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80話.天才と「強化魔法」。

元々、王と話すときの主人公の内心はこんな感じにしたかったんですよ、


ああ~。

もっと戦闘シーンを書くつもりだったのに、上手く行かないもんですね。

 宗教国家。

 この世界にそれなりの数存在し、それなりの力を持つ国家達。

 神がいる世界と呼ばれるような者達がいる以上、それも当然とも言える。


 寧ろ、それが一強になっていない時点で、人の欲望の浅はかさを改めて実感してしまう。

 まあ、その神とやら達が人間達の中から産まれておきながら、神になった途端、人間社会に見向きもしなくなることが原因かもしれないが。


「此度の戦は、実質的に我がこの世界を手中に収めるか否かの分水嶺となる。故に、フランク。その結果は我らのみで決めに行くぞ。」


 私の存在が自国の内外にも、王の傍らに在りながら、死を象徴する者。

 内部には腐敗した貴族達への執行者として、外部には戦場に姿を見せる殺戮者としての印象が根付いてきたとき。

 事も無げに、その命は下された。


 今回は…今回も、こちらが攻める以上、後ろに守る物はないのだから、いくら敵兵を撃ち漏らしても問題はない。

 戦争が終わった後、残党が近隣の村々を荒そうと、私達には関係のないことだ。

 戦闘中に手足を擦りむくことを気にすることはないように、先に相手の喉元を食い破れるかが重要なのだ。


 すべきことを決めた後、出来るだけ楽しみながらそれを為す。

 騎士となってから最初に与えられた陛下の命を、意識すると今まで気にしていた細やかな犠牲に頭を使うことを辞められた。

 それは、心に余裕を生むことになった。


「フランク。あれは、何をしている。」


 陛下が、戦の準備を進める敵兵達を指差した。


 どうやら相手の国の騎士隊は、前線に戦闘要員を配置し、そこに後方部隊が「強化魔法」。

 所謂、バフをかけて押し切る事を主とした戦をする様だ。

 単純だが、こちらが強い前衛を用意できなければそれだけで、押し切られる。

 そんな戦い方だ。


 信仰に伴う光のイメージか、前線部隊に魔法がかかる度に、魔法をかけられた者達を無駄な光が包む。


「兵士を魔法で強化しているみたいです。腕力、頑丈、回復力の強化。ぐらいですかね。」


 遠目にではあるが、取り敢えずわかる範囲のことを伝える。

 この距離で脚力ではなく腕力の強化をしている点や光が包む演出など、実用的にも魔法的にも不要に思えるところはあるが、組織としては良い運用の様に思える。


「兵の強化ぁ?ふん!下らん!そうは思わんか、フランク!」


 だが、陛下のお気には召さなかった様だ。

 陛下は、大口を開けて不満を口にする。


 陛下は間違いなく天才だ。

 私がそれについて行けるのは、転生による積み重ね故でしかない。

 そもそもの価値観が違えば、感想も異なると言うもの。


「そうですね。」


 だが、それはそれとして、私は取り敢えず口だけでも同意を口にした。


「ふん!心にもない事を口にする時は、もう少し繕え。」


 私が敵の戦法を良しとしている事に、気付いた陛下は腕を組んでそっぽを向いてしまった。


 まったく、子供の様な方だ。

 もう直ぐ40になろうと言う人間がやっても、一切可愛げがない。


 だが、子供と言うなら、そのご機嫌の取り方も単純。


「なら、今回は私は強化の魔法をかける事に専念してみましょうか。」


 新しい遊び(ゲーム)を提案する。


 陛下も、自分が経験したことのないものを批判しているに過ぎないわけで。

 この際、陛下のその食わず嫌いを矯正してみようと言うわけだ。


 陛下が間違った道を行くのなら、進言するが真の忠臣。


 あぁ、忠義。忠義。


 自分が良しと思ったもの、それを貶されたから考えを改めさせてやろうと言うわけではないのだ、決して。…決して


「ほう。」


 イタズラを思いついた子供のように、悪い笑みを浮かべる陛下を見た瞬間。


 釣れた。


 そう思った。

 陛下同様、私も笑みを深くしてしまう。


「面白い。やってみせよ。」


 王命を受けたからには、全力だ。


 筋力と反応速度に振り切った魔法を、陛下へ掛ける。

 この際、無駄な光の演出を真似、より派手に。

 それっぽい音も追加しておく。


 陛下の食わず嫌いを矯正しようと言うのだから自分も一度相手の真似はせねばなるまい。


 うーん。やはり、魔力を無駄。

 二度とやらないでおこう。


「ふむ…。」


 軽く体を動かした後、陛下は笑みを消してそう呟いた。

 光や音はともかく、これが戦いにおいて有用だと認めたのだろう。


「フハハ!これは良いぞ!良い力だぁ!」


 敵軍を割く様に突き進む、陛下の笑い声が聞こえたのはそれから直ぐのことだった。


「人の形をした列車だなアレは。」


 陛下に吹き飛ばされた敵兵へ、応急処置代わりの回復魔法を掛けながら、駆け足で陛下の後を追う。


(個人がこんな力を持っていたら、城なんて在ってないようなものだ…。)


