77話.人を救いたいのなら。
最早火曜と言うところで、すみません。
ちょっと長くなってしまいましたが、今回は久々に小説の書き方学びがあったなと思いました。
来週までその感覚を放さないで居られたら、成長できたと言う事で。
週一投稿は、遅々として成長しませんねw
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<ゼルデ・バルト視点>
フランクが魔法で作った木の椅子に腰かけながら、戦場を一望する。
ほのかな柔らかさを感じさせるような木の感触に、フランクを建築の場へと向かわせた恩恵を思わぬところで感じた。
フランクは騎士の基礎訓練時から疑問を抱えていると。
特に集団行動に対する訓練にフランクは懐疑的であるようだ、とは聞いていた。
だからこそ、遠目にこの戦場を見せることにした。
そう言う疑問を持つ者は、戦力的に突出した人間に多い傾向にある。
自分より下の人間に足並みを合わせることに意義を見出せないのだ。
「フランク、あれを見ろ。…どう思う。」
そうして我はフランクに、敵軍を指し示した。
人数でも、行進の練度でも、我が帝国に遠く及ばない。
「…こちら程ではないにしても、人数はそれなりにいると思います。ただ、足音は不揃いで…。」
いくら集団と言え、この距離で足音まで聞こえるのかと、フランクの魔法による強化への驚愕を表情には出ないようにして。
それ以上どう答えるべきか、そう考えているだろうフランクに助け舟を出してやることにした。
「そこまで分かればそれで良い。ならば、我が騎士達を見よ。」
次に向けるべき場所へ、フランクの視線を促した。
それにフランクはやや回りくどそうにしながら、黙して従った。
「向こうより、なんというか…。威圧感?のようなものがある様に感じます。」
そうだ!それが分かれば良い!
我の心の中では、椅子から飛び上がり手を打ちたい気分だった。
「そうだ!それが分かれば良い!」
いや、行動に移していた。
柏手を打ちながら椅子から飛び上がった我に、フランクを含めた周囲の者は体をビクつかせた。
「それって、威圧感ですか?」
フランクは、思わずの行動で着地を考えていなかった為に、フランクを指差したままの妙な格好のまま我に、姿勢を整える機会を与えるように疑問を投げかけてきた。
主に恥を掻かせないようにするなんて、全く…忠義の厚い男だ。
良い。良い。
「ふんっ!そうだ。あれは味方だからいいが、これが人数は変わらず、敵味方逆であればどうだ。」
ほんの少しの恥ずかしさを残しながら、同じだけ感謝を込めて、話を進める。
「いや…。やっぱりそれでも、この人数差は覆らないと思いますよ。」
そう答えるフランクに、口角が上がるのを自覚する。
そう、それでも大局は変わらない。
だが、その『それでも』が重要なのだ。
「そうだ。その認識は正しい。だが、その『それでも』は、今より戦況が厳しくなることを理解しての事だろう?」
得意げな表情をしている自覚はある。
内心を言い当てられたのが不満なのか、口元をとがらせながら静かに頷いた。
「そう…。ではありますね。」
歯切れの悪い返事をするのは、これが対等な人数の戦争であれば、行進の意義、威圧。
つまりはその根幹にある各々の、主に対する忠義や、この戦いに掛ける意気込み、傷を負って尚敵の喉元に食らいつかんとする生存意欲を理解させる行為であると、フランク自身理解したからだろう。
「フハハハ!いいぞ!…。そろそろ始まるぞ。」
行進をしていた両国の兵があるところで、まるで合図でもあったかのように動きを止めた。
これは一対一であろうと、多対多であっても変わらない。
人間の警戒範囲と言うのは、何らかの共通認識が有るのだと、この瞬間に何度も理解する。
どちらともつかず、怒号にも似た雄叫びを上げて両国の兵がぶつかった。
前線は槍兵に、放たれた矢に、削られ。
戦場の細かな部分では、すぐに乱戦の様相を呈し始めていた。
矢は絶えず放たれ続け、射程距離に入ったことで中距離から放たれる魔法の光が、戦況を微妙に変えていく。
「…。勝手な想像ですけど、大規模な魔法で一発ドカンから始まると思ってました。」
自分も長距離の魔法を苦手としているくせに、生意気なことを言うものだ。
「と言うか、フランク。貴様、想像出来ているのなら、その大規模な魔法とやらを今ここでドカンとやってくれてもいいぞ。」
魔法を使わない我には、理解が出来ないことではあるが。
矢と同じく、魔法も距離によって威力が減衰するらしい。
それが余程魔法の発展した国でない限り、長距離による魔法の打ち合いが発生しない理由だ。
「あー、これは私の魔法の『師匠』が言っていた話なんですけど。魔法って言うのは発動する本人の意識や想像はもちろん。無意識や、その周囲にいる人の無意識なんかも威力に影響するらしいです。」
フランクの師匠。
当然いる筈ではあるか、寧ろ独学でここまでの魔法を習得した方が恐ろしい。
