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また歩み始める〜貴族なのに国で1番苦労する地位  作者: ハネハル
0章 幼少の戦い
3/17

アルちゃん

「じゃ、今日のお勉強はここまでにしようか!」

「やった〜」

「エリサ様ありがとうございました」

「いえいえアルちゃんもゆっくりしていってね。私はパパの手伝いしてくるから好きにしてて、お菓子は持ってきて貰うから少し待っててね」

「「は〜い」」


 魔道具を片付け終わりと告げるエリサに座っていたソファに深く沈み込むノエル。一方アルはソファから立ち上がり着ていた白色のドレスの裾を持ち上げ頭を下げる。目が見えない為座るのはノエルが手伝う。来るまで一緒にいたメイドは馬車と一緒に帰ってしまった。


「ノエルさん遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます!」

「え、うん!ありがとう!アルちゃん」

「はい!私の家の方にお母様からのプレゼントもありますので明日受け取ってくださいね」

「楽しみにしてるよ!」


 2人で話しているとメイドがトレイにお茶とお菓子を持ってきてくれた。


「どうぞ、何かあったらお呼びください」

「ありがとうカル」

「ありがとうございます」

「では失礼します」


 テキパキと動くカルと呼ばれたメイドはお茶とお菓子を置いたあとすぐに去ってしまう。


「ノエルさん、食べさせてください!」

「いや自分で食べれるだろ」

「何も見えないので不安なんですよ。だれか心優しい男の子が食べさせてくれないかしら」

「はぁ、はい」

「む〜〜」


 チラチラと首を動かし上品に口を開けるアルにノエルは呆れながらお菓子のクッキーを小さな手に握らせる。頬を膨らませたアルはリスのようにそれを食べ始めペシペシとノエルの膝を叩いた。


「あ、そういえば、来月は王女殿下の誕生日パーティーですが楽しみですね」

「え〜、でも僕達4等級貴族だから嫌な思いするよ?」

「でも魔法使えるようになりますよ。それにノエルさんが守ってくれるのでしょ?」


 思い出したように呟くアルは、それは楽しそうに呟いた。アルには見えないがノエルは心配と悲しみの篭った瞳で見ていた。


「、、そうだね!アルちゃんは僕が守るよ!」

「ノエルさんってば、一生守るだなんて」

「一生は言ってないよ」


 自然と繋がれた手には無意識に力が込められ、不運で可哀想、だが明るくて可憐な少女を守ろうと思うノエルだった。


 そのまま他愛も無い話をし、寝るまで一緒に遊んだり話したりした。


「ノエルさん、おやすみなさい」

「おやすみ」


 アルはノエルの片腕を抱き枕のように抱え、ノエルは仰向けで寝る。アルに聞いたところ、何か抱えるものが無いと不安だとか言っていた、慣れたものでその状態でもノエルはすぐに眠ることができるようになってしまった。


「、、、ノエルさん」


 抱えるのをやめ、ノエルの顔を恐る恐る触りながら頬っぺにちゅっと軽くキスをした。そしてまた腕を抱え眠ってしまった。


 翌朝、いつも通りの時間に起きて朝食を食べ昼まで町を見学したり遊ぶ。そしてアルを家まで送るためリンネとエリサと共に馬車に乗った。

 父親であるイレスは仕事のため残ることに悔しがっていた。


「アルちゃんまたいつでも来ていいからね」

「はい!イレス様もお仕事頑張ってください!」

「うん。もういっそお嫁に来てもいいのに」

「また近々来るので〜」


 真剣な顔で詰め寄ってくるイレスに対してひらりひらりと舞うように躱し、手を繋いでいたノエルは下を向き。エリサはすぐに止めに入った。




「アルちゃんごめんねパパだいぶ興奮していたみたいで、、、」

「賑やかでたのしかったです」

「、、、いい子」


 馬車の中にてエリサはその純粋で眩しいくらいの笑顔にやられこの子を絶対に嫁に貰おうと心に決めたとか。




「アル、おかえりなさい」

「ただいま戻りましたお母様!」

「ノエルくん、エリサありがとうね。後で話聞かせてくださいね」

「はい!僕も楽しかったので大丈夫です!」

「私も楽しかったわ、本当に早くうちの子になってくれないかしら」


 5歳であるノエルから見てもアルのお母さんであるルナは20代前後の美女にしか見えず本当にエリサと同じ年齢なのか疑っていた。

 そしてエリサから見るとアルにはお母さんであるルナの血をちゃんと引いているのがわかり所々似ているところがある。そして将来は絶対に誰もが羨むほどの美女になるので取られるなよと心の中で応援していた。


