61話.白装束の襲撃
んー、良くも悪くもない。っていうか、それを判断する脳みそが残らない程眠いです。
おやすみなさい。
一方的な正義の宣言の後、予想に反して、白い装束の者達は動かなかった。
それは、教会に所属しながら救いではなく、粛清を与える彼らなりの最後の秩序だった。
「…。ノエル以外の者に興味はない。ここで去るのであれば追いはしない。」
そしてそれは、フランクとチェスターに対しての最後通牒の意味が込められていた。
「だってよ、相棒。どうする?」
そう言ったのは、チェスターだ。
状況に見合わない、いつも通り、談交じりの口調で、いつもより演技交じりにフランクに聞いた。
口元だけを大きく歪ませ、どこからか取り出した赤い槍、言葉とは裏腹に、フランクの結論を既に知っているかのような言動だった。
「はっ!いつ相棒になったんだよ。わかってんだろ、前と同じ感じで行くぞ。」
チェスターの言葉に吹き出したフランクは、「植物魔法」を展開しながら言葉を返す。
ノエルは知らないことだが、この白装束の集団。
その部隊に所属する者の階級は、その顔に着ける仮面の形によって判別することが出来る。
今回ノエル達に襲い掛からんとしているのは、その中でも最上位の者達が集まった部隊。
探索者で言うのなら数人がAランク、他がBランクと言ったところか。
自らの信心と、戦闘力の向上、それらを同時に熟したうえで、教会での立場は中位神官程度であることを受け入れたある種、信仰の狂人集団。
当然ではあるが、こんな辺境に待機するような存在ではない。
下位部隊が作戦に失敗した時のみ、現れるはずの部隊だ。
フランクの「前と同じ」と言う言葉からも、ノエルが気が付かなかっただけで、二度三度このような襲撃はあったと考えられる。
どういう経緯かは知り得ないが、その時チェスターもフランクに協力したと言う事なのだろう。
「んなもん、初めて出会った瞬間に決まってんだろ!」
そのチェスターの言葉が開戦の合図となった。
チェスターが姿勢を低くしたまま、後ろ脚に力を蓄えた瞬間まではノエルにも見えていた。
しかし、ノエルが再びチェスターの姿を捉えたのは、チェスターの槍が先程まで話していた白装束のリーダーらしき人物を貫いた後のことだった。
貫いた一点から、血液がその白装束を汚していく。
Aランクと言う枠組みこそ同じであれ、チェスターとその他には、その実力に大きな乖離があることは明確になった。
踏み込みから、攻撃までの動作、その全ての時間を無視したかのようにすら感じられるそれは、敵であれば恐怖以外の何者でもないだろう。
ここに来て、フランクがチェスターに対して信頼を寄せる理由がノエルには分かった気がした。
突如として仲間が倒されたことへの動揺と、フランクが周囲に展開した「植物魔法」により急成長する葉のない木々への警戒により、たじろぐ白装束を他所にフランクは新たな魔法を展開していく。
植物魔法「断塊剣」。
フランクの足元より、周囲の土を巻き込みながら成長した木が、まるでしめ縄のように絡み合い、その土ごと自身の姿を剣のように組み上げていく。
そうして出来上がるのは剣と言うには余りも無骨で、研ぎ澄まされていない、鈍器と言う言葉の方が似合う武器。
これを使用するときのフランクは、この魔法の維持と「爆発」を発動するための魔力以外の、一切を「身体強化」に回す。
それほどまでに、この武器の密度と質量は大きい。
賜呪地にいた時は、それを片手に木々を飛び移るほどの身体能力を見せていた。
今、周囲に展開した「植物魔法」達はその再現なのだろう。
事実、「断塊剣」の展開が終わったフランクは木を蹴り上がり、敵の頭上からその質量の塊を叩きつける。
それはチェスターの、敵の防御の穴を突く研ぎ澄まされた一撃で仕留める戦闘とは違い、敵の防御ごと相手を叩き潰す戦闘法だった。
