3話.お姉さまは、魔法少女。
次の話始めを考えずにその話を終えると大変なことになると学びました。
今回から主人公の家族が出てくるので、会話を多くして出来るだけ読みやすいようにしたいなと思って書いていましたが、主人公がまだ話せないのがかなり書きにくかったですね。
話を進めていくなかで、設定とずれた部分があるので直したつもりではありますが、2話とのズレや最悪三話内でズレがあるかもしれません。
大筋には影響がないので違和感があっても優しく指摘していただけたら幸いです。
案の定、姉のアンバーと主人公の年齢がこの話の中ですでにずれていたので修正しました。
今回のようなズレに限らず誤字脱字など今後も修整が必要な場合すでに投稿済みの部分も含め少しずつ修整をしていきたいです。
家族と向き合った状態の俺は、並んだ三人を眺めた。
母親とは何度も会ったことがあったが、その他の家族とは初対面だった。
先ほど母親に抱かれ俺の寝ているベッドを見下ろしていた女の子に加え、五歳くらいに見える男の子がいる。
俺の兄と姉にあたる子供なのだろうが、どちらも年齢に見合わないほど綺麗な立ち振る舞いだ。
子供の他に、父親なのだろう二十代程度の長身の男性もいる。
子供たちもかなりの教育を受けていたことが分かるが、この男性はそれ以上に綺麗な立ち振る舞いだった。
そして、この三人に加え母親も髪の毛が赤い。
(よく見ると、全員目も赤いのか?使用人の髪は金髪だったから、異世界人全員が赤いわけでもなさそうだが…)
(子供たちが受けている教育のレベルは高そうだし、親が無理やり染めているようなこともなさそうなんだけどなぁ…)
そんなことを考えていると、黒いスーツに赤いネクタイの男性が一歩前に出て膝立ちになり、目線を合わせて話す。
「やぁ、フランク。僕の名前はロバート・ヴァーミリオン、君のお父さんだよ。僕からすると二回目だけど初めて会ったときは、君は産まれたばかりで寝ていたから今日は起きていてくれて助かったよ。」
俺が小さいせいかかなり大きく見えるが、顔立ちは優しそうな好青年といったところか。
ロバートは立ち上がって一歩下がり、隣に立つ男の子に視線で話すように促した。
今日のために誂えたような真新しい白スーツに赤いネクタイをした少年が、こちらを警戒するかのように、少し眉をひそめていた男の子はそれに気付き父親と同様に、膝立ちになりしっかりとこちらを見ながら自己紹介を始めた。
「俺はオーランド・ヴァーミリオン。ヴァーミリオン家の長男で君の兄になる。今年で七歳になる。あとはなんだ…まぁよろしく。」
発声こそ訓練されたからかきれいだったが、箇条書きにした自分の特徴を話すかのようだった。
(話すのは苦手なのかな。少し警戒されているみたいだし、両親が取られると思っているのかな。)
話始めるまでは、しっかりと意思を持った瞳というべきか、変におどおどせず、まっすぐこちらを見定めるような観察するような視線だったために意外だった。
少しバツの悪そうなオーランドは父をまねるようにして、女の子のほうに視線をやった。
女の子は、膝をつくようなことはなく、右足を一歩前に出して軽く膝を曲げた。そして着ていた赤いドレスを少し持ち上げて大きな瞳と口をいっぱいに広げて話始めた。
「私はアンバー・ヴァーミリオン。もうすぐ、五歳になるわ。友達から産まれたての赤ちゃんは、しわくちゃで可愛くないって聞いてたから、もし私の弟が可愛くなかったらどうしようって不安だったけどちゃんと可愛かったから安心したわ。もう少し大きくなったら可愛がってあげるわ。」
(姉には好意的に捉えられているようでよかった。)
アンバーはゆっくりと姿勢を戻し、どうするのとでも言うようにこちらを見つめた。
正確には俺を抱いている母親を見たのだろう。
俺と母親が今日で初めて会うわけではないと知っているのだろう。
母親がここで自己紹介をしたところで、俺も名前や性格なんかの基本的なことは知っている。
それはおそらく家族全員が分かっているのだろう。
あるいは、産まれて三か月の子供に自己紹介をしてもあまり意味ないことを理解しているからだろうか、母親の言葉に全員が驚きの表情を浮かべた。
「じゃあ最後はお母さんね!あなたフランクを預かってくれるかしら。」
そう言って立ち上がり、ロバートに俺を抱かせようとする。
(やるのか…)
ここにいる全員が思ったことだろう。
だが、あえて強く断る理由もなかったからか、ロバートはおとなしく俺を抱き椅子に座った。
