うよ、ドラゴニアの話は今、勇田さんから初めて聞いた、なんで先読み出来たのかは、今までの人生経験によるところが大きいとだけ伝えておくよ」
「ごめん……」
勇田さんは少しだけ残念そうな表情をするも、取り乱した事に対して謝罪した。
「それより、勇田さんはその後世界を救ったの?」
「それは……」
「勇田さん?」
僕の問いかけに返答するのを躊躇した勇田さんは、ほんの少し間を開けてから、覚悟を決めたような、そんな表情をして話し出す。
「放課後……時間ある?」
「放課後?」
「あのね……見てほしいものがあって」
「今じゃだめなの?」
「うん、今はちょっと」
そう言うと勇田さんは、スッと僕との顔と顔の距離を詰める。
「《《高山くんにだけみせたいの》》」
耳元で囁かれたその一言に、僕の脳みそは一瞬で沸騰する。
「え……あ……うん」
どういうこと?それって、いったいどういうこと?
普通の高校生の自分にはその一言は恋のキャパシティを軽々超えていて、その瞬間理解することはできなかった。
どういうこと??????(錯乱)
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