40話.魔眼
皆様、あけましておめでとうございます。
新年一発目から、0時過ぎての更新でございます。
今回はオークウォーリアーよりも弱いオークソルジャーとの戦闘です。
主人公の装備について、戦闘しながら話そうと思ったんですけど、思いのほかあっさり終わって盾の説明しか出来なかったですね。
学校卒業してからの三年間、フランクとアンバーが繰り返してきたある意味日常とも呼べる戦闘でもあるので、苦戦する訳がなかったですね。
師匠から魔眼の魔法を教えて…使えるようにしてもらってから3年が経った。
俺は無事に学園を卒業し、今は姉のアンバーと共に冒険者をしている。
アンバーの他に居たはずの二人の仲間は、俺が卒業する頃にはいなかった。
アンバーに聞いても。
「色々あったのよ。」
としか答えてくれず、深くは聞かないようにした。
二人で主に狩っているのは、王都付近の森を少し入った場所に現れるオークと、その進化個体のオークソルジャーだ。
現在、この森の支配者は三年前に現れたオークキングであるとされている。
そして、それに属さない種族は魔物であろうと、徐々に個体数を減らしていった。
オークの個体数を減らすことは、騎士団と王都の冒険者ギルドの目標となり。
冒険者ギルドの常設依頼にオークの討伐依頼が追加された。
俺達もその依頼を現在進行形でこなしている最中だった。
森に入ってしばらくした頃、オークソルジャー1体と3体のオークが森の少し開けた場所に座り込み、屯している小拠点を見つけた。
小拠点といっても雨風を凌ぎ、寝る空間を確保するためだけの、人からすると簡素な小屋のような物が一つあるだけだ。
オークソルジャーが部下を率いて、各地点で小拠点を作り、その周辺を一日に一度巡回する。
そして、その小拠点をオークソルジャー以上の個体が巡回する。
ここ数年で行われた、オークの生態調査でそんなことが分かっていた。
その他に特筆すべきは、オーク達の身に着ける物、特に武器、それを使った戦闘技術に関しての進歩は凄まじかった。
今までは、低級の魔物と呼ぶに相応しいだけの知性しかもっていなかったためか、木製のこん棒のような物や、冒険者達から奪った武器を持っていても、体当たりをしてきた。
それは、その辺の木を適当に加工しただけの物や、人間が使用するような武器では、オーク達の筋力を十全に活かすことが出来ないからだったのかもしれない。
最初に、小拠点の長であるオークソルジャーが金属でできた巨大な武器を持っていることが確認され、その内普通のオーク達もオークソルジャーが持っているより一回り小さな物を振るうようになった。
剣、斧、槌、人間の概念で呼ぶのならそう表現するしかないオーク達の武器は、人間が振るうにはあまりにも強大で、叩き切る言う表現すらぬるく感じるような物であり、叩き割る、叩き壊すと言う方が違和感がない。
恐らく、オーク達からすれば今までの武器は、人で言うなら木の枝を握っているようなものだったのだろう。
もし、本気で戦うのであればそんなものではなく、素手や自分の体を使って戦った方がマシ、たぶんそんなものだったのだ。
だが、大きな武器を手にすると言うことは威力の上昇とともに、速度の低下を意味すると言うことだ。
敵の個体数を確認した後、俺はアンバーに視線を向ける。
静かに「身体強化」の出力を上げて行きながら、アンバーの魔法の準備が終了しているか確認するためだ。
俺の視線に無言で頷くアンバーに、俺は一番左のオークを指差すことで、俺が倒す個体を示した。
それに再びアンバーが頷いたことを確認した後一息置いて、俺は一気に飛び出した。
オーク達の反応を許すことなく、一太刀で一体のオークの首を落とす。
慌てたように武器を手に持ち立ち上がる、オーク達だがその後ろからはアンバーの魔法が襲い掛かる。
単純な火の球を飛ばす魔法だが、アンバーが使えばその威力は当たりさえすれば、オークソルジャーであろうと一撃で屠りうる。
だが、今回は威力を少し落とすことで二つの魔法を制御している。
(本当に器用なことだ。)
俺はオークソルジャーの気を引きつつ、未だ、ただの一つも魔法を飛ばせない俺と、アンバーを比較して羨ましく感じていた。
爆音と共に二匹のオークが頭部に魔法を受け倒れたことに一瞬、オークソルジャーの足が止まるが、アンバーはまだ茂みに姿を隠したままだ。