「はいはい、クリスは何でもやりたがるけど、何を言うのか決めているのかい?」
おそらく最初の予定にはなかったことなのだろう、ロバートは少し心配そうにそう言った。
母親はロバートに言ったことに軽く頬を膨らませてから、椅子に座ったことを確認して、アンバーがしたようにしながら自己紹介を始めた。
「はい!フランクちゃん!私はクリスティアナ・ヴァーミリオン、大きくなったらクリスって呼んでね!あなたやオーランドのお母さん!ママよ!今は23歳でー、えっとー、意外と言うこと思いつかないのね。はい!お母さんの自己紹介終わり!とりあえずフランクちゃんが元気に育ってくれているから十分よね!」
23歳というには、テンションのせいか若く見えるような気もする。
どこか落ち着いているアンバーの方が精神的には大人なのかもしれないとすら思える。
しかし、流石夫婦というべきか、やっぱりと言いたげなロバートの懸念は当たったのだろう。
俺の母、クリスはあまり考えずに行動して失敗することが性格的に多いのかもしれない。
「なによぉ!仕方ないじゃない、オーランドやアンバーちゃんの時は出来なかったから、やってみたかったの!それに、大人に自己紹介するのとは勝手が違うかったの!」
クリスはドレスを着ながら、地団駄を踏むかのような動きをしながら、自分の失敗を憐れむような家族に文句を言っている。
(足首ぐらいまであるドレスでよく転ばないな、今日だけかもしれないが兄も姉も子供なのに正装のようだし、着慣れるような環境なのかもしれないな。姉もドレスで挨拶する際の所作には慣れている感じがあったし。)
「それで、お母さま。これからどうするの?」
アンバーが少し疲れたように聞く。
「んー、そうねぇこれ以上騒いでると、フランクちゃんもしんどくなっちゃうだろうし、今日はこれで解散ね。お母さんはフランクちゃんを寝かしつけてから行くから、みんなはリビングで休んでいて。」
さっきまでとは違う口調だ、たまに使用人と話しているときもこの口調で話していたから、こっちが普段通りなのだろう。
それを聞いて、こちらも意外に疲れていたのかオーランドが安堵の笑みを浮かべた。
「あぁ、父さんも、もう少しフランクを見てから行くよ。」
「かしこまりました。では、父上、母上お先に失礼します。」
「お父様、お母さま、私も失礼いたします。」
ロバートの発言を聞いてから、オーランドが、それに続いてアンバーが挨拶をして、一礼してから退出していく。
それを見届けてしばらくしてから、ロバートが俺をベッドに下ろしながら、声を落として話始める。
「フランクもお眠かな。気が付かなかったけど、オーランドも疲れていたみたいだね。」
その言葉に、俺を寝かしつけるために、リズムをとるように軽く胸をたたき続けている、クリスが答える。
「確かに、オーランドはポーカーフェイスが上手くなったかもしれないわね。」
「最後に気を緩めたのは家族の前ってことで見なかったことにするとして、ポーカーフェイスは貴族に必須だし、やっぱり五歳の誕生会や王都で子供用の舞踏会に参加したのはいい経験になったのかもな。」
「アンバーちゃんも来年五歳になるし、そのころにはオーランドみたいにちゃんづけで呼ばせてくれなくなったりするのかしら…」
「オーランドは男の子だし、アンバーとは違うかもしれないけど、もしそうなら、代わりにいっぱいフランクちゃんって可愛がってあげたらいいじゃないか。今日だって、アンバーも意外とお姉ちゃんする気満々のように見えたし、一緒に可愛がっているとちゃんづけなんて些細なこととクリスだって思うかもしれないよ。」
(どうやら五歳になるとイベントが盛りだくさんみたいだな、それまでに厳しい教育を受ける機会があるんだろうけど、今はもう限界かな。)
なぜ胸をポンポンと軽く叩かれるだけで眠くなってしまうのか、眠気にあらがえない体を少し疎ましく思いながら意識を手放していった。
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<ロバート視点>
フランクが寝てしまってからも、すぐにリビングに向かうなんてことはなくクリスとの話は続いた。
あくまでフランクを起こすことのないように、先ほど同様小さな声での会話だ。
「フランクは、オーランドやアンバーがまだ赤ちゃんだった時とも、違うね。僕たちが話しているときも話の流れをなんとなく理解しているのか、次に話す人のほうを向いていたように見えたし。僕たちが部屋に入ってきたときも全員を観察するように眺めていたように見えたから、少し怖かったよ。」
