64話.ゼルデ・バルト
今回の話は、この第三世界の設定思いついた時からあった話のの転換点的な導入としてあった部分で、真ん中あたりはだいぶ前に書いたものに加筆した感じだったりします。
もっと、会話を多くして、王に「ノエルと言ったか。その鍛え上げらえた腕の筋肉が無ければ、確かに女性にすら見えるほど顔が整っているな。」とかなんかそんなこと言わせたかったんですけど、なあんか流れ的にそんな感じにならなかったです。
前回の話書き始めた時本当は、
二人はフランクの提案で礼服を見繕った後、城まで来た。
ぐらいで謁見まで済ませて、って考えていたんですけど。
フランクの初めての転生を異世界の村人ではなく、貴族にした理由はここのためだったんで、いろいろ増えちゃったんですよね。
フランクの提案で急遽であったが身なりを整えた二人が、城門前に待機する兵士に声を掛けた後。
アフロンテの村で二人が取っていた、宿の二倍は有ろうかと言う広さの待機室へ通され、一時間程度の待ち時間の謁見の間へと案内された。
その待ち時間を長いと取るかは、人によるだろうが、ノエルにとってはその妙に煌びやかな城の雰囲気が緊張を誘い、何倍にも引き延ばされた時間に感じていた。
謁見の間までの、所々に高価な調度品を誂えた広く長い城の廊下を、歩いている時間の方が視界に動きがある分、幾らか余裕を持てたほどだ。
それでもやはりと言うべきか、王のおわす謁見の間の扉を目の前にすると、肌がひりつく感覚を覚える。
城内に入ってからノエル達を案内する騎士が、二人が来たことを伝えると、ゆっくりと扉が開く。
その光景にノエルは、賜呪地の魔物が口を広げているようだと、思った。
ノエルからは、僅かに前を歩くフランクの感情は窺い知ることは出来ない。
だが、いつもより背筋を伸ばした姿勢、放つ雰囲気から、フランクも隠し得ぬほどの緊張を感じているのだと理解する。
それでも、フランクは躊躇うことなく、謁見の間へと歩を進めた。
ここを魔物の口とするなら、敷かれたレッドカーペットは二人を絡め取らんとする魔物の舌であり。
その横に並んだ貴族達は、二人を咀嚼するための歯と言った所か。
その歯達が動くのは、肩肘を付き微笑みとも、蔑みともとれる笑みを浮かべる王の指示があってからだ。
「ふむ…。」
第3代皇帝、ゼルデ・バルト。
対人戦において人類史上最強とすら言われる、王自身が戦場に立ち、ありとあらゆる国を取り込むことで、この国の領土を五倍にまで広げた英傑。
重圧を伴っていると思えるほど、低く威厳にあふれた声。
ただ、息を吐いただけとも思える、その声は謁見の間にいるすべての者に伝わった。
二人を観察し終えたであろう、王の呟きは如何ほどの意味を含むのか、その全ては分からない。
だが、それを耳にした者には、それはすなわち、謁見の始まりを意味していた。
そこで最初に動いたのは、フランクだった。
この国のものと異なる礼。
フランク達を呼び出した王は、表情の変化こそ少ないがひどく驚いたことだろう。
いや、この礼を見た者はその全てが驚愕と、疑問を持っただろう。
賜呪地の近辺で、どこから来たかわからない二人組が急激に活躍していると、聞きつけて呼び出してみれば。
どこの国のものかもわからない礼ではあるが、実に堂に入ったものを見せられたのだ。
何よりも、その礼にどうしても歴史を感じさせられたのだから。
この呼び出しには、他国からの密偵を疑う部分もあったのだろう。
突如、自国の領土から秀でた能力を有した子供が現れたなどと言う幸運を素直に信じられるほど、この国の貴族達は余裕に満ちてはいない。
ただの平民であれば、フランクの横で慌てたようにフランクの真似をするノエルのようになるだろう。
もし密偵であれば、当たり障りのないようこの国の礼をする、そんなことをすれば何故知っているのか聞かれるだろうが。
今度こそノエルのように慌てたフリをして「噂に聞いたものをマネてみた。」と言えばいい。
例えそれが不敬に当たろうとも、普通の村人でも貴族への憧れが強い者なのか、密偵なのかはっきりとはわからない。
そもそも、現状二人は王の客人であり、力を認められ、招かれた者なのだ。
力ある者を好む王の前で、確証もなくその客人を非難すれば、例え貴族であろうとどうなるか分からない。
フランクの礼に、一瞬とは言え魅せられた貴族達はもう使い物にならない。
その所作に、一瞬今後の立ち振る舞いを考えさせられた貴族はもう動けない。
その言葉に真の迫力も怒気も宿らない。
二人を密偵と判断したならば、その行いのどれかを切り取り、不敬を押し付け処罰する。
村人と判断したならばその無知を嘲り、それを鞭として、「優しく許す王」を演出するための舞台装置は使えなくなった。
本来、密偵と言うものは吟遊詩人などを国が雇うものだ。
他国に行くのも当然で、話を聞いて回っても違和感がない存在。
他国で自国の英雄譚を広めてもらえば、「強く優しい英雄がいるあの国に攻め入るのは危険だ。」と村人が、騎士が一瞬でも待ったをかけてくれれば儲けもの。
それが出来ずとも、他国で聞いた市民の、あるいは貴族の話から王たちが他国の情勢を国の内部からも仕入れるのだ。
密偵とはそのような深慮遠謀のもと使わされるものだ。
王は、どこの国の礼かわからないが、どこの国でも見たことがない礼に相対してなにを想うか。
密偵が間違えて自国の礼をするとは考えられないだろう。
そもそも、フランクのした礼がどこの国の物か誰もわからないのだから、考えても仕方がない。
もし、この場で自国の礼をする間抜けを雇う国なのであれば。脅威にはなり得ない、寧ろこちらの食い物にできるだろう。
そんな間抜けな国は、既に王が呑み込んだ。
故に、王はフランク達を、他国の密偵である可能性は限りなく低いと、判断したことだろう。
「うむ、実に堂に入った礼であるな。フランクとノエルと言ったか。面を上げてくれ。余も、少しの間その礼に魅せられてしまった。それで聞きたいのだが、その礼はどこの国の礼かな。」
優し気にな口調とは裏腹に。
その声には本来、王を取り巻く貴族達寄ってたかって掛けるはずの圧力を、一人で掛けることにしたと思える圧があった。
もっとも、王のその圧。
当てられた者には殺気とすら感じられるだろう、それも偽であろう。
時には、虚すら実と見せる。
そうでなければ、互いに騙しあい食い物にしあおうとしている貴族たちがひしめく、この国の王は務まらない。
ならば、この質問は本当に王の興味本位だ。
「…。申し訳ありません。自分で考えたものです。」
少しの思案の後、先ほどの堂々とした態度からは考えられない答えに、その場に居た者はすべて拍子抜けした表情だった。
「ハッハッハッハッ!なるほどなるほど。自分で考えたものか!それではどこの国でも見たことがないはずだ!」
一瞬の沈黙の後、王の笑いだけが謁見の間に広がる。
おそらく、演技ではない本気の笑いだろう。
例え、村人であってもこれほど素っ頓狂な答えはない。
「ハッ!ッッッククク…。いや、失敬。まあ、ック。ああ!ダメだ!」
顔を手で覆い、肩を震わせた王は暫く声を抑えて笑い続けた後、玉座から一気に立ち上がり宣言する。
「よし!フランク!貴様、我と仕合え!」
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何卒、何卒ぉ