賜呪地と言う、過去の英雄達とその末裔の村で発展した魔法を教えた者がいるのだろう。
戦場で奔る魔法を見ながら、ああでもないこうでもないと、それらの真似をして見せようとしたフランクは、何かを思い出したかのように勢いよくこちらを振り向いた。
「それが原因で、遠くまで届く魔法は威力の変動が激しくて使いにくいんですよね。だからこうやって…!」
言うが早いか、フランクの三歩程先の空間から火球が出現し、一瞬で破裂した。
「うぉお!マジか!近距離用の魔法を、遠くで発動させたのか?」
フランクから移った、本気で慌てた時の謎の単語。
模擬戦中にこれを引き出せると、何気に嬉しいのだ。
今回は、仮にも王がいる場で断りもなく、攻撃性のある魔法を使う暴挙に正気を疑ったことが使用した理由だが。
それよりも、フランクのその技術に興味を持った。
「そうです。多くの魔法使いが手元や杖の先から魔法が発動して、それをどうやって遠くまで飛ばすかを考えるんですけど。こういう、少し違う発想はそう言った連中の無意識にすら存在しないので、威力が安定しやすいんですよね。その分難しいですけど。」
思いもつかないことは、無意識にすら存在しないか。
それにしても、こんなもの剣で切り合う距離でなら、敵の背後に突如魔法が出現させることも出来るだろう。
「我との模擬戦では手を抜いていたのか?」
こんな魔法の使い方今まで見たことが無かった。
そうであるなら、全く持って腹立たしいことだ。
「いや、使ってましたよ。そうじゃないと、触れていない地面から急に木が生えてこないでしょう。」
ん?むぅ。
言われてみれば、確かに。
魔法の発動地点を地中にして、「植物魔法」を使っていたと言う事か。
「しかし、ならばなぜ、先の火球などは使わん。」
木を生やす魔法は確かに厄介だ。
相手の足を絡め取る以外にも、フランクの機動力を、より立体的にする足場を確保する手段としても有効だからだ。
だが、下からの一辺倒の攻撃など警戒していれば、それなりに躱されるものだ。
「あー。最初に「植物魔法」を使っていた奴は敵だったんです。私は憎しみに近い感情は抱いていましたが、同時にどんどん強くなっていくそいつを、心のどこかで尊敬していたんです。だから、それを好んで使っている自覚はあります。後は、マシにはなってきましたけど、遠距離の魔法に対する苦手意識が発動時間や、要する集中力に影響してくるんですよね。。」
好敵手が使っていた技は素直に受け入れらたと言う事か。
清々しい表情で話すフランクからは、憎しみの感情ではなく、その敵が持っていた技術や魔法に対する尊敬、敬意だけが感じられた。
まだ幼い、少年とも言える年齢の濃密な人生を感じさせる発言に、静かに感嘆した。
「そうか。…そうか。」
一度座り直し、深く息を吐き切る。
そこからは、ただ黙して戦場を見守った。
「あっ!」
しばらくして、フランクが声を上げたかと思うと、すぐさま「断塊剣」を作り始めた。
視力を強化しているであろうフランクの視線を追えば、何をするつもりかはすぐに分かった。
「待て。フランク。」
フランクの視線の先には、大きすぎる体躯のせいで板金を身体に括りつけていると言った印象を受ける、騎士が居た。
傷ついた仲間を守る様にして攻撃を受ける彼が、そう長くはもたないことは誰の目からも明らかだろう。
「なんですか!」
明らかに急いたフランクは、我が引き留めたことに従いながら、不満を隠そうともしなかった。
「良いか、フランク。人を救いたいのなら。まず、自分を救えるようになれ!」
あの騎士にしてもそうだ。
仲間を守ろうとする姿は尊い物だろうが、そこで終わってしまうのであればその意義は薄い。
そうそう見せることのない我の真剣な表情に、傾聴する姿勢を見せたフランクはそれでも目を見開いていた。
自分の部下の心情にも気も配れぬ王と思っていたのか、不敬だな。
「他人を救うのは、その後!残った余力でやれ。で無ければ、その行為は偽善にしかならん。」
危ういのだこいつは。
自分の命を軽んじている節がある。
終わったところで次がある。
そんな在り得えざる軽薄さが、見えるのだ。
「仰せのままに。」
恭しく頭を垂れたフランクに、王として命令を下してやることにした。
「分かれば良い!行ってこい!」
拝命いたしました。
フランクのその言葉は、たった一度で戦場のど真ん中へ躍り出る跳躍に伴う風に呑まれて消えた。
そこからの戦場は実に壮観で、爽快であった。
戦場の至る所から木々が乱立し、触手のようにうねる。
それらが時に、敵兵を薙ぎ払い、絡め取り、捻り潰す。
フランクが向かう先は、携えた塊剣により腕を振るうごとに、断ち開かれてゆく。
その光景はまさしく、軍を裂く王の突撃。
我の最も好む手段に他ならない。
「あぁ。良いぞ!フランク!貴様はそうでなくてはなぁ!!」
それでこそ、我の友たり得るのだから。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