 堀と城壁を、一度の跳躍で飛び越えて行く陛下を見ていると、敵兵に同情の念すら抱いてしまう。


「どうでした?」


 そのまま一度たりとも止まることなく、城を占拠してしまった陛下に問いかける。


「アレはダメだな!」


 それは本心からの言葉なのだろうと、その表情からも分かる。

 やはり天才は理解できない。


「なんでですか!貴方も楽しんでいたでしょう。」


 勝ちを確信していた私は、思わず口調を崩してしまっていた。

 だが、食い下がらずにはいられない。


「ふっ。貴様は時折、遊戯に負けた子供の様になるな。まぁ、理由はもちろん有る。」


 貴方だけには言われたくない…。

 私はその言葉を飲み込んで、その理由を聞く事に専念した。


「まず一つに、戦ってみた所見として。前線がやられて終えば、残りは戦場に立ったことのあるだけの、木偶だけになること。」


 確かに、王の突撃に対して敵後衛陣は対処しようとすら出来ていなかった。

 それは、今まで前線を突破する者が現れなかったと言う、「強化魔法」の強さの証拠でもあり。

 その強さから来る兵の戦闘経験の集中、という弱さの証拠でもあった。


 あの後衛陣には戦場に立っていると言う意識が無かったのだろう。


 どうせ、後ろで魔法を掛けるだけ。


 そんな考えが各人から見え透いていたのは事実だ。

 だから、私も後衛には回復魔法を掛けてはいない。


「次に、我が国はあの様な魔法は発展していない。確かに有用性は認めるが、一から研究する程の価値はない。」


 国として研究を後押しすると言っても積み重ねてきた時間というのは、大きい。

 敵国をそのまま飲み込んだとしても練度を同等にまで仕上げるのに、何世代分の時間が必要か分かったものではない。


「そして最後に。単純に貴様の魔法の効力が高すぎる。個人にしか使用できん物を、組織に取り入れようとしても無駄な話だ。」


「…。」


「そう拗ねるな。我は今、貴様を褒めたのだ。素直に受け取れ。」


 反論は出来なかった。

 反論の余地がないと思った訳じゃない。


 嬉しさと、それを感じてしまっている少しの悔しさのせいだ。

 反論して終えば、その賞賛も否定する事になってしまう気がしたからだ。


「クククッ。褒められて機嫌を治す。やはりまだまだ子供よ。」


 陛下のその呟きは、私には届かなかった。


ーーー


「フラァンク!我に強化魔法をかけよ!」


 後日。

 王城に帰還し、騎士としての業務をこなす私に駆け寄った陛下はそう言った。


「ご乱心なされましたか?ここは戦場ではありませんよ。」


 まだ、業務は残っている。

 無用と思えることは、例え陛下であろうと拒否する。


 あぁ、国の為。国の為。


「んー?貸せぃ!ふむふむ。よし!これならば後日で良い!」


 陛下は、私から乱暴に資料を奪い、一読するとそう断言した。


「何の為にです。」


「貴様も見ていたであろう!自身の限界を超えた極限の一振りを、あの戦で我は体験した。本来なら極限の集中を必要とするそれを、あの魔法は手の届く範囲にまで近づける。」


 確かに見てはいたが、どの一振りだ…。

 とにかく陛下には会心の一振りがあったのだろう。


「なら、戦う時に都度掛けますから。」


 代案を出してみる事にする。


「アレは劇薬だ!それが普通になれば腕が鈍る!極限の一振りを体験し、それに近づける様、日々研鑽する!あの戦で体験した振りは再現できる様になった!我には次の目標が必要なのだ!」


 なるほど。

 何事もなんとなくで、やってのけるような人物も一歩一歩進む事もあるのか。


「しかし…」


 陛下の言に、一部納得してしまった故、ここで頷くことは容易だ。

 だがそれは、私にとっては、ただ今日の仕事を明日の仕事に上乗せするだけだ。


 それは、嫌だ!


「えぇい!我の鍛錬に付き合え!行くぞ!ついて参れ!」


 私の手を引っ張って歩き出す。


「あぁ。もう。」


 自分の目標のために、他人を振り回す。

 そして、振り回された本人が納得してしまう様な結果を出す。


 あぁ、やはり天才とは理解できないものだ。

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