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57話.レイス。

話は進んでないけど、悪くはない。って感じですね。

今後のためにレイスとか、そういう実体を持たない存在を出しておきたかったんですよね。


ダンジョンの一層のモンスターを弱くし過ぎたのと、フランク達の強さを結構高い所に置いたせいで最近戦闘らしい所が書けてないのがあれですね。

戦闘描写めちゃめちゃ苦手なんで、練習しないとなんですけどねぇ。

「使えるって…。これが?」


 ノエルはフランクに魔石を手渡しながら、疑問を投げかけた。

 透明なガラス玉のような魔石の中を、黒色の細い線のような魔力が漂っている。

 何の属性も属さず、宿す魔力も少ないことが明確な、最も使い勝手の悪い魔石である。


「いや、流石にこのままじゃ使えないだろうけど…。」


 フランクはそう言うと、握った魔石に集中するように瞳を閉じた。

 そして、幾ばくかの時間が経過した後、フランクが手のひらを開いた。

 再び目にした魔石にノエルは、黒い魔力が要領の限界を迎え今にも溢れようとしているかのように見えた。


「それ、どうやったの?」


 フランクなら、もしかするとこんな事もやってのけるんじゃないか。

 そんな信頼や期待、盲信にも近い物を抱いていたノエルの驚きは、目の前で起こったことに対しては少なかった。


「魔力は入らなかったけど、マナのまま、これに入れてみた。」


 マナ。

 フランクが魔法を使う時に意識するという魔力の前段階。

 その存在は、終ぞ誰も理解できなかった。

 理解できずとも、魔法が使えることと、それを理解している者がフランク一人しかいないというのが、その存在を疑わしい物としていた。


 だが、今まで誰も出来なかったことをそのマナを使うことで為した以上それを信じざるを得ないだろう。


「うーん、そうなんだ。」


 下唇に人差し指を当て、視線で洞窟の天井を左右に何度か撫でた後、ノエルはやはりそれを理解することを諦めた。

 魔石に魔力を充填出来る技術が有ろうと、ノエルには従来以上の使い方は思いつかなかったからだ。

 とりあえず笑顔でフランクを見つめ、次に行こうと示す。


「?ああ、そうだな。…次はここを真っ直ぐ行った所に一体だな。」


 その意思を汲み取れるのは、賜呪地で過ごした五年の歳月の為せる物だろう。

 

