54話.神へと至るために。
ノエル君。
圧倒的体調不良!
追記
前話に村の門番と話すところまで追加したので、話が若干飛んだみたいになってしまっています。
良ければ、前話の後ろの方を読んでいただければ幸いです。
やだねって方用に門番との会話を要約すると。
「へい!姉ちゃん。何しにきたんだい。」
「僕は男だ。」
「マジかよすげえ!」
って感じです。
アフロンテ村、賜呪地に最も近く、排他的な風土も予想された二人の旅の最初の目的地。
そこに一足先に入ったノエルはフランクに声を掛ける。
「どうしたの?早く行こうよ。」
そこには門番と話していた時のような不快感はなく、柔らかい笑みと共に穏やかな声があった。
「あぁ、悪い。」
それにフランクがどういった感情を抱いたかは不明だが、未だ「すげぇなあ!」「あぁ言うのは貴族に気に入られそうだな。」と話す門番たちを呆けたように見ていた。
ノエルに声を掛けられて、やっと我に返ったフランクは駆け足気味に村の中へ入ってくる。
「フランクって意外と真面目と言うか、誠実?だよね。」
決して、呆けたフランクを見てそう感じた訳ではない。
質疑の途中に強引に村の中に入って行ったノエルに対し、許可されるまで村の中と外を分けるその一線を越えようとする素振りすら見せなかったフランクは獣人の縄張り意識に近い物を持っているのかもしれない。
だが、そこにノエルは誠実さや正直さのような、好ましい物を感じたようだ。
「そう、かな。まあ、次は探索者ギルドだったか?」
まさしく美少女と見紛うノエルのその笑みに、フランクは照れくさそうに話題を変えた。
探索者ギルド、帝国に利益となり得るダンジョンが周囲にあると、認められた村に配置された、探索者達を査定し、情報を与える機関。
必然的に探索者が集うことから、ダンジョンに共に挑むパーティーメンバーを集める場所として、使用されることも多い。
「うん、ここだよ!結構大きいでしょ!この村の周囲には有用なダンジョンが多いから。探索者ギルドが大きくて、探索者の登録も出来るんだ!」
まるで自分の事かのように語るノエルを、フランクは何かモヤモヤした物を抱える表情のまま、相槌だけを返してギルドに歩を進める。
ここまで辿り着いた達成感のようなものを一切感じさせないフランクに、肩透かしを食らったかのような気になりながらノエルもギルドの中へ肩を並べて入って行く。
どこか慣れた様子でスイングドアを開くフランクを少し不思議に感じながら、ノエルもそれに倣いもう片側の扉を開く。
照明が足りないせいかどこか薄暗く、建物の中には影が差している部分が多くある。
その光量の少なさ故か、陰気な雰囲気をギルド全体に感じる。
扉が開いたことで増した光につられたように、中に居る人間の視線が二人に集中した。
それらはすぐに、ジロジロと観察するかのような、或いは早く出ていけと言うかのような視線に変化した。
「思ってた感じじゃなさそうだな。」
もっと華々とした物を想像していたのだろう。
漂う埃っぽい空気に眉を潜め、周囲の視線も含めた総評をフランクが述べる。
「そうだね…。」
視線に気圧され、顔を強張らせたノエルに出来たのは、その言葉に同意することだけだった。
それでも、それらを気にもしないと言った風に、フランクはノエルの肩を軽く叩いた後、さっさと受付へ歩んでいく。
大きいと言っても、辺境の村の活発な探索者ギルドに人員の余裕などあるはずも無く。
探索者の数に対して明らかに受付カウンターの数は少ない。
少ないにも関わらず、右端の受付だけがやけに空いていた。
いや、空いていると言うよりも、燃えるような赤い髪色のエルフの男だけがそこにいた。
ここは自分専用だと言うかのように、今現在二人が後ろに並んでいるにも関わらず、やたら大袈裟な手振りで受付嬢をナンパし続けている。
「あの、後にお待ちの方がいらっしゃいます。ご用件が無いようでしたらこれで。」
