47話.最善を尽くすため。
一回目は主人公がオークウォーリアーに、二回目はオークウォーリアーが主人公にトラウマを植え付けていくスタイル。
相対したオークジェネラルを討ち取らんと振られた、俺の最速の横なぎは、オークジェネラルが上半身を僅かに逸らすことで回避される。
その回避行動はただ攻撃を躱すことだけではなく、剣を振り上げた際の溜めを大きくする狙いも含められたもの。
そうして振り下ろされる一撃を、右に飛ぶことで回避しながら、振り終わりの減速した剣の腹を盾で殴り飛ばす。
がら空きになった腹を貫かんと剣を構える俺に、奴は左手に「爆発」の魔法を構えることで剣を持った右手を構え直す時間を稼がんとする。
確かに、奴がどれだけの規模の魔法を発動させることが出来るのか、それが分からない俺はそれだけで攻勢に出ることが出来なくなる。
だが、それは俺が使う「爆発」と同じであるなら、その対処も同じだ。
魔法を構えた左手の手首を、魔法に触れることなく蹴り上げる。
限界まで振り上げた足を、体を回転させながら引き戻しながら、オークジェネラルの丸太のような太ももを切りつける。
その図体に対してあまりに小さな傷だが、次に同じ場所を傷つけられれば多少動きに制限が出る程度にはダメージになるはずだ。
わずかに感じたであろう痛みに、ほんの一瞬動きの鈍ったオークジェネラルが無理やり腰を捻る形で横なぎに振るったその巨大な剣を、大きく後ろに飛ぶことで躱す。
無理やりに振るった剣に重心を崩したオークジェネラルの足元から、アンバーが発動した魔法により火柱が立つ。
その体のすべてを飲み込むほどの規模に、思わず目を瞑りたくなるような圧倒的な熱量。
オークウォーリアーであれば即死であると確信できるその魔法、その炎に包まれるオークジェネラルの姿は見えない。
だが、理屈ではなくオークジェネラルはまだ生きていると確信できた。
いつその炎の中から飛び出してくるのか、と身構えていた俺の予想を裏切るように。
オークジェネラルはその全身に炎を纏いながらアンバーへ駆けていく。
ゆっくりと迫る、その瞬間を予想しながら俺は、ただその振り上げられる拳を見ていることしか出来なかった。
「…くそ!」
オークジェネラルへと至った奴との戦闘のイメージはそこで強制的に打ち切られる。
悪いイメージを振り払うために、意味もないと自覚しながら頭を振る。
いつからか、あるいは腕を切り飛ばされたその瞬間からか、俺の頭には奴を倒さねば、奴を倒すことこそ心の平穏を取り戻す唯一つの手段であるという思考が、べったりと張り付いて取れなかった。
他のオーク達を狩る時とは違う。
人生で初めて、明確な倒すべき敵として奴を認識した。
剣を振りながら、思い返すのはモンスターの進化。
それを目の当たりにして感じたことは、初めに疑問だった。
進化の過程への疑問。
あの黒いマナの塊とも言える物は何だったのか。
あの状態でその塊を砕くことが出来ていたなら、あるいは進化を止めることや、無条件で奴を仕留められていたのではないだろうか。
考えても詮無きこと、それは理解しているつもりではあるのに後悔からか、頭の中から湧いて止まることはなかった。
次に湧いてきたのは、怒りと戦意。
それは、自身の腕を切り飛ばされたことですでに心が敗北を認めていたにも関わらず湧いてきた。
いや、戦闘中に感じていた物が、魔物の進化を見たことで生じた疑問に塗りつぶされていたと言うべきだろうか。
幾度かの思考の空回りを経て、それが戻ってきた。
アンバーを殴り飛ばされたことで感じた怒り。
認めたくはないが、その怒りから生じた焦りのようなものがあったのは事実だろう。
その焦りが判断を鈍らせたとは思わないが、戦闘の結果として俺は左腕を切り飛ばされ、撤退のために両眼を犠牲にした。
その時点で俺は、あの戦場では無力な存在へとなり下がった。
すぐに両目は回復させたものの、両目に施された刻印はポーションと「再生」の魔法により、乱雑につなぎ合わされた結果効力を失った。
それは、師匠に治してもらうことで以前の状態に戻すことが出来たが、森を抜けるまでは主要な武器の一つを失った恐怖を振り払うことが出来なかった。
それに、治してもらえたとは言え最早オークジェネラルへと至った奴に通用するとも思えなかった。
何か、明確に奴を圧倒するだけの新たな武器が必要だ。
ここ数年、魔法だけでなく剣も含め戦闘において努力を怠ったと思う日はない。
それでも、以前は逃がしたとは言え、優勢で戦闘を終わらせる事の出来た相手に、敗北した。
それは、その俺の努力よりも奴が積み重ねた経験が、努力が、より強く、濃密だったことを結果で示されたということ。
奴にとって俺は壁だったのだ。
自分を死の淵に追いやった壁。
奴自身がそれを越えたと思ったからこそ、奴はあの場で進化した。
自分を死の淵に立たせた最後の一手、「爆発」の魔法を奴がそれを使えた事実も、それを極限の状態まで使わなかったことも。
あえて威力の弱い「爆発」で俺の盾を構えた腕だけを弾いたことも。
俺をあの場で殺し切るための奴の作戦だったのだろう。
戦闘においての予想外とは、そういう一手になり得ると奴は以前の戦闘で学んでいたのだ。
それを、俺に向けてきたのは、ある種の意趣返しなのかもしれないが。
毎日、奴との戦闘その剣筋を思い出し、真似、対処を考える日々はいつもそこまで考えたところで思考が止まる。
あれから四年、オーク達の群れはその勢力を更に増し、本来魔物が苦手とする陽の光がある内も、森の外でその姿を確認されることが多くなってきたものの、大きな動きと言えるものはなかった。
その四年で、師匠への相談も、説得も済ませた。
次に大きな動きがあったときに、奴が戦場に出てきたと判断できるようなことが起きた時に、俺が心起きなく戦いに向き合えるように。
準備は終えた。
後俺に出来ることは、日々の努力を続けることだけだ。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




