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また歩み始める〜貴族なのに国で1番苦労する地位  作者: ハネハル
0章 幼少の戦い
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儀式を通して

「ん、、、朝?」


 ノエルが目を覚ますと既に太陽は登っていた。王都に来てから毎日となりに居たはずのアルはいなく、代わりなのかエリサが椅子に座りノエルのことを見ていた。


「ノエル、良かった。本当に」

「あれ、どうしたの?」


 いまいち前後の記憶がわからないと頭を抑えるノエルにエリサはただそっとノエルを抱きしめた。


「今から準備すれば間に合うわ。着替えながら説明するわね」

「う、うん?」


 包帯の巻かれた身体を不思議に思いながらノエルは真剣なエリサの言葉を聞きながら、正装に着替える。


「あなたは同い年くらいの子と喧嘩したらしいは。そして倒れたあなたをアルちゃんが宿の前まで連れてきてくれたのを保護したのよ。ちなみに顔は私が全部治したけど体は魔力が足りなかったから応急処置よ。そして倒れて半日ほど寝ていたのよ」

「、、、そっか」

「なにか、思い出せた?」

「ううん、あんまりわかんない」


 未だにズキズキする体の理由を聞き納得したノエルはその手を握りしめた。

 授け、魔法を使えるようになるための式にはまだ間に合うことから急いで支度をし馬車に詰め込まれる。


(次は負けない)


 馬車の中、包帯の巻かれた両手を握りながら決意をした。だがノエルには何のためにあそこまでして戦ったのかいまいち理由がわからなかった。だからエリサにも知らないと嘘をついてしまった。

 結局いくら考えても何もわからず気づいたら教会に着いていた。


 扉は付いていないため開放的に見えるそれは国王が住む城と比較されるほど大きく、王都でも1番を争うほど大きな建築物だった。

 白と金の装飾が施され、一見神殿にも見えそうなそれは初代国王が初めて王都に造った物だと言われ、それが今も尚汚れすらつかずに王都のシンボルになっていた。


 その中にはノエルと同い年くらいの子供たちが何百人といた。保護者も居るようで、その数を合わせても教会の中にはまだまだ人が入れるスペースがあった。


 後ろにいたエリサが先に入っていたイレスとルナ、アルを見つけたようで一切の迷いのない進みで合流した。


「ノエル。無事で良かったよ」

「ノエルくん良かった。ごめんなさいこの子が迷惑かけてしまいました」

「うん。いえ、全然気にしないで──「ノエルさん」」


 神殿の中だから大声は出さず安心するイレスとルナに返事をしている途中で正面からアルが抱きついてきた。

 大声を出さないあたり配慮は出来てるようだが、怪我をしているノエルにとって抱きしめられるという行為はとても痛かった。


「ノエルさんよかった、、、ほんとに」

「アルちゃんは大丈夫だった?」

「はい、、ノエルさんのお陰で無事でした」


(そっか、無事で良かった)


