私に話して
「君に会いたかった。会って話したかった」
小さなメモに貴方の見慣れた文字があった。私は雨の中、何度も繰り返しメモを読みながら夕陽を見つめて佇んだ。アスファルトから沈んだ春の匂いがした。
私は少し混乱していた。私も貴方と全く同じ気持ちだったからだ。
貴方は私に会うと、たくさん話してくれる。何よりも自分の事を夢中になって話して話して話尽くす。私は一言も言わずに貴方の話を聞いている。
私は貴方の真剣な顔を見つめて堪らなく愛しさが募っていく。
『私には何でも話していいよ。全てを話して。私は貴方を受け止めたい。貴方の悲しみを受け止めたい。貴方の儚さを受け止めたい。貴方の寂しさを受け止めたい。貴方の全てを私に話して。貴方の事を知りたいの』と私は思いながら貴方の唇を見つめた。
ねぇ、私に会いたくなったら、いつでも私に会いたくなったら、すぐに会いに来て。
貴方を独りにはしたくない。
貴方の事を守りたい。
貴方の事を助けたい。
貴方の傍にいたい。
いつまでも貴方の事を抱きしめたい。
貴方の涙を拭いてあげたい。
私は貴方の事を……
私は貴方を……
読んでくれて、どうもありがとうございます。