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59話.それぞれの成長。

今回は良い気がしますね。

書き終わりが三時半とか言う点を除けば、気持ちよく書けました。

 翌日、二人は『不死者の洞窟』の40層。

 その最奥まで来ていた。


「そろそろ、休憩は終わりにするか。」


 ボスが守る部屋の扉の前での、短い休憩の終了をフランクが告げる。


「うん。40層のボスはリッチって名前の…レイスみたいに実態が無い、魔法使い型のモンスターって書いてあったね。」


 事前に二人で調べた情報を、再度共有する。

 その中には赤髪のエルフ、チェスター・ヴァージス経由の伝聞の情報もあった。


「使ってくる魔法が闇属性の魔法ってのがよくわかんねぇんだよな。」


 魔法の得意なフランクには珍しく、リッチの使う魔法も、その反対属性の光属性の魔法も攻撃には使えない様だった。


「リッチが召喚してくるスケルトンの量が分からないけど、僕の方に余裕があれば何とかしてみるけど…。」


 対して、光属性の魔法はノエルが回復魔法の次に得意とする物であった。

 村の中での評価もそうだが、自分自身でもフランクの後を付いて回っているだけだと思っているノエルはこれに密かな期待を感じていた。

 リッチが相手であるなら、自分も活躍出来るかもしれないと。


「まっ!普通の魔法でも対抗出来るだろうし、端から全部お前に任せるって事もする気も無いしな。」


 二人の作戦は単純。

 リッチが呼び出す取り巻きを、ノエルが処理している間に。

 フランクが、リッチを倒し切る。


 ただ、それだけだった。

 情報は集められるだけ集めた。

 それでも、二人がそれ以上の作戦を考えようとしなかったのは、集めた情報のすべてを信じているわけではないからだ。


 ノエルが感じたように、一定以上の余裕を持って生きていくだけのつもりであれば、Cランクで十分なのだ。

 わざわざBランクを目指すものなど、そう数がいない。

 故に、その情報は洗練された真実のみではなく、嘘や誇張、勘違いや不足を含んでいる可能性があると考えたのだ。


 綿密に練られた計画は、想定外があれば崩壊してしまう。

 情報が足りないのであれば、ある程度の柔軟性を担保するために、その場の判断に任せる余地を残す。

 今回の作戦は、『先生』の指導に沿ったものだった。


 そしてそれは、少なくとも今回の場合は正しかったのだと、ボス部屋の扉を開けた瞬間に理解した。


「何!!この数!?」


 フランクが軽く扉に触れたことで、挑戦者が現れたと判断した扉が、ゆっくりとその内側を明かしていく最中。

 部屋の中にひしめく骨の兵士たちの、圧倒的な物量にノエルは目を見開いた。


「はっ!早速イレギュラーだな!」


 我先にと言うよりも最早、後ろからただ押されて飛び出てきたと言うべきスケルトンを切り伏せながら、フランクは笑った。

 その様子にノエルは内心、反応の遅れた自分を叱咤した。


「あぁ、こんなことならメイスとか買ってくれば良かった…。」


 そして叱咤と同時に、そのフランクの様子に冗談を言う余裕を取り戻した。

 冗談を言いながらも、部屋の奥に鎮座したまま動く気配のないリッチに一瞬、視線をやる。


「ははっ!確かに。この数全部倒したら流石に、帰ったら剣は買い替えか。」


 百に届くか、と言う程のスケルトンの群れを見てそれでも、フランクは挑戦を次にする気はないようだった。

 動揺こそしたものの、ノエルもそれは同じだった。


 この程度、自分達の敵ではない。


「僕達より前に。リッチに挑んだ人はどうやってこれを突破したんだろう。」


 探索者の多くは…アフロンテの村の探索者の多くは、魔法を使える者は少ない。

 二人程とは言わずとも、五人パーティーの全員が魔法を使えるのであれば、これも処理できるかもしれないが。


「モンスターは倒されたら消えて魔石だけになる。けど、ボスだけは生き返るって言われてるけどな…本当に同じ個体かはわかんねえだろ。」


 確かに、モンスターはその外見だけでは個体の把握は難しい。

 ましてや、ボスの特徴を伝えているのは、文官でも何でもない、ただの村人から更に落ちぶれた探索者だ。

 もし仮に、ボスとして待ち構えているのが人間であったとしても、その特徴がある程度一致していれば、同じ者が生き返ったと広がっていてもおかしくはない。


「じゃあ、これはこのリッチの戦略ってこと?」


 フランクの仮説が当たっているとするなら、個体が違えば戦い方も違う。

 探索者が現れる前に、スケルトンを無数に召喚し続ける個体も存在するかもしれない。


「さあっ、な!案外、暇潰しにやってただけかもな。」


 スケルトンを蹴り壊しながら、真剣とも冗談とも取りがたいことを言うフランクに、ノエルは意識を戦闘に切り替えた。


「…。そろそろ、リッチの方に行く?」


 スケルトンは徐々にその数を減らしていった一方、二人に余裕は生まれなかった。

 スケルトンの維持に回していた魔力に余裕が出来たのか、リッチの魔法が二人を襲い始めたからだ。


 フランクは左手で発動させる「爆発」でそれを凌ぐために、スケルトンの対処に体術を使い始めていた。

 ノエルの提案は、残ったスケルトンの対処は自分が引き受けるという意味も含まれていた。


