41話.個体差
何卒お楽しみください。
森の奥に入った後、新たに小拠点を発見した。
奥地に入ったことで、オーク達も進化した個体が増える傾向にあるが、強い魔物が現れる機会が増えるためか、この拠点にはオークとオークソルジャーが一体ずつしかいない拠点だった。
まだ森全体からすると中層に差し掛かるかどうかといった深さのこの場所であっても、進化をしていないオーク達では、少しでも気を抜けば一瞬で命を取られる死地と化しているのかもしれない。
オークソルジャーはちょうど日の当たる位置で横になりうとうとしている。
生命力と繁殖能力に優れたオークの拠点にいるのは、合計で2体と言うのはかなり珍しくイレギュラーとも言える、一度小拠点の観察をやめて少し離れたところでアンバーと作戦会議を始める。
「どうする?」
俺の短く小さな問いかけにアンバーは、静かでありながら一音一音を大切にするような息遣いで返す。
「さぁ、前と同じでいいんじゃないかしら。」
話し声こそ綺麗で丁寧だが、その内容はかなりテキトウだった。
「わかった。ただ最近、姉さんの魔法の威力が高くなりすぎているから、オークソルジャーを狙うときは体を狙うようにしてね。」
作戦自体に俺も異論はなかった。
ただ、魔物を狩ったと言う証明の部位ごと吹き飛ばすようになった来たアンバーに注意を促した。
アンバーの言っていた作戦は、前に一度、今と同じような小拠点の状態に出会った時の事だろう。
その時も、普段は複数体いるオークが一体しかおらず、どうせ最初に一体仕留めるのなら進化している方からにしてしまえと言う、アンバーの提案が見事に刺さった。
オークの小拠点を一瞬で壊滅させることが出来。
もし失敗したとしても、多少戦闘が長引くだけだ。
作戦も決まり、再びオークの小拠点が見える場所まで戻る。
奴らには最早、警戒と言う気持ちはないらしく、先程まで座って武器の手入れをしていたオークも、オークソルジャー同様に横になっている。
アンバーの魔法を街、俺が突っ込む。
ワンパターンではあるが、同時に俺達の中で確立された奇襲の方法でもあった。
俺の魔眼により、オークソルジャーは問題なく文字通り指一つ動かせずに、アンバーの魔法を受け、丈夫であるはずの腹の肉をごっそり持っていかれ、絶命した。
それを確認した後、俺は爆音とともに仲間が突然殺された驚きで、視線が釘付けになったままのオークの背後へ、足音を殺して近づいて行く。
剣を構え。
振り上げ。
振り下ろす。
明確なイメージを持ったうえでの行動だったが、後一歩まで迫った時。
「ヴゥゥオォオオオオ!」
オークが吠えた。
視界外から迫っていたはずの俺を、寝返りを打つかのようにして、片腕だけで力任せに振られた剣が襲う。
「ぐっ!」
完全に想定外の攻撃に思わず声が出た。
上半身を反らし後ろに飛ぶようにして、何とか回避する。
如何に「身体強化」で筋力のみならず耐久面も向上させている俺でも、今の一撃は直撃すれば傷を負う程度では済まなかっただろう。
一瞬、安堵しかけた俺を戦闘へ引き戻すかのように、オークの動きは止まることがなかった。
地面に振り下ろした武器の反動を使って、体を浮き上がらせたかと思うと、空中で身を捻り着地する。
しっかりと俺を正面に捉え、剣を構えるオークがさらに吠える。
「ヴオオオオオオ!!!」
先ほどよりも大きな雄叫び。
オークの標準体型ともいえる、でっぷりとした腹からは想像もつかない曲芸じみた動きで戦闘態勢に入ったオークは、そのまま微動だにしなくなった。
恐らくこの個体はオークの中では天才とよべるものだろう。
何故、他のオークが居ない、生存競争の激しいはずのこの小拠点で、進化個体のオークソルジャーと共にこの個体だけが生き残っているのかを、俺とアンバーは考えておくべきだったのかもしれない。
剣を構えたまま動かないオークに、俺は瞬きをすることなく近づき、ゆっくりとその首に剣を突き刺し、少し離れる。
「便利ね、それ。私も使える様にしてくれないかしら。」
剣を構えたオークに対して、魔眼を使ったことを理解したアンバーがゆっくりとした足取りで歩いてきた。
「師匠が満足するような発見があれば使える様にしてくれるだろうけど…。」
正直、師匠が何を知っていて何を知らないのかは、分からない。
本人が言うには70回以上も転生をしているらしいし、そこでたまたま巡り合わなかった知識を俺がまた見つけられるとは思えない。
アンバーも師匠が転生していることは知らずとも、魔法に関してのその造詣の深さは理解しているのだろう。
俺のセリフにオーク種の討伐証明部位である牙を回収しながら、「ふーん。」と興味なさげに返すだけだった。
アンバーと同じ様に俺もオークの牙を回収しようと、出血が収まってきたオークに近づいた時、ドッドッドっと何か重い物が跳ねるような異音が森の中に響いた。
辺りを警戒しながら、ちゃっかりオークソルジャーの牙を回収しきっているアンバーを横目に捉えながら、辺りを見廻しながら「身体強化」の出力を上げていく。
俺はこの音を聞いたを聞いたことがある。
俺の眼は、その時の焼き増しかの様に、木々をなぎ倒しながらこちらに突っ込んできているオークウォーリアーの姿を捉えた。
「ヴォオオオオオオオオオオオ!」
その瞳は、仲間を殺された怒りからか、獲物を見つけた歓喜からか、殺意に満ちていた。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




