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この世界の評価は如何でしたか?  作者: シロナガスハラミ
第一章.人生に色彩あれ。
5/84

4話.お兄さまは笑顔が素敵。

魔法使うところまで行きたかった…

眠かったので仕方がないですね。


次の話は三歳くらいになって始めて魔法を使うところぐらいになると思います。

 それから、数日後に姉のアンバーは父親ロバートと一緒に王都に行った。

 いろいろやることがあって、数か月は帰ってこなかった。

 この数か月、彼女が見せてくれた魔法に魅了された俺としては、唯一の魔法の教師、あるいはサンプルに会えなくなってしまったことが辛かった。


 アンバーが見せてくれた魔法は、魔法のイメージによくある詠唱のようなものはなかった。

 魔法としては簡単なものだったからとかなのかもしれないが、魔法としてのすごさなんて、俺には関係なかった。

 とりあえず俺は自分で魔法を使ってみたかった。

 むしろ舌足らずで発語能力が低い赤ん坊の俺にとっては、アンバーが見せてくれてた詠唱のない魔法はほぼ満点と言ってもよかった。

 

 ただ、なぜ火を出すという危険な魔法だったのかがわからなかった。

 親が一緒にいるとしても、一歳児の前で、子供が使うものとしてはどんなに小さなものであっても危険なことは変わらないだろう。

 母親のクリスが、本来はまだ早いというニュアンスのことを言っていた。

 おそらく、アンバー以外の家族は魔法が使えないのだろう。

 そして、そのアンバーがある程度安全に使える魔法は、あの火の魔法ということだろう。


 それなら、納得が出来る。

 やはり危険だからか、魔法を見せることに賛成的だったクリスに「マホウ」っと強請っても、悩んでからダメだと言われてしまった。


 しかし、アンバーは初めて魔法を使った時はどうやったのだろう。

 誰かに教えてもらったのか、何かで読んだのか、俺は魔法というものを知らなすぎた。

 もし、魔法の発動が失敗した場合、ただ火が出ないのか、火事になるような火が暴発するのか。

 ただ、怖かった。

 出来うる限り安全な方法として、やはり本からだろうそう思った。


 ただ、クリスが魔法を教えることに難色を示したことから、魔法につながるようなものには、積極的に触れさせないように使用人にも通達されているかもしれない。

 人の目を盗んで、書斎というべきか魔法についての本がある部屋を探そうとした。

 そのときは、本当の子供がいたずらをするように、出来るだけバレないようにということを心掛けていた。

 子供という行動のほとんどを制限された身分では、囚人が脱走を計画するように、隠れてコソコソせざるを得ないのだ。


 そうやって、スパイにでもなったつもりで数日。

 何とか本のある部屋を見つけるられたが、ある問題が発生する。


(言葉が分かるから文字も分かると思ってた。)


 解読も考えたが、内容が知っている昔話なんかなら文字の読み方も推測できたかもしれないが、内容もわからないなら専門家でもない俺にできるはずもなかった。

 母親も使用人もだめ、教えてくれそうな姉は父親と数か月出かけている。


 この家で残っているのは、兄オーランドだけだった。


(でも、あの子俺を警戒してそうというか、嫌ってるというかとにかく良い感情を向けている感じではなかったんだよな。)


 あまり期待の出来る案ではなかったが、稽古か何かを終えた後の暇そうなオーランドの手を引っ張り、本のある部屋まで連れて行った。


「こぇ!こぇ!」


 本を指差して、なんとかこれを読んでくれと伝えようとする。


「なんだ?本を読んでほしいのか?」


「あぃ!あぃ!」


 必死に頷き、肯定の意思を伝える。


「時間もあるし、読むのは構わないが…。ここにあるのはかなり難しい本だからな。君ぐらいの子に読むものなら俺の部屋に残ったままのものがある。」


 そう言って、オーランドは意外な好感触に驚く俺を持ち上げて自室へと連れて行った。

 

