王女様の誕生日パーティー
その後も何事もなく無事儀式は終わり、ルキア8世がまた後ほどと言葉を残し帰ったのを後に解散した。
そして宿屋で一番最初に行われたのはイレスからの謝罪だった。
「ほんっとうにごめん!ノエルが無事で、、よかった。父さん泣きそうだよ」
「うん、大丈夫」
「ノエルほんとうに大丈夫か?なんか元気ないんじゃないのか?なんか食べに行くか?あ、欲しい物ないか?」
「お父さん、、後ろ」
ノエルは指を指しイレスの後ろを示した。そこには般若の顔をしたエリサがいた。そんなことイレスには分かっていた。
儀式から帰ってきた時から溜まりに溜まった鬱憤が、ノエルが起きた安堵で爆発することなど長年の付き合いのイレスは理解していた。
理解していたからこそ、その爆発を和らげる為に必死になっていた。
「エ、エリサこれ昨日買ったプレゼント何だが」
「これ夕方にしか売ってないって、、、。へぇ〜ノエルとアルちゃんを置き去りにしてこんなもの買ってたんだ」
「あ、いやこれはそのあの」
「なに?」
「エリサに喜んで貰えたらな〜て」
「ノエル、アルちゃんの所に行ってらっしゃい。2人で外に行くのは禁止よ」
「はい!」
自ら地雷を踏みに行ったイレスを置き去りにしてノエルはピンと真っ直ぐに背筋を伸ばしたまま部屋を出た。
この後イレスがどうなるのか分からないが、冷や汗を大量に流すイレスと冷たい声のエリサの2人を見れば救いは無さそうだ。ノエルは首を横に振り早足でアルとルナの所に向かった。
「アルちゃん、ルナさん居ますか?」
「はい、今開けますね」
中からルナの返事が返ってきて少しして扉が開いた。
「ノエルさん、、、ごめんなさい。私のせいで」
「、、、アルちゃんが無事で良かった」
「え?」
ノエルは迷った、自分が首を突っ込んだせいで今アルが自分のせいでと感じていることを理解できたからか、今アルに伝えるべき言葉は何か考えた末に本音を零すように小さい声で言った。
「アルちゃんこそごめんね!僕もあと少しで勝てたんだけどね!」
「そうなんですか?」
「うん!身体も全然動くし傷もあんまり無かったらしいからね!」
「そうですか、良かったですノエルさんが軽傷で」
務めて元気に、できれば笑い話のように話すノエルだがその身体は無理な治療のため貧血気味で頭痛も少しする、更に急激に動かすことも出来ず、口だけを笑って語る事しかできなかった。ただ、目の前の少女は見えないからそんな事分かりもしないと後ろめたさを感じながらも騙す事にしたのだ。
エリサ達も口裏を合わせ軽傷と伝えたが、目の前で怒ったことを知っているアルは優しい嘘を信じ込んだ。
「、、そういえば魔力を扱う練習をしてたんですけど、ノエルくんも一緒にどうですか?」
「いいんですか!やりたいです!」
「魔法はまだ早いので来年学園に入ってから学んでくださいね」
少し重い雰囲気が流れたところでルナが話題を変えるようにそれを口にした。ノエルの嘘もアルの嘘もルナには分かっていたがそれを口にする必要は一切なく優しく育ってくれてる嬉しさだけが込み上げてくる。
「ノエルくんは風と無、それから水でしたね。さっきアルにも言ったのですけどまず身体の中にある魔力を感じてください」
「はい?」
「こればかりは感覚的な事ですので言う通りにしてみてください。まず目を閉じます」
「目を閉じる」
ルナの少し微笑みの含んだ声にオウム返しのように繰り返していくノエル。その隣ではアルも同じ事をしていた。
「次は心臓の奥に溜まっている魔力を探してください」
「心臓の、、奥」
目を瞑り意識を体の中に内側に向ける。心臓を意識すればドクンと脈打つのはわかった。もっと意識すると次はドクンと脈打つ時に何かが光った気がした。3つの光、緑と白が濃く光その隣では控えめに青色の光が薄く光っていた。
「光っています、緑、白、それに青っぽい色」
「、、凄いですね。この子にも驚きましたけどノエルくんももう魔力の感覚を掴んでしまうとは」
「え、アルちゃんも?」
「はい。先に教えて頂いてたので少しなら出せるようにはなりました」
ルナはいつも優しそうな雰囲気を醸すタレ目を少し開き驚いていたがノエルにはアルが既に魔力の感覚を掴んでいることに驚いろいた。更には薄い赤色のモヤの様なものが手のひらから出している事に驚くことしかできなかった。