怖かった、そんなことを言うつもりではなかったが自分でも気が付かなかった本心なのだろう。
どんな子供であっても、自分の子であることは変わることはないし、特別何かをするということはないが、頭のいい赤ちゃんは知らない場所に連れていかれたときに周りにあるものをよく観察する、という話を思い出して少しこの子は天才かもしれないとも思ってしまった。
オーランドやアンバーの時もそう思ってしまったし、僕は親バカなのかもしれない。
「そうね、三人目になれば慣れるものかと思っていたけど、普段も手が掛からないというか、あんまり泣いたりしないせいでこっちが心配になるのよね。」
すっかり母親の顔になったクリスに幸せを感じながら、頻繁に子供をみてやれない貴族という地位に少しむずがゆさを感じた。
「赤ちゃんとはいえ、人間だから個人差みたいなものは大きいのかもしれないね。僕は元気に育ってくれているみたいで安心もできたけど。」
「そうね、元気でいてくれたらそれでいいのかも。そろそろ、フランクも落ち着いてきたし後はステラに任せましょう。」
その後、使用人のステラにフランクを頼みオーランド達の待つリビングに二人で向かう。
オーランドもアンバーも年齢のわりに落ち着いているけど、まだまだ子供盛りだしきっとお父さんと遊びたいだろう。きっとそうだ。
今日は目一杯遊んであげよう、そう決めて満面の笑みでリビングの扉を僕は開けた。
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それから、半年が過ぎてもこれといったイベントはなかった。
俺がハイハイできることを隠して、部屋を脱走したのち捕まって、その後部屋の警備が厳重になったり。
時折、母と一緒にダンス稽古やらの忙しい合間を見つけて、姉のアンバーが愚痴にを言いに来ていたぐらいだった。
ハイハイや、多少言葉を話せるようになったり、柔らかい物であれば食べられるようなったりと、乳幼児から子供になる準備ができてきたころだった。
クリスとアンバーはいつものように二人で談義しながら、俺と遊ぶというか俺で遊ぶというべきか軽く持ち上げられていた時に部屋の扉が開いた。
家族が一年たってもまだ、ベッド付近の家具しかない俺の部屋にオーランドが、最後にロバートが入ってくることで家族が全員集まった。
おそらく、ロバートが何のために入ってきたのかわかっているのだろう、クリスは俺を抱き上げた。
「今日は、フランクの一歳の誕生日だし、しばらくするとアンバーと一緒に僕も王都に行かないといけないから。家族で集まる機会がしばらく来ないのでお祝いもかねて、みんなでご飯を食べることにしました。」
そう言って、ロバートは俺たちを大広間に連れて行った。
俺は以前部屋から大脱走してから、部屋をなかなか出してもらえなくなったから初めて来た。
かなり広めの部屋に洋館御用達、お誕生日席ありの長机や、よくわからない絵画がいくつか飾られている。
(ひどいスペースの無駄遣いを見た…無駄に天井も高いし…)
ロバートが上座に着席し、男女で左右に分かれるように座っていった。
俺は母親の膝の上に座らされる。
全員が座ったのを見計らってなのだろう、一息つけるようないいタイミングで料理が使用人たちによって運び込まれる。
豪勢な料理と俺用の肉団子のようなものや果実たちが並び終えられ、ロバートが俺の誕生会の開会を告げる。
「今日はフランクの誕生会だけど、近々アンバーも大きな舞踏会や食事会を控えているし、家でくらい落ち着いてご飯を食べてほしいからあんまり厳しいテーブルマナーなんかは言いっこなしで行こう。じゃあみんなで手を合わせて、」
「「「「いただきます。」」」」
それからは、俺は口の前に持ってこられた食べ物を食べる機械だった。
オーランドもアンバーも自分から話題を振るタイプではないからなのか、全員が黙々とご飯を食べ始めた。
たまに、オーランドやアンバーがこちらを見てくるぐらいの状態がしばらく続いた。
クリスはその様子を見て、話し始める。
「アンバーちゃんは、この前の舞踏会のパーティーでお友達はできた?」
「はい。まだお友達言ってもいいかわかりませんが、何名か仲良くなれそうな方とお会いできました。」
半年前は普通の女の子と同じ話し方だったが、そのパーティーに出るためなのか丁寧な話し方になっている。
「あら、そうなの?その中に男の子はいるのかしら。」
