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72話.すべきこと。

んー、むり。w

やりたいことの四割くらいは出来た感じですね。

「貴様のためにすべきことを考え、成して見せろ。…出来るだけ楽しみながらな。」


 王の騎士になって最初に命じられたのは、一切具体性のない、命令とも取れないものだった。

 騎士と言っても、王命だからと椅子に座ってそれを考えるだけの仕事なんてものではなく。


 新人騎士としての命も同時に下った。

 基礎訓練や教養を身に着ける訓練に、上官の手伝いなど、当初想像していたよりはやることは多かった。


 三か月もすれば、自然と頭の中での一人称も私になって行った。


 ただ、私は王直属である側面もあったせいで、新人指導の上官も私に仕事を持ってることは少なかった。

 私に仕事を持ってくる人間は、宰相本人かその部下だった。

 当然、宰相も騎士の私にやらせても問題ない程度の物を選ばれてはいたようだが、他の新人達とは種類の違う書類に悪戦苦闘した。


 それでも、上官に気を使われたまま何も出来ないままよりは良かっただろうと、感謝はしている。

 そのままであれば、騎士隊の内外で共に疎まれいた可能性すらある。


 所詮、私は上の人間に気に入られただけで、周りの人間ほど努力はしていない。

 それが事実かどうかは置いておいて、そう周りに思われていることぐらいは理解している。


 と言っても、確かに私が苦心したのは、宰相から直接振られる書類くらいなものだった。


「これ、意味があるんですかね。」


 週に一度、騎士の鎧を着こんで訓練場内を走り回る基礎体力の訓練を早々に終えた私は、終点で各人の周回数を数えている上官に質問した。

 それは、半ば愚痴ではあった。

 昼食後から始まるこの訓練は、時間のかかる者であれば本当に夜まで走り続ける事になる。


 魔法の使用を制限されてしまえば、私も夜までとは言わずとも、それなりの時間を費やすことになっていただろう。


「…確かに、貴公にとってはこの訓練の意義は少ない。いや、漫然と訓練をするだけならば意味はないと言ってしまってもいい。」


 その愚痴に返って来たのは意外なことに同意だった。

 私の中の規律やら、規則やらを叩きこまんとする軍や、騎士の上官のイメージとはズレた答えだった。


「なら、なんで陛下は私にこの訓練を課しているのでしょう。」


 だからこそ、この上官の考えが気になった。

 厳しくは有れど、新人騎士達への理解を持ち合わせており、己が為すべきを己で定めているように見える彼の答えが。


「貴公も知っての通り。騎士になろうなどと言う者達の大半は、家を継げぬ貴族の三男より下の者達や、成り上がりを狙う平民だ。つまり野心家ばかりと言う事だ。互いに蹴落としあいながら、勝ち馬に乗りたい。そんな中で年少者と言うのは当然、それだけで下に見られる。」


 年少者。

 今期であれば、13歳で入団することになった私の事だ。

 だが、私を少なくとも表立って下に見る物はいない。


 いなくなった。

 ありとあらゆる訓練において、異常ともいえる強さ、最優か普通以上の成績を出し続けていれば、外野はそのうちに黙って行った。


「これは知っているかは知らぬが、貴公には陛下の隠し子と言う噂もある。表向きはどこの出身かもわからぬ奇怪な子供でもある。足を引っ張りに回るか、おもねるべきか、そんな噂があるなかで突出した能力が貴公にはある。新人のみならず、騎士団内の注目が貴公に集まるのは必然と言えよう。」


 そう言われ、気付けば私は訓練中の同期たちから視線を逸らしていた。

 転生の恩恵がほんの少しだけ、良心の呵責、重荷になったからだ。

 そして、いくら戦闘力が有ろうとも、それだけで何もかもが思い通りにいくわけではないと、再度自分に言い聞かせる。


 今の私が王の随伴することでしか、ノエルに『神の母』に会うことが出来ないように。

 人の集団には、目立った者を排除せんとする機構があることを、二度の転生を経て忘れていたものを思い出す。


「話が、逸れたな。組織とは、通常は一人が絶大な力を持っていても機能しない。貴公に訓練を受ける意義はなくとも。同じ訓練を受けた他の者達は上を知ることが出来る。特に、三年前貴公が陛下と仕合ったこと知らぬ者達にはそれは必要だ。」


 上を知る。

 確かに、それは必要なことなのだろう。

 前世では、オークキングの剣筋を、今世では、王の剣筋を。

 自身より強い者の真似をして、そこに近づかんとするのは、最も早い道なのだから。


「じゃあ、私が訓練をするのは他人のため。ひいては組織のためと言う事ですか。」


 要は私のためではないと言う事か。

 私も剣術以外は、自身に必要としていない部分もあったが。


「私の推測でしかない。それに、他の目的も陛下にはあると私は思うがね。」


 じゃあ、それを教えてくれよと。

 ちらりと、上官に視線を向けても黙してこれ以上話す気はないと言う意思を示してくる。


「…。そうですか。では、そちらは自分で考えることにします。」


 王が教会から『神の母』との会見を引き出せたのは、権力と王自身が神に至ることがほぼ確定したからに他ならない。


 私のすべきことなんて、ここで本当に見つかるのだろうか。

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