 涙混じりの声で笑顔を浮かべるアルを見て、なんでノエルはなんで戦ったのか少しだけわかった気がし、眼帯で隠された右目を見てノエルは軽く笑った。



「4等級如きが大事な王女殿下の儀式で遅刻未遂ですか」


 何処からか聞こえてきた言葉で気がついた。周りを見ると殆どの貴族たちがノエル立ちを見ながらボソボソと小声で何かを話していた。

 その目は暗く、良い感情を含んだものでないのは明らかだった。


 だがそんな空気も一瞬にして消し飛ばされた。現れた3人を見た瞬間、反射的に話していた人間も協会の人間も、ノエルたちも直ぐに地面に膝をつき頭を下げる。


 現れたのは現国王ルキア8世と今回の主役、今日5歳になった第一王女のエクスだった。


「皆の者待たせたな。今日集まったこと感謝する。時間もあまりない故儀式を先に済まさしてもらおう。楽にしろ」


 そう言うと頭を下げてた全員が立ち上がるが硬い雰囲気はまだ残っているせいか誰一人喋ることはおろか侮蔑の視線をノエルたちに送ることもしない。


「今日は誕生日おめでとうございます。この記念すべき日に儀式の担当をできること喜ばしく思います」

「よい、そういう言葉は後ほど聞こう。エクス行ってこい」

「はい。お父様の期待に応えれるよう頑張ります」


 綺麗な修道服のようなものを着た老人が簡単に挨拶する。ルキア8世が簡単に返すとエクスと呼ばれた少女が老人の後ろを歩く。


 少しの階段を上がり、真ん中を歩くエクスは窓からの陽の光を浴び、純白のドレスは煌びやかに輝き、ゴールドの少し癖のある長髪も相まって神々しさすら感じさせていた。


 やがて老人が立ち止まるとそこには大きな石版のようなものがあった。

 光全てを吸収しそうな程漆黒の黒に高さ80センチ程の円柱のようなものだ。


「エクス様、この上に手のひらを置いてください。あとは宙に浮いたものが結果でございます」

「ふむ」


 黒い物体には手のひらを置くだけのスペースしかなく、エクスが手を置き少し経つと宙に文字と数字が浮かび上がった。


 光〇〇闇

 〇〇〇土〇〇〇

 火〇〇無〇〇〇風

 〇〇〇水〇〇〇


『12』


「エクス様は水属性に素晴らしい適性があり、火属性の魔法も使えるようです。そして魔力は12ですね。いやはやそのお若さで12もあるとは素晴らしいですな」

「そうですか」


 水と描かれた文字が一際強く輝いており、それを少し見ると興味をなくしたように身を翻しルキア8世の横に戻った。


「では、それぞれ位が高い順から儀式を受けてゆけ」

「「「は!」」」


 この国の貴族の数は星等級が1世帯で1等級が4、2等級は40、3等級が100、4等級が30、5等級が200と。その全員がそれぞれが領地を持ってる訳では無い。なんと古くから持っている領地を継続させているため立場が上だからといって絶対領地を持っている訳では無い。

 むしろ何だかの功績を挙げ地位を上げ成り上がった貴族たちが多いいため領地を持ってる貴族はむしろ少なく4等級であるはずのノエルやアルが持っているという理由だけで目を付けられるには十分でもある。


 そして今回同世代だけと言ってもそれなりに数が多くノエルたちの番になるのはかなり後だったが王族も魔力が授かる儀式を見ているため一切の気を抜けない。


 場の空気を読み、前に出て測る前に名前を告げるをもう何回も見ているが、属性で光や闇が輝くことはなくたまに無の真ん中の文字が薄く輝く人がいるくらいで、魔力の方も4~8くらいをずっと目にしていた。

 ちなみに魔力とは質と量を合わせたものでどっちかが偏りすぎてもダメらしい。


「4等級ハルマ・ミコト」


「っ、、、」


 ノエルは思わずでかかった声を何とか抑え名前を告げた少年を見た。

 忘れるわけが無い、自分を圧倒的な力で敗北させた少年がいたのだ。

 忘れるはずのない黒髪は所々に赤が混じり、癖がつきそれが無造作になっている。


「こ、これは!?」


 老人の大きな声と共に目を眩ませる程の輝きに教会にいた人たちはみんなが声を上げた。王族だけが何が起こっているのか知っているのか一切の動揺が見えない。


「光の輝き、この眩しさはまさか、、、」


 光の文字だけがとても強く輝く、それを意味するのを貴族たちは知っていた。実物を目にすることは無くても噂と共に代々聞かされる教えのようなものだった。


「、、ゆう、しゃ」


 何処からか誰かが呟いた。不敵な笑みを浮かべる少年、ハルマは自分の出番は終わりとでも言うように石版に背を向け元の場所に戻った。

 その場に残ったのは唖然としている老人に、未だ強く輝く光の文字、そして魔力20の数字だった。


 そのどれもが規格外であり、会場には沈黙の空気が流れた。

 それを破ったのはノエルだった。


 この後誰が行くかと牽制しあっていた貴族たちを無視し、イレスの制止さへ気にせず前に出る。

 悠々と階段を上る所作は気品があり美しかった。


 それを見てハルマは笑みをやめ真顔になり、逆にエクスが王族には似合わない笑みを浮かべノエルを見た。


「4等級ノエル・ノルン」


 今日1番どころか、100年に1度の勇者という驚きが出た後だと言うのに堂々としたその振る舞いに教会にいる全部の視線がさっき以上にノエルに集まる。


「なるほど」

 

 宙に浮かぶ文字に老人はコクッと頭を下げる。貴族たちも少しざわざわとする程度だった。


「風と無が得意で、水が使えるトリプルですな。魔力は10となかなかでございます」


 それを聞きノエルはさっさとその場を後にした。

 トリプル、3属性使えるのは希少だが他にもチラホラといた。だが無属性が強く輝いたのはノエルが初めてだった。そして2つの属性が強く輝いたのもノエルが初だった。


 ノエルが戻ってくるとイレスは未だ驚いたままだったがエリサは喜んでいた。そしてその流れに乗るようにアルがメイドに手を引かれて前に出た。


「4等級。アル・メトラーです」


 石版の近くまで一緒に居たメイドは少し距離を取り、後はアルに任せる。


「属性は火が1つ。魔力は9です」

「ありがとうございました。行きますよ」

「お嬢様お手を」


 ドレスのスカートの部分を摘みお辞儀をしその場をすぐに後にした。その一つ一つの動作があまりに美しく、子供だと言うのに見蕩れてしまいそうになる老人と貴族たちだった。





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