どうやら受付嬢は体よくナンパを追い払う手段として、二人を利用することに決めたようだ。
その言葉に赤髪のエルフは後ろに振り向いた。
「ん?ふーん。ワリィな!」
まず初めにフランクを見、その後にノエルを軽く眺めたかと思うと、ぶっきらぼうに片手だけで謝罪の意を示し、席を立つ。
「ロゼットちゃーん。またねぇ。」
立ち去る際には、二人のことなど気にした様子もなく、甘えたような声で両手を大きく開き、手を振りながら上機嫌に退散していく。
「…。初めまして、アフロンテの探索者ギルドの受付を務めております。ロゼットと申します。本日はどのようなご用件でしょうか。」
淡々と、仕事における定型文を繋げて話す彼女にほとんど表情の変化はない。
それでも、やはり感情が無いわけではないらしく、先程までのナンパに対する抑えきれないストレスが振る舞いの節々に感じられた。
「あぁ、なんだ。俺達の探索者の…。登録?をして欲しいんです。」
フランクが、ちらちらとノエルに間違いがないか確認の視線を送りながら、ロゼットの言葉に返答する。
本来こういった、常識を求められるような対応はノエルがする。
そう旅立つ前に決めていたにも関わらず、ノエルはフランクの確認の視線に頷くだけで止まった。
「そうですか。では、いくつか質問をさせてください。まず、お二人のお名前と、年齢、性別を教えてください。」
その要望はおおよそ、ロゼットの予想道理だったのだろう。
用意していたセリフをなぞる、そんな口調だった。
「…っ!俺はフランクでこっちはノエル。年は10歳と15歳。どっちも男だ。」
ここに至って未だ話そうとしないノエルに、フランクは異変が起きたとやっと確信したのだ。
質問に対し、早口で、手短に答え。
時折ノエルの様子を確認するようになった。
「…?では次に、お二人の出身村と、ダンジョンに潜った経験を教えてください。」
ロゼットは、急に慌て始めたフランクに疑問を抱いた様子で、仕事を進めていく。
「出身はフーメタツの孤児院。ダンジョンに潜ったことはない。」
本来、ノエルが言う予定だった言葉をフランクは矢継ぎ早に続ける。
予定の中にあった、登録していない者がダンジョンに潜るのは違反のはずだ、などの無用な部分を飛ばし、時間を掛けないように。
「…。かしこまりました。では、最後に何故、探索者になりたいんですか?」
探索者ギルドに登録する際に、必ず最後に聞かれる決まった質問。
本来信心深いことを示すはずの、その慣習も今の二人には煩わしい。
「神へと至るために。」
回答者側に明確な回答が用意された質問に、フランクはロゼットを睨み付ける勢いで答える。
「ありがとうございました。これで登録は完了です。何かご質問はございますか。」
ロゼットは綺麗な礼をして、やはり受付としての定型文を告げる。
「いや、ない!…いや、この村の宿屋ってどこにある?」
最早半ば意識の朦朧としているノエルの肩を担いで、ギルドを去ろうとした足を止めてフランクは尋ねる。
「宿屋でしたら、ギルドの向かいに…。」
「ありがとう!」
必要な部分だけ聞くと、フランクはロゼットの言葉を途中で遮り、急いで探索者ギルドから出る。
大粒の冷や汗を流すノエルを引きずるようにして宿屋に駆け込み、ノエルを狭いベッドに寝かせると「回復魔法」を掛ける。
ノエルに比べると拙い「回復魔法」だ。
それは、フランクが悪いわけではなく、ノエルがこうして自身の身体の特徴上必要に迫られるが故ではあるが。
ノエル自身の意識がほとんどない今、フランクが魔法を使わざるを得ない。
ズキズキと自分の身体の内部が切り離されるかのような、痛みが少し収まって行くのを感じながらノエルの意識は途切れた。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




