エピローグ
巨大な高波が起こった時に、一人だけ逃れた大臣は、震えながらも国の行く末を案じていた。
思えばフィービー王子は王太子の教育もろくに受けず、国王として即位してしまった。
亡き王の代わりに実権を握った王太后は、半数以上の大臣たちを篭絡していた。
皆、おかしさを感じながらも王太后の出す指示や命に反対出来なかったのだ。
この地震と高波は、神の怒りかもしれない。
幽閉状態となってしまった正妃には、本当に悪いことをした。
何故に贄の儀式など催行させてしまったのだろう。
月は動き、闇は薄くなっていく。
ふと顔を上げた大臣の前に、海に没したはずのマリーヌ妃がいた。
慌てて低頭する大臣に、マリーヌは言う。
「あなたがこの国を、オキアヌス国を案じて下さる気持ちは良く分かりました。だから、あなたが伝えてください。国民に。そして残っている貴族らに」
「ははあ! なんと勿体ない御言葉」
ぽろぽろと涙を流す大臣に、マリーヌは微笑む。
「私は本当に愛していた方のところへ、向かいますので」
マリーヌの笑顔は、その後の大臣の生きる力となった。
クラトリアの元に戻ったマリーヌは、皇帝に抱かれる。
ようやく、居場所まで辿り着けたとマリーヌはほっとする。
「もっと、早くに迎えに行けば良かった……。マリー」
「いいえ、この断罪を行いたいと、勝手に私が思ったことなの」
クラトリアは力を込めて、マリーヌを抱きしめる。
「もう、絶対離さない。君を守り抜く!」
マリーヌとクラトリアは、終生片時も離れずに愛を貫いたという。
その後……。
オキアヌス国の海上に、春先になると不思議な風景が浮かぶ。
それは蜃気楼。
海の上に浮かぶ、宮殿の景色である。
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