薄く微笑みを浮かべるアルに凄いと感心しながらも目を瞑り魔力の感覚を探す。
「ん〜、、、できた」
「へ?」
「ノエルさんったら凄いですね!」
時間にして10分も経たずしてノエルは魔力を出すことができるようになった。まだ細く吹けば飛ぶようなそれでもルナからしたら魔力の出し方を教えずに短時間で出来てしまったことに間抜けな声を出してしまった。
アルはアルで自分の事のようにはしゃぎノエルを褒め称えていた。
それから1時間と少し。
「入るわね。もうそろ時間になるわ、、よ?」
結論から言おう。
だいぶ視認できるほどに出せるようになったノエルとアルの魔力を見てエリサは言葉を失った。
「エリサ、この子達凄いです」
「そ、そうね。とりあえず王城へ行くから準備する為に呼びに来たのよ」
エリサは何も見ないことにした。だからノエルが「見てみて」と片方の手から出している薄緑のモノも見えないし聞こえないことにした。
ただ心の中で早い方と言われた私でも感覚掴むまでに3日、そこまでなるのに1週間かかったのにと嘆いた。
その後、父であるイレスも同じように嘆いてはいたが、子供の成長に満面の笑みを浮かべていた。
「アルちゃん緊張するね」
「そうですか?私はいつもと余り変わらないので、ただやっぱりこれには慣れないですね」
「アルちゃんは時々凄いよね」
「もう慣れっこですけどね」
高さ5メートルはあるのでは無いかと思われる純白の白に金の細工が施された、頑丈そうで壮大な門を前にしてノエルは呟いた。
ただアルにはそれが伝わらなく、人前に出る時に必ずする少しキツイ眼帯を弄りながらノエルに返した。
「ノエル、アルちゃんをしっかり守るんだぞ」
「そうよ、1人にしてはダメよ?」
「ごめんなさい。でもパーティーの間だけお願いします」
アルとの会話に緊張感を無くしつつあったノエルに大人たちからのプレッシャーがのしかかってきた。大人と子供一緒のフロアだが、流石は城の中とでも言うべきかその広さは伊達じゃないことを3人とも知ってた。しかも子供には子供の交流を持たせなければ行けないため下手に関わることも出来ない。
「うん、アルちゃんは任せて」
「ノエルさん!末永くお願いします」
「ぅ、パーティーの間だよ」
そんな大人達のプレッシャーに負けず返事を返す。だが昼間とは変わり暗めな紫のドレスを着る彼女はその銀の髪も相まってドキリとノエルの顔を少し赤くさせた。
首を横に振りアルの手を引きながらノエルはその豪華な門を通ったあと、長い廊下を歩いていた。
右を見ても左を見ても絵画や甲冑、壺に装飾品と計り知れないほど高価そうな物が中には置いてあった。
先頭を案内役の執事。右からイレス、エリサ、ルナとその後ろをノエルとアル。誰も一言も話さず、いや口を開くことが出来ず無言で重苦しいまま歩き続けた。
長いなと感じ始めた頃、前の方に扉が開かれ、開放的な空間にたどり着いた。
(すご)
ノエルは思わず口から出そうになった言葉を何とか押しとどめた。
そこは天井がガラス張りのドーム状になっており、そのガラスの天井からは特大のシャンデリアが1つ吊るされ、周りにもいくつもの普通に考えれば大きなシャンデリアが吊るされた円形の空間だった。こんなんじゃ月も星も見えないよとはノエルの感想だった。
ノエル達が予定の30分前に着いたというのに既に中には大勢の貴族たちがおり、4つある入口からは続々とメイドや執事が出てきておりテーブルの上に料理をこれでもかと並べていた。
数えれば軽く500を超えそうな数の人が居るのにこの空間にはその10倍は入れそうなほど広かった。
エリサ達はそのままどこかへ行ってしまい、ノエルとアルは完全に置いてけぼりにされてしまった。
立食形式のパーティーとは聞いたがこの規模とは聞いていなく流石にここで2人きりにされたら困るとノエルは視線をキョロキョロと動かしエリサ達を探すが見つかる訳もなく、心配して来た執事の1人から何を勘違いされたのか飲み物の入ったグラスを2つ渡された。
主役も来てないのに飲む訳にも行かずノエルは一切緊張してない、平常のアルと話すことで気を紛らわすことにした。