8話.魔力遊び
なろうの小説好きなんですけど、多くの作者さんが赤ん坊時代とかをあんまり長くしてなかったり、そもそも書かなかったりする理由が分かった気がします。
めっちゃ書きにくいですねこれ、動きが制限されすぎて自分の頭の中でも主人公が見ている風景に変化がなさ過ぎです。
この世界以降は赤ん坊時代はあんまり書かないようにします。
一つの世界を50話くらいでポンポン進めたいなと考えていたんですけど、週一投稿だと50話で一年かかることに気づいてペースを上げたいなと考えて入るんですけど、あまりにもモチベがでないので、ゆっくりやってモチベがでたら早くします。
「え?出来たって?本当に?」
王都から帰ってきてから、少し表情の変化か乏しかったアンバーが心底驚いた顔をしていた。
「うん、たぶん」
アンバーが読んでくれていた本に、マナを魔力として変換できると、運動をした時のような息苦しさや暑さ、倦怠感を感じるとあった。
俺が感じたのは軽く散歩に行ったときのような、小走りをしたときのような軽く息が上がり、少し体が熱を持ったような感覚だった。
マナを感じられるようになってからは、当然自分の体の中にあるマナも感じられるようになっていた。
その量が減ったことも、魔力への変換が成功したことを表していると思った。
(肺やら血管なんかを適当に想像すると、上手くいったな。これは知識チートと言ってもいいんじゃないか。)
俺は、前世のよく知りもしない知識で壁を越えてしまった、罪悪感に加え、少しの達成感と全能感で複雑な心境でいた。
「困ったわ、今日の予定が無くなっちゃった。」
頬を少しだけ膨らませたアンバーから、お小言を頂いてしまった。
俺が悪いわけではないだろうが、少し申し訳ない気持ちになってしまう。
アンバーはそんな俺を見て、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ふふふ、冗談よ。でも、これから上級を読んであげる訳にもいかないし、別の本を読んであげる。」
そう言って、机の上にある本立てに「初めての魔法-中級-」戻してから、一冊の本を取り出して読んでくれた。
それに書いてあったのは、異世界の魔法少女モノといったところの話だった。
古代の魔法技術を使って世界を混沌へと導かんとする悪の組織を、同じ古代の魔法技術で作られた喋る変身装置で変身出来るようになった末端貴族の少女が倒していく話だ。
どこにでもいる村人の少女ではない点など、いくつか疑問に思うところはあったが一番気になったのは、主人公が火の魔法を好んで使うところだ。
(アンバーも火の魔法を使っていたのは、この主人公に憧れたからなのかもな。)
今まで、年齢より大人びていると思っていた、アンバーの子供らしいところを見ることができた気がして笑顔になれた。
そうこうしていると、晩御飯の時間となり解散となった。
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<アンバー視点>
フランクに本を読んであげようとしたら、途中でフランクが魔力への変換を習得したことで中断されてしまった。
最初はまだ二歳の子が本に飽きてしまって、出来たと言っているのだと思った。
私は、マナを感じるときは熱として感じる。
王都に行ったときに知り合った人の中に、マナを光として感じる子がいた。
その子とは、親の領地が比較的近いことや、同じ女の子で魔法が使える、などの共通点もあって時折パーティーで会うことが多かった。
何度目かのパーティーで私は、マナの濃いところでは前が見えなくなったりしないのかと聞いたことがある。
その子とは、親の領地が比較的近いこともあって時折パーティーなどであうこともあった。
その子は、三個目の眼があってそれでマナを見ている感覚で、実際の眼で見た風景に重ねてどこのマナが濃いか分かるし、近くに強いマナの光があってもその後ろにある弱い光もしっかりと分かる、と言っていた。
私は遠くのマナを感じることは苦手みたいだけど、マナを感じる熱とは別に、触れている物や気温というものも当然感じる。
フランクがマナをどうやって認識しているかはわからないが、きっと同じだ。