 フランクの「空間知覚」による索敵は的確だった。

 実際、賜呪地での索敵よりも素早く正確だ。

 本人の言う通り、ダンジョン内に置いては調子が良いと言う事なのだろう。


 数体のスケルトンを倒した後、二人は二層、三層へとダンジョンの奥地へと順調に歩みを進めた。


「っあ~!こう洞窟の中だと時間が分からないのが難点だな。いつ引き返すべきかわかんねえな。」


 敵の位置が明確に分かるフランクであっても、やはりダンジョン内では一定の緊張感は抜けない様子で、その言葉は少しだけ荒い物になっている。

 それでも、その動きが雑なものになっている様には見えないのは、流石の一言に尽きる。


「んー、こればっかりは体が慣れるまで続けるしかないんだろうね。」


 ノエルは、フランクのように言葉に荒さが現れることはなかった。

 だが、その動きの細部に自分でも意識しない雑さがあることを自覚し始めていた。


 賜呪地で五年過ごしたノエルも、そう言った疲労やストレスによる動きの雑さは幾らかマシになった。

 それでも、それらは完全に抜けきらない部分に、未熟と、如何にフランクに守られながら過ごしていたかを感られる。


「とりあえず、この三層の奥まで行って帰るか。」


 フランクは凝り固まった背中の筋肉を伸ばしながら、余裕を持った帰還を提案する。


「うーん、まあ。初日だし、あんまり稼げなくても仕方ないか。」


 二人には、一年以内に最低でもBランクになるという目標がある。

 だが、それ以上に探索者として生きていく必要がある。

 今日一日の稼ぎは、宿代、食費、何か一つ取ったとしてもどれにも満たないだろう。


「二層に出てきたのも、木盾持っていたりでちょっと装備が良くなったスケルトンだからなぁ。」


 当然、二層で劇的に魔石の質が良くなる訳はなく。

 フランクの言葉は同時に、三層の期待度の低さを示していた。


「無理せず、毎日進んで行くしかないよね。」


 これから少なくとも半年以上は、ほぼ毎日この光のほとんどない洞窟に通い詰めることになるのかと、ノエルは自然と苦い顔になってしまう。


「十層ごとにランクは上がるんだろ?それなら、今日は上出来なんてもんじゃないだろ。」


 探索者のランクはFから始まる以上、二人は最低でも四十層までの攻略を目標としていることになる。


「それは、そうだけど。十層まで行かないとワープ解放されない…らしいし。」


 ノエルも自身の眼で確かめたことがある訳ではなく、その語尾は何処か煮え切らない物となっていた。


 ダンジョンでは十層ごとに配置される、ボスを倒すことで地上へ帰るためのワープホールが現れる。

 それを使用することで、ダンジョンを途中から探索することが出来るというのが、探索者ギルドで二人が得た知識の一つだった。

 逆に言えば十層を攻略できなければ、それまでの道のりを帰り、再び歩いて来なければならないと言う事でもあった。


「今日はボスの情報までは詳しく見てないし。そもそも行く予定じゃなかったろ。それより、ほら。三層から出てくるレイスってアイツだろ。」


 焦るノエルをなだめるフランクの視線の先には、確かに黒い靄のような塊が浮遊しながら、ふらふらと二人に近づいてきていた。

 もし、人の魂が形を持つならレイスと同じ形であるのかもしれない、と考えることは背信に当たるだろうか。


「ちゃんと索敵は出来てた?」


 レイスの動きは確かに緩慢ではあるが、スケルトンよりは早い。

 何よりその移動に人や、スケルトンのような音を伴わないのは、普通の人間にとっては十分脅威となり得る。


「スケルトンよりは分かりにくいけど、しっかりと分かる。とりあえず、レイスの特徴を確認しておくか。」


 そう言ってフランクは自らレイスの目前まで一気に迫り、剣で切りつける。

 それはまるで、煙を手で払おうとしても指の間をすり抜けていくかのように、独特の間隔を持って綺麗に避けられる。

 剣の腹を使って面積を増やしても、剣の速さを上げても変わらない。


「本当に、物理攻撃は聞かなさそうだね。」


 フランクに倣い、自分も何度かレイスを剣で突き、払い確かめたノエルは探索者ギルドで見た情報を再確認する。

 もう十分確認したであろうに、未だ角度を変えて試し続けるフランクの顔には喜色が浮かんでいた。

 その姿は、揺れる穂に延々とじゃれつく猫のようにも見える。


「んー、やっぱ無理そうだな。じゃあ次だな!」


 暗く退屈な洞窟探索で、沈んだ気分を持ち直した様子のフランクはレイスを形作る黒い靄に、勢いよく右手を突っ込んだ。


「触れた相手の魔力を吸うんだっけ。吸った分だけ強くなるって書いてたからあまり吸わせ過ぎないでよ…。」


 今回は魔力を吸われているであろうフランクに、苦言だけ呈する形でノエルはその性質を試そうとはしなかった。

 単純に忌諱感があったこともそうだが、それを試すフランクが「おぉ!」「ははっ!」っと喜んでいるような反応をしていることに、得も言えぬ感情を抱いたのだ。


「はい!もうおしまい!へー、本当に魔法を当てればすぐ倒せるんだね。」


 フランクの腕に当てぬよう気を付けながら、弱い魔法をいくつかレイスに当てるとその靄の面積を急速に減らしていき、最後には魔石を残して消えてしまう。


「…。」


 急におもちゃを取り上げられた子供のような、不満げな視線だけを向けるフランクを軽く流しながらノエルは魔石を回収する。

 やはり、スケルトンよりいくらかマシ程度の魔石だ。

 回収した魔石を観察した後、ノエルはフランクに向き直る。


「早く行こう。僕たちは急ぐ必要があるんだから。」


 旅立った時と変わらぬ決意を感じさせるノエルの言葉に、フランクは一瞬の逡巡の後「そうだな。」と短く答え探索を再開した。

読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。


星1でもいいので評価していただければ幸いです。


ブックマークをして頂ければさらに喜びます。




何卒、何卒ぉ

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