「積もる話もありますが、それは来週の馬車の中で十分でしょう。今日は疲れてると思います。さあどうぞ入ってください」


 もう日も沈みだし、いまから帰るとなれば女子供しかいないノエル達では不安なためルナの提案はとてもありがたかった。

 魔物は夜になると活発になり遭遇率、凶暴率ともに昼とは比べ物にならないので夜に出歩くというのは自殺志願者のようなものだ。


 小さな町と言っても領主の息子であるノエル達が護衛も雇わず馬を走らせていたのは結界が貼られているからであった。整備された道には魔物が近ずけないよう貼られているそれも夜になれば関係が無く襲ってくるのだ。


 そのためメトラー家で一日お世話になり翌日に帰る。手間だがこれは社会見学も兼ねているため必要な事だとエリサとルナが子供たちに教えていた。


「しっかりノエルくんに案内してもらいましたか?」

「はい!明日は私がこの町のいい所をいっぱい教えます!」

「いいこですね。ノエルくんも明日は楽しんでくださいね」

「はい!いまから楽しみです」

「ありがとうねアルちゃん、お昼まではいるからそれまで頼むわね」

「はい!」


 お互い自領について紹介していく、これはノエルの父イレスの案で、つい最近始めたことだった。自分の好きなところや、素敵なところを表現して町の雰囲気や特産物も知れるという一石二鳥な提案。だが本音は2人がもっと仲良くなってくれという願いなのは誰も知らない。


 明日のためノエルとアルはもう就寝した。部屋も余っているところはあるがアルの希望によりノエルと2人で寝ていた。


 そのころリビングには光が灯っており、2人が対面に座り話していた。


「それで話って何でしょうか?」

「アルちゃんのことよ、ノエルと婚約しないかしら」

「それは、、、本気ですか?」

「ええ、『今回は』本当よ」


 誰もいない、2人きりの空間。ルナは戸惑い、エリサは真剣な目付きで対談していた。長くなることを察して事前に入れられた紅茶を一口飲みエリサが続きを話す。


「アルちゃんは貴方に似ているわ。顔もそうだけど、なにより考え方が似ているわね」

「それで」

「聡明なあの子ならいづれ気づくはずよ、ノエルも賢い子だから言ったりはしないわ、それに気にもしていないわね。自分で言うのもなんだけどこれ以上の好物件はいないと思うわよ」

「、、、そうね」

「幸いパパもノエルもアルちゃんの事を気に入ってるみたいだし。もちろん私もね」


 エリサはただ事実だけを口にする。ルナは基本的に行動が早い。迷う事はあっても後回しにせずすぐ解決してしまう。そんな彼女にしては珍しく戸惑い、解答を出せていなかった。

 以前からたびたび冗談のようにイレスとエリサは口にしていた『婚約』、それに対してルナは考えない訳ではなかったが乗り気ではなかった。もちろんエリサは気づいていたが敢えて知らないフリをしていた。


「ノエルくんはとても素敵な子です、理解力もあるしこの歳で剣を振るうこともできる。顔だって整っています、将来はきっと大物になるでしょうね」

「でしょう、私の息子なんだから凄いのよ!」

「ふふふ、だから、、、でしょうね、アルはノエルくんにとっての足枷になってしまいます。不幸にしてしまいます」


 ルナの発言にエリサは胸を張って口にする。それに苦笑いを浮かべたルナは思い出すかのように重く言葉に出した。


「それは自分と被ってるって意味かしら」

「そうかもしれませんね」

「あら、ずいぶんあっさり認めるのね」


 鋭く突き刺すようなエリサの言葉にルナはただただ乾いた笑みを浮かべて答えることしかしなかった。


「それにアルの────ですから」

「え、、、?」


 あまりにも細く、今にも泣きそうなその言葉はエリサにとって信じられないものであった。

 そして閉まっていたはずの扉が音を立てながら開き、2人は勢いよくそっちの方向を見た。


「、、、聞こえて」

「はい、やっぱりそうなんですね」

「、、、アル、、ちゃん」

「盗み聞きをしてしまってすいません。もう寝ますね。おやすみなさい」


 驚きすぎて口すらまともに動かないルナに儚く今にも消えてしまいそうな微笑を浮かべて扉の傍に立っていたアルは答えた。

 呆然としていたエリサの呟きに頭を下げ自分の部屋に戻って言ってしまったアルがいた場所を2人は見続けることしか出来なかった。


 ルナはごめんなさいとそれだけ残し部屋に戻っていった。


 エリサも頭と気持ちを整理するため灯りを消して部屋に戻った。




 一方、アルはいつもは腕を抱き枕にするが今日は体を抱きしめ永遠に出るんじゃないかと思ったそれをノエルの服にずっと擦り付けていた。

 起きることも無く深い睡眠に入っているノエルは朝起きて服が濡れていることに驚いたとかなんとか。

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