隣の席の勇田さんに角が生えてるっぽい
気まぐれ更新ですが新作投稿していきます。
ほのぼの日常ものにしていきます。
なんの変哲もない、当たり前の高校生活のはずだった。
何故こんな出だしなのかは後述するとして、まずは自己紹介をしたいと思う。
僕の名前は、高山誠、高校一年生で、普通の高校生で、特に何か能力があるわけでもない、どこにでもいる普通に平凡な一般男子だ。
特別頭のいい学校でもないし、専門的な技術を磨くようなそんな学校でもない。部活動に力を入れる訳でもない、僕がこの学校を選んだのも家から近いからという、これっぽっちも面白くない理由だ。
普通科1組、クラスメイトにも恵まれ、楽しく普通に学園生活を送っていた僕が、その違和感に気が付いたのは5月の頭、季節としては一番過ごしやすく、涼しくも暖かい、そんな日の朝だった。
「おはよう勇田さん」
勇田さんの違和感にあの時気が付かなければ、僕の日常は今まで通り平凡で当たり前の日常だったのかもしれない。
「お、おはよう高山……くん」
隣の席の勇田さんは物静かだけど、すごくキレイで、その、なんというか……僕の憧れだ。
でも、まあ、高嶺の花というか、他のクラスにファンがいる位、すごく人気があって、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、生徒会の役員で人当たりもよく、女子にも一部ファンがいる……文章にするだけでも伝わる完璧美少女、それが勇田さんだ。
もう一度念を押すと、僕なんかには高嶺の花である。
そんな勇田さんとこうやって隣の席で会話ができるだけでも、僕は優越感に浸ることができるのである。
【うらやましいだろ!一般生徒め!!】
まあ、僕もその一般生徒とそんな大差ない普通の学生なんだけども……。
勇田さんの隣の席というのは、それほどまでにに気を大きくしてしまう、とんでもない聖域なのだ。
僕と勇田さんが話す内容はいたって平凡、平凡と言うよりは、何気ないって言い方がしっくりくる、今日の授業だったり、クラスメイトの話だったり、昨日のテレビの話だったり、ネットニュースだったり。
でも、そんな何気ない会話が僕にはこの上ない幸せだ。だってあの勇田さんと会話ができるんだ、それ以上の喜びは無いってもんだ。
何気ない会話がいつか勇田さんとの距離を縮めてくれる、そんな淡い期待を持って僕は何気ない会話を意識して毎日続けていた。
ちなみに、勇田さんは僕と話すときあまり目を見てくれない、目が合うとすぐに避けられる、なんだろう、僕の邪な感情を見透かしているのだろうか……。
だけど無視はされないし、会話が不自然に途切れることもない、何気ない雰囲気で、何気ない会話を続けることは出来ている。
嫌われている訳ではないと思う……
今日もそんな何気ないいつもの会話で終わるはずだった……。
「ふぁぁぁ……」
珍しく勇田さんが大きなあくびをしている。
「眠そうだね勇田さん」
「うん、昨日ちょっと夜更かし……しちゃって」
「勇田さんでも夜更かしすることあるんだ」
「……するよ、普通にするし……」
「勉強?」
「違う違う、漫画読んでてさ、夢中になってつい」
「なんだかそういうイメージないから」
「イメージ?……どんな?」
「夜更かしとかしないイメージ」
「なにそれ、ていうか普段、高山くんは私をどんなイメージで見てるの?」
神妙な面持ちで勇田さんが聞いてくる。
「夜更かしせずに、早く寝るイメージかな」
「……真面目ってこと?」
「いや、勇田さんって目がキレイだから、そういう感じなのかなぁって、クマとかもないし」
「じゃあなるべく早寝するようにする」
すごい早口で勇田さんが言う。
「どうしたの?」
「あ、ううん、なんでも、夜更かしはだめだよね、うん」
「そ、そう?でも、夜更かしする理由があるなら、いいんじゃないかな、たまには」
「……そうかな?じゃあ夜更かしもたまにする」
横目で僕を見ながら、勇田さんはそう言った。相変わらず話してはくれるけど、目をまともに合わせてくれない。
勇田さんの好きなところは沢山あるが、特に好きな所と聞かれれば「キレイな瞳」だと真っ先に答えるだろう、碧く輝く瞳には、清らかな森の澄みきった水面が映し出されているかのような美しさがある。その色は深く、そして神秘的であり、見る者の心を奪うような魅力がある、僕はその眼を見るのがすごく好きだった。
だがしかし、勇田さんは全然目を合わせてくれないのである、目が合ったと思うと彼女は目を逸らす。理由は分からないが、もしかしたら嫌われているのかもしれない、溜息を一つ、少しだけ勇田さんから目を離すも、やっぱり誘惑には勝てず、もう一度隣の彼女を見ると、また油断しきった大きなあくびをしていた。こういう、自然なところも好きだなぁ、ギャップ萌えというかなんというか……
……
……あれ?
「勇田さん、それなに?」
僕は気が付いた、今さっきまで勇田さんの頭に存在しなかったはずの見慣れない物体が頭にくっついている事に。
「それって?」
勇田さんが何の事かと僕に聞くと、僕はそれを指さし答える。
「角?」
勇田さんは「へ?」という顔をして自分の頭に手をやると、その物体を確認する。
「あああああああああ」
「コスプレのグッズかなにか?」
「あ!!」
勇田さんが教室の入り口を突如指さすと、それにつられて僕はそれを見る。
「なに?」
何もない入り口から、視線を勇田さんに戻すと、彼女の頭に現れた角のような物はなくなっていた。
「あれ?」
「高山くんどうかした?」
「角は?」
確かにあった角のようなものは消えてなくなり、勇田さんもなんのことやら?といった表情で僕を見る、あまり見てくれない僕と目を合わせて、こういった。
「なんのことかさっぱりわからないよハハハハ」
今まで見たことのない、不自然な表情の勇田さんがそこにいた。
なんの変哲もない、当たり前の高校生活のはずだった。
僕が、違和感に気が付いてしまったのは、こんな日の朝で、すべてはこの日から始まったんだ。
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