まるで消えるような速度で地を這うチェスターを注視してしまうと、フランクが。
周囲の木々を利用して頭上を跳ねまわるフランクを警戒すると、チェスターが。
この戦闘のリズムは完全にこの二人によって握られていた。
そうすることで、白装束の本来の標的であるノエルから少しでも視線を切る目的もあったのかもしれない。
フランクの一撃に対し、軸をずらすことすら出来なかった者は、それが人間であったことすら理解できない血だまりと化す。
運悪く軸をずらせてしまった者は、その半身を引きつぶされ、猛烈な痛みを伴う出血の中意識をなくす。
あれでは、まともな「回復魔法」では死を遠ざけ、痛みを長引かせる程度のことしか出来ないだろう。
ノエルは白装束の剣をさばきながら、片手で制御できる分、5つの「光矢」で白装束を牽制していた。
チェスターとフランクの戦況は悪くない。
ノエル同様、偶に視界に捉えるフランクの表情は苦し気ではあるが、その殲滅速度は圧倒的だった。
このまま耐え続ければ、勝てる。
ノエルがそう確信した時。
「…。神の元に!」
「「神の元に!」」
白装束の一人がそう叫ぶと、瞬時に二人の白装束がそれを復唱した。
ノエル同様敵も、このままでは耐え切られると判断したのだろう。
自身の命を顧みない特攻、その合図だ。
瞬時の判断でノエルは目の前の敵に、展開していた「光矢」のすべてをぶつけた。
半ば賭けではあったが、ノエルはその賭けに勝った、
これで目下、相手にすべきは特攻してきた三人。
こちらの人数も三人である以上、対処できない訳が無い。
ノエルを囲むように迫る三人のうち、背後の二人を完全に意識から外した。
どうせ、三人同時の対処など出来はしないと覚悟を決め、フランクとチェスターに背中を託した。
再び、「光矢」を展開する隙は与えてくれない。
ならば、剣に集中するのみ。
両手で剣を構え、正面の敵が振るう剣を完璧に受けきる。
背後に鋭い一撃の残痕の風と、重い一撃の圧を伴った爆音を感じる。
どうやら、二人は上手くやってくれたようだ。
「…。くっ!」
血走った瞳で、次なる一撃を構えた敵の動きが止まる。
フランクが、「植物魔法」でその足を地に縫い付けたのだ。
草木の芽吹きは石畳すら砕く、かつてフランクに教えられた言葉が蘇る。
それが事実であると示すがのごとく、その魔法は前方からノエルに迫っていた白装束の足の甲を貫いていた。
動かない足と痛みに、思わず自分の足元を確認する白装束の背後。
自ら産み出した木に脚を掛け、逆さ吊りになったフランクが「断塊剣」を横なぎに振るう。。
ポンッ!
そんな冗談のような音を立てて、白装束の頭がはじけ飛ぶ。
フランクが跳び去ったことで揺れる木が、ノエルには吹き出す血液を浴びて喜びに震えている様すら見えた。
「まっ!こんだけやって無理なら、諦めな。」
槍に付いた血を払いながら、いつもの飄々とした笑顔でチェスターが戦闘の終了を促す。
それは、白装束にとって最大の侮辱であっただろうが、事実でもあった。
比べるまでもなく頭数の減った、白装束。
それに対して、ノエル達は全くの無傷と言っていい状態なのだから。
「次は確実に仕留める…。」
そう告げる白装束の声は低く、まるで、呪いが込められているかのようであった。
「相手がワリィんだよ。それが上手くいっても、きっと蘇ってくるぜ。」
それをチェスターは鋭い瞳で、正面から受けきった。
白装束は互いに目配せをして、魔法でゆっくりとその姿を消していく。
チェスターは気配でも感じ取っているのか、「空間知覚」で周囲の把握をしているフランクとほぼ同時に警戒を解いた。
まだ余裕を残した様子のチェスターとは対照的に、フランクは息も絶え絶えと言った様子で。
警戒を解くと同時に、意識を失った。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