無理に探そうとするなら俺に切り倒されることは必至である。
「ブモオオオオオオオオオオ!」
オークソルジャーも同様の結論に達したのだろうか、あるいは単純に目の前の敵を倒すと言う知性しかないのか。
雄叫びを上げながら、俺に向かって助走をつけて武器を大振りに振るってくる。
実際、その判断は正しく。
次の魔法の準備が完了するまでに、俺を倒すことしかオークソルジャーに生存の道はない。
当然、俺とアンバーの作戦は次のアンバーの魔法までの時間稼ぎを、俺がオークソルジャーの気を引くことですると言うものだ。
オークに限らず、進化をした魔物は進化前より、知性だけでなく、筋力や反射速度が向上する。
そこにさらに、個体差があり、賢いオークソルジャーであれば魔法の飛んできた方角から、アンバーの方へ走って行く個体もいる。
反射速度に優れた個体であれば、アンバーの制御する魔法は避けられてしまう事もある。
幸い、この個体は賢い個体ではないようだ。
オークソルジャーの大振りの攻撃を、新調した盾で受ける。
新しく購入した盾は、カイトシールドと呼ばれるもの一種だ。
上から振られたオークソルジャーの一撃は当然ではあるが、オークウォーリアーの一撃よりも軽い。
頭上に掲げる様にして、武器の衝撃を受けきった後、オークソルジャーが次なる攻撃のために武器を引いた瞬間を狙って右足を一歩踏み出す。
完全に懐に入った状態、ここで頭を下げるようなことがあれば、オークソルジャーの腹に顔を押し付けることになるような、そんな密接距離。
オーク達の強力な一撃を避けるためには、その懐に入ってしまう事が簡単なのだ。
問題は一点、こちらも存分に剣を振るえなくなってしまうため、有効打が無くなること。
カイトシールドを買ったのは、それをなくすためだ。
鋭く尖った盾を殴りつけるようにして、オークソルジャーの腹に叩きつける。
分厚い皮膚に、分厚い脂肪、それらに守られた腹部にすら、魔法で強化された俺の身体であれば悶絶させる程度には有効打になりうる。
一瞬ブニュリとした感触の後、盾を通して俺の腕にも衝撃が返ってくる。
「ブゴッ…!?」
むせる様に鳴くオークソルジャーはがむしゃらに、武器を振り回し、俺を近寄らせないようにしてよろめきながら数歩下がった。
「…」
そんなオークソルジャーを睨み付けるようにしながら、大きく左回りに移動する。
アンバーと俺でオークソルジャーを挟み込むように立ち回る。
(そろそろ、大丈夫かな…。)
アンバーの魔法のタイミングを、三年弱共に狩りをしてきた感覚だけで把握する。
アンバーの様子を確認出来れば一番なのだが、茂みに隠れた彼女はこの距離ではなかなか見つけられない。
「姉さん!」
魔眼に魔力を注ぎながら、アンバーに合図する。
一直線に飛ぶ魔法を使うのに挟み込むように立ち回るなんて、誤射の可能性を考慮するなら本来はしないものだ。
だが、アンバーの魔法は外れない。
なぜなら俺が師匠から貰った魔眼は、「麻痺」の魔眼。
自分の瞳に刻印魔術を刻み込むことで、使えるようになる魔眼という技術。
師匠が言うには汎用性に富むものの中から、冒険者と言う職業柄、相手を石化させたりするのはまずいと言うことで「麻痺」の魔眼にしたらしい。
その魔眼を起動した状態で俺に睨まれたオークソルジャーは、ビクンっと跳ねる様に体を震わせ動きを止める。
たとえ、アンバーが操る魔法の圧倒的な熱量が、背後から迫り、徐々に強くなっていくことを感じようとも、それを避けることはおろか、確認することすらできない。
「…ふぅ。」
アンバーの魔法により、頭部の吹き飛んだオークソルジャーを確認した後、息を吐きながら魔眼に魔力を注ぐのを止める。
「フランク、この後はどうする?」
腰のあたりまで伸ばした髪を揺らしながら、スタスタと歩いてくるアンバーは、この後もオークを狩り続けるか聞いてくる。
「…そうだね。時間は短かったけど、オークソルジャーの頭は飛んじゃったし…。このまま帰ると稼ぎは少なそうだから、後一つ小拠点を潰していこうか。」
首肯するアンバーを見て、オーク達の牙を二人で回収してから、次の獲物を探して森の深くへ進んでいった。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