私は、フランクを抱っこした時のマナとは違う、人としてのぬくもりと収まりの良さが好きで、本を読んであげるときはまず、私が座って膝の上にフランクを座らせている。
だから、フランクの体にあったマナとしての熱が減っていたこともすぐに分かった、多分本当に魔力への変換が出来ているんだろう。
晩御飯が終わってから少しして、私はお母様とお父様の部屋を訪ねた。
軽く扉をノックしてから、返事を待つ。
「はーい、誰かしらー」
お母様が笑顔で扉を開いて答える。
私はこのお母様の笑顔があまり好きじゃなかった。
貴族は礼儀として、ノックをしてから返事を待ち要件や自分が来たことなどを伝えるべきだと、その時、部屋を訪ねられた側約束をしていたわけではないなら扉を開けずに答えるべきなのだと。
貴族にとって、自室以外は消して本心を見せるべきではない場所で、自室は唯一心を落ち着けられる場所なのだ。
扉を開けずに答えることを礼儀としていることに、不満がある訳ではない。
そう、教えておきながらこうして本人は相手にその礼儀を払わせないところなんかは嫌いなのだ。
けど、今日は私やお母様のことではない。
「私です。フランクの魔法のことで来ました。」
決して、礼儀を払いたいわけではなかったし、相手が型を破ってきた以上どれが正解なんてものは分からなかったが、最低限目を合わせながら、定型に戻そうとした。
「あらー、今日本を読んであげていたようだけど、もう進展があったの?」
「はい、本を読んでいる途中で習得できてしまったようです。最後は本を読まなくてもフランクなら出来てしまいそうなので、お母様から注意をしていただきたいのです。」
「それはすごいわねぇ、そうね、私かパパが見ている間しか最後の練習はしないように言っておくわ。」
「はい、よろしくお願いします。」
要件は済んだし、そう告げて足早に部屋に戻った。
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<フランク視点>
次の日、クリスから「魔法を使おうと練習するなら、パパかママがいるときにするように」と注意された。
昨日のうちにアンバーがどこかのタイミングで、クリスか、オーランドにでも言ったのだろう。
実際、俺が一番初めに魔法を使うなら、初めて見たアンバーの火の魔法を再現しようとする。
子供が火を扱うなら誰か大人が見ていた方が良いだろう。
(俺が火の魔法ではなく、もっと危険な魔法を使おうとしているかもしれないし妥当な判断だな。)
後は魔法の発動の仕方を知り、反復練習するだけだろう。
だが、昨日体に蓄えた魔力は現在も残っているのかも俺にはわからなかった。
それに、昨日変換できたものはごく少量であることは確かだろう。
魔法の発動にどの程度の魔力が必要なのかわからないが、昨日の魔力程度では発動してもかなり小規模の物だろう。
だから、しばらくはより多くの魔力への変換に力を入れることにした。
それと並行して、マナを感じるように魔力を感じられるようなろうとした。
それから、半年は掛けて練習したが、自分の魔力は把握できるようにはなれたが、他人の魔力を感じられるようにはならなかった。
幸い魔力は、あの雨で服が体に纏わりつくような感覚ではなく体に力が張っているような感じだった。
(魔力はマナとは確かに違う気もするけど、本質的には同じものに感じるんだけどなぁ。)
だが、魔力についてはかなりの量を変換、貯蔵でるようになった。
こっちについては、練習すればするほど伸びていくように感じた。
そのトレーニングをしているとで、マナを魔力へ変換する過程で酸素でも消費しているのか、俺が肺からマナを取り込むイメージをしているからか、肺活量が少しずつ上がっていった。
何かに使えるわけではないだろうが、思わぬ副産物だ。
また、魔力は体の中に貯蔵しようとしていても少しづつ、体外に出ていってしまうようだった。
これに気づいてから、何とかその魔力を引き留められないかと意識を向けてみたが、皮膚の周りで服か鎧のように体外で留めることは出来ても体内に戻すことはできなかった。
魔法の発動については、親の監視下の元練習しなければならないことで嫌厭していたが、この段階で出来ることももう思いつかない。
(とりあえず、愛しのお姉様に魔法の発動についての本を読んでもらえるようお願いしに行くか。)