 オーランドの部屋は俺の部屋と間取りこそ同じだったが、俺の部屋と違い様々な物があった。

 様々といっても、散らかっているわけではなく、最近子供用に変わったベッドと小さな机と椅子しかない俺の部屋に比べると多いというだけだ。

 そうやって、部屋を見まわしていたからか、オーランドが声をかけてくる。


「あぁ、君の部屋はまだ何もないから混乱するのか?良くも悪くも君も含め我がヴァーミリオン家は貴族だ。」


「貴族というものは私室以外は誰かに見られているという意識を持たなければならない反面、私室にある物は自身の意識でのみ決まることが基本だ。」


「それは産まれたての赤ん坊にも配慮すべきものとして浸透している。つまりはどうしても必要なもの以外は例え親であっても関与すべき部分ではないと、することが一般的なんだよ。いつから理解できるのかわからないがそのうち分かるようになるさ。」


 オーランドが今まで疑問だったヴァーミリオンという家の身分や、異常なほど部屋にある物が少ない謎の解答ともいうべきものを続けざまに教えてくれた。

 その後、本棚の下段から一冊の本を取り出して、ベッドに座り俺を膝の上に座らせ本を開く。


「それは、まぁ、理解できるようになってから、理解したらいい。今回の本題はこっちだな、これは昔居た英雄の話だ。有名な話だし、あと二年も経てば君も学ぶことになるものだ。よく聞いておくといい何度も読んで内容をなんとなくでも暗記してしまえば、少しは将来楽になるはずだ。」


 しっかりとした紙の本だったことや、その割には文字は丁寧な手書きなことに驚いたが、内容は戦争にでた青年が剣の腕で英雄となり、貴族に任命される英雄譚だった。


(表現は優しくしてあるけど、敵が魔物とかじゃなくて人なのは子供に読むものじゃないな…)


「これはヴァーミリオン家の成り立ちだ。ここの領民であれば子供でも親から伝え聞いている。」


 なるほど、ご先祖様の功績の話だったのか…。

 どちらかといえば、この文字は何と読むのかという点に集中していたため、話の内容はあまりしっかりと覚えていなかった。

 文字も全部覚えられたわけでもない、むしろ数個しか覚えられていない。


(忘れていく分もあるし、思っていたより気合がいるかもしれない。)


 それでも、言葉が理解出来るぶん単語を一から覚えていくわけでもないのだから、ましな方だろうと前向きに考えを変えた。

 本を読み終わり俺をベッドに座らせオーランドは床に膝立ちになることで俺と目線を合わせてくる。

 本を読んでいるときも声色から楽しそうな雰囲気は伝わってきたが、オーランドは微笑んで俺に言った。


「一度で全部覚えることなんて、誰にもできない。そう、落ち込むことはない。」


 落ち込んでいたわけではないが、少し暗い表情になってしまっていたのかもしれない。

 おそらくオーランドが言っているのは本の内容のことなのだろう、俺の考えていたこととは少し違ったが、励まそうとしてくれていることは伝わった。


「あぃ!」


 その意思に対して俺は大袈裟なくらいに元気よく、右手を挙げて返事をする。

 それを見てオーランドは笑みを深め、俺の頭を少し強めに撫でてくる。


「そろそろ、行こうか。夕食の時間も近い。母上も使用人も君の周りにいないのは、抜け出してきたからなんだろう?なんとなく気持ちは分かるが、きっと心配している。」


 オーランドは最初から分かっていたのだろう。

 クリスや使用人たちの目を搔い潜った俺を、自分が面倒を見ることで危険なことをさせないようにしたのだろう。


 配慮の行き届いた兄の対応に感謝した。


 その後、クリスと使用人にオーランドと共に少し叱られもした。


「また、あの本が読みたくなったら俺の部屋に来るといい。」


 以前、使用したパーティー用の大広間ではなく、普段家族で食事する部屋に向かう廊下でオーランドがそう言った。

 親に叱られたばかりの子供とは思えない、さわやかなで余裕のある笑みにこちらも全力の笑顔で返した。

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