「そうだな…。まだ、使ってねぇよな。」


 このまま、延々とスケルトンの処理をし続けていても何も解決しないことも事実であるためか、フランクはノエルに一つの確認をした。


「うん。今から使うよ。」


 〈疑似魔眼〉。

 フランクが魔石をもとに作成した、魔導具の一種。

 起動されれば、フランクが刻印した魔法を、魔石に込められたマナを使い、使用する道具。


 本来の魔眼とは違うと言う運用にフランクは、当初これを使うことに渋っていたが、ノエルが有用性を力説することで何とか、首を縦に振らせた経緯がある。


 ノエルが持っているのは、フランクの「身体強化」だ。

 ノエルが使用するそれと、出力、バランスにおいて優れており、僅か三分程度と言う間ではあるが、通常のフランクと同等の身体能力を発揮する事の出来る物だ。


「じゃあ、そっちは頼んだ!」


 フランク自身も、ノエルのそれより更に高出力にまとめた〈疑似魔眼〉を起動して、行く手を阻むスケルトンを撥ね飛ばす。

 それを見た者がいれば或いは、音に聞く第三代皇帝ゼルデ・バルトの戦い方を彷彿としたかもしれない。


 いつもより速く動く体に、なんとか脳を追いつかせながら、ノエルはフランクとリッチの戦闘から目を離さない。

 常に、味方が、特に強い敵が目に入る位置へ無意識の内に動くようになれたのは、探索者となって暫くたってからだ。


 リッチは大小様々な、黒い槍のような形をした魔法を常に周囲に複数配置し、それを放つ、振るうことでフランクの接近を巧みに拒んでいた。

 物理攻撃の効かないリッチに剣を持って接近しようとするなど、愚か者か、何らかの策がある者だけだ。


 フランクは後者だった。

 本来、遠距離から放つ魔法によって倒し切るリッチに、フランクは触れるだけで倒すだけの策がある。

 リッチはそれを知っているかのように、フランクに対して一定の距離を保っていた。


 フランクは多彩な魔法を使うが、それらの多くは専用の弓が無ければ、フランクの手元から離れることが無い。

 新たにリッチの足元に呼び出されるスケルトンの対処には、弓は不向きだと考えたのだろう。


 結果、フランクは攻めあぐねていた。


 それを理解したノエルは、早々にスケルトンの処理を終えた。

 これで、元々部屋にいたスケルトンはいなくなった。


 それは、ノエルが自由になったことと同義であり、ノエルは次に自分が出来ることを考えた。


 フランクにリッチの対処に集中してもらうために、自分が新たに生まれるスケルトンを処理するか。

 それでも、フランクが魔法を撃ち続けてリッチは倒せるだろう。

 だが、それでは時間も体力も無駄に消耗してしまう。


 ノエルはすぐさまその案を却下し、次を考える。

 現状、最もフランクの脅威となっているのはスケルトンではなく、リッチが放つ魔法だ。

 ならば、自分がすべきはその排除。


「今度は僕が支えるんだ…。」


 リッチが使う作戦は、数の暴力だ。

 スケルトンにしても、魔法にしても。


 ノエルが採ったのは、魔法を使う者として尊敬するフランクではなく、敵であるリッチと同様の方法。


「それ対抗するには、同じ以上の魔法をぶつけてやればいい。」


 幸い、明確な手本は目の前にある。


 剣を仕舞い、立ち止まる。

 両の手を視界に映した後、ゆっくりと目を閉じ集中する。

 およそ、戦闘中に取る行動には思えないそれは、フランクに対する信頼の証だった。


 想像するのは、光の矢。

 賜呪地にいる頃から、自分が支え続けられてきたフランクの魔法の形。


 ただ違うのは、その数。

 ノエルの周囲を、10本の「光矢」が取り囲む。


 フランクのように、威力の調整は出来ていない。

 リッチのように、大きさも変化させられていない。


 複数の的を狙うために、その数は両指の数で留めた。

 10の「光矢」の動きは、ノエルの指とまるで見えない糸で繋がっているかのように、連動して見せた。


「っく…!」


 それら全てを同時に放った瞬間にもれた声は、奇しくも本当に弓を放った兵士のそれに似ていた。


 ノエルの放った「光矢」はその全てが、リッチの黒い槍に命中した。

 打ち破ったもの、対消滅したもの、向きを逸らすに留まったもの、様々であったがそれら全てが命中と同時に劈くような爆発音を伴った。


「はっ。」


 その複雑に織られた爆発音の中、思わず漏れ出たと言ったフランクのほんの小さな笑い声をノエルは聞き逃さなかった。


 好機を得たフランクは躊躇う事なく、ダンジョンの石床を砕きながらそれに飛び込んだ。


「吸魔。」


 レイスの生態を観察し続けた、フランクの産み出したそれは、身体をマナの集合体で構成したリッチにはひとたまりもなく。

 それを喰らったリッチは、みるみる内にその体積を小さくして行き、最後にはきゅっ!という甲高い何かが締まるような音を立てて消失した。

読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。


星1でもいいので評価していただければ幸いです。


ブックマークをして頂ければさらに喜びます。




何卒、何卒ぉ

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