クリスがそう言ったとき、ロバートとアンバーが同時に苦い顔をした。
「男の子とは、今度の誕生会で知り合うことにしました。」
あまり、男の子の話題は出してほしくないのか返しがかなり素気ない。
(この年頃の子に異性の話を家族の前でしろってほうが無理だよな。)
「それより、お母様。私もフランクにご飯をあげてみてもいいかしら。」
強引な話題変更だが、先ほどから、少し羨ましそうに俺にご飯を与えるクリスを見ていたから全く興味のない話題というわけでもないのだろう。
「あら、いいんじゃないかしら。フランクちゃん、お姉ちゃんからご飯食べさせてもらおうねー。」
アンバーは果物を一つ摘まむと、俺の口に近づけてくる。
「ほら、あーん」
俺に拒否する理由もないのでおとなしく、口を開けて食べていく。
「ふふふ、ペットに餌付けするとこんな気持ちなのかしら。」
食べさせてもらうのが、少し怖くなったかもしれない。
アンバーが俺にご飯を食べさせているので今まで、自分のご飯をあまり食べられなかったクリスがご飯を食べ進め始めた。
周りも見れるし、意外と母親思いなのだろう。
(自分の嫌な話題もなんだかんだで逸らすことにも成功しているし、強かなのかもな。)
「オーランドもたまにパーティーに参加するようになってきたけど、女の子の知り合いとかその辺は、どうなのかな。」
ロバートはクリスにもアンバーにもこれ以上話題を振るのは難しいと判断してかオーランドに話しかける。
「女性の知り合いは、何名かはいますが特別親しい方は居りません。」
無難な返しだがこの夫婦は、なんとか話題を作ろうとしたときは異性の話を振りがちなのかもしれない。
(俺も無難な返しは用意しておいた方がいいんだろうな、とりあえずこの兄の発言は参考として覚えておこう。)
「そんなこと言っても気になる子の一人くらいいるだろう。」
アンバーの時は苦い顔していた割にはしつこい男だ。
「父上と母上は何歳で知り合ったんですか?」
「僕たちかい!?僕たちは…」
おそらく言いたくないことなのだろう、急に尻すぼみになり始めた。
オーランドは知っていたのか、まぐれなのかクリーンヒットを引いたようだ。
クリスが少し笑っていたから、それほど悪い出会いではなくただ恥ずかしいのだろう。
それからは、得意な勉強なんかや友達とどんな遊びをしているか、どんな話をしているかなど話題も無難なものになって俺の誕生会は終わった。
俺にとっては美味しいものが食べられたから満足な誕生会だった。
それから、しばらくしてクリスとアンバーが俺の部屋に遊びに来た。
「もう少ししたら私はお父様と王都に行かないといけないから、しばらく会えなくなってしまうし、私の特技を見せてあげる。」
唐突に来て、何なのか俺は積み木の芸術的な積み方の研究に夢中だったのに、抱き上げて無理やり向き合う形を作られる。
この時、俺は子供の特技なんてせいぜい友達から聞いた、マジック程度だろうと思っていたのだ。
「お母様、やってもいいかしら。」
「そうね、賢い子は素質が高いみたいだからフランクちゃんは素質があると思うから早めに見せてあげたいのよね。ただし、小さいものにすることは忘れちゃだめよ。」
クリスの言葉に頷いてからアンバーは少し俺と距離を取り、人差し指でこちらを指して、目を鋭くして集中する。
ボッ!っという音とともに、アンバーの人差し指からライターの火ぐらいの火が出てくる。
しばらく、俺にその火を見せるように左右に振った後、必死に火を追う俺からその火取り上げるかのように消してしまう。
(うおおおお!ほんとに魔法なのか!?すげぇ!)
内心大興奮だった、何が積み木芸術だ凡人の俺にはちょっと工夫した程度の積み方しかできなかったのだ。
「っぉぉおおお!」
なんとか、この興奮を伝えるべく話そうとするが、俺はまだうまく話せなかった。
そんなことも忘れるほどにこの世界に産まれて一番興奮していた。
想定外の実感がわくまで時間がかかった産まれ直しより、想定内の魔法が直に俺の心を揺さぶったのだ。
俺は赤ん坊にしては、表情や感情は動かないし、普段あまり声をださない。
そんな俺が、見たことないような興奮を見せていることにクリスもアンバーも満足したようだった。
「私がいない間私と私の小さな大魔法を思い出しながら、練習でもしてなさい。」
やり方もわからず、火を出すという危険な行為だが、この日から俺は魔法に傾倒するようになった。
この世界に産まれて、初めてのターニングポイントだっただろう。