36話.泥のように眠る。
最近ポケモンがやりたくて仕方がありません。
今回は前回転生者視点の実力評価で貶されたので、少しだけこの世界視点の実力評価で上げられました。
本当は冒険者ギルドで酒盛り、祝勝会みたいなのをやってるつもりだったんですけど、この世界の設定的に考えて、そんなことしてなさそうだなと思って、行方不明者などの捜索に力を入れていると言うことになりました。
この世界だけじゃなくて他の世界にも共通する部分のある設定なんで、そのうち、その設定をマリウスかなんかが解説する話も投稿したいなと思っています。
オークウォーリアーとの戦闘のことを師匠に話した後、普段と同じようにいくつかの話をしていると、冒険者ギルドの前までたどり着いた。
どうするのかと言う視線を向けると、師匠は立ち止まりこちらを真っ直ぐ見つめた。
「とにかく、今のお前がオークウォーリアー程度に苦戦するのは、戦闘経験のなさと使える魔法が少ないうえに、制限ばっかりのものだからだ。じゃあな!」
師匠はそう言い残して、魔術塔の方へ飛んで行ってしまった。
理由は分からないが、俺がオークウォーリアーといい勝負をしたと言うことに、少し苛立っていたように感じた。
ただ、師匠が俺よりオークウォーリアーの方が格下だと言った根拠は、マナを多く宿しておけるからだ。
それは、この世界に産まれた俺が小さな頃から、体に留めておけるマナや魔力の量を増やすために訓練していたからだ。
無限とも言えそうな魔法の種類を持つ師匠からすれば、俺は燃料はあるのに走らない車と変わらないのだろう。
そこに、俺自身も感じていた歯がゆさのようなものを感じたのかもしれない。
飛んでいく師匠を手を振って見送りながら、そんなことを考える。
適当なところで見送りを止め、大きく息を吐いてから、未だ騒がしさを保つ冒険者ギルドに入る。
この時間に冒険者ギルドに立ち寄ったことはない為、この賑わいが普通なのか、オークの騒ぎ故かは、判断が付かない。
ギルド内を観察していると、慌しく走る職員の一人が、俺に気付いて駆け寄ってくる。
「フランクさんですね?」
「えっ?はい。」
この職員と話したことはないはずだが、突然名前を言い当てられた。
俺の肯定を聞いた後、職員は手に持っていた紙の一部に印を付けた。
(未帰還者のチェックリストみたいなものか。)
そこに書いてあるのは、名前と簡単な特徴だけに見えるが、たまに魔法を試しに来る程度の俺の顔と名前を覚えているのは、流石プロと言うべきなのか。
「冒険者ギルドから魔術塔に対する指定依頼に参加して頂き、ありがとうございました。」
(なるほど、そっちで覚えられていたのか。)
ただの利用者ではなく、異常事態に対応しに来た他所の人間なら、覚えられていても不思議はない。
「いえ、僕では魔術塔に期待された働きは出来ていなかったでしょう。」
魔術塔からは俺の他に二人参加しているらしいが、恐らくその二人と比べると俺がしたことは微々たるものだろう。
そもそも、魔術塔から来た者に期待されるのは、冒険者達が苦戦を強いられそうなときに、敵集団を一掃するほどの火力だ。
俺の様に、少し強い個体を追い払えた程度であれば、冒険者で事足りていた。
「いや、君のおかげで多くの冒険者が助かった。」
突然、後ろから声を掛けられて振り返ると、そこには俺がアンバーに押し付けたベテラン冒険者がいた。
「もう怪我の方は大丈夫なんですか?」
オークウォーリアーに頭を殴られて、意識を失っていたはずだ。
今は、ふらつきもせずしっかりと立っているように見えるが。
「ああ、あそこに教会の人達が来てくれているだろう?結構値は張ってしまうが、魔法とポーションで治してくれる。あの時は気を失ってしまっていたが、君が助けてくれたと聞いた。本当にありがとう。」
年上に素直に頭を下げられると、こちらも慌てて頭を下げてしまう。
「あぁ、そうだ。オークを突き刺したときに僕の剣が限界が来たみたいで、無断で剣借りてしまってすみません。」
ベテラン冒険者に剣を返しながら、謝罪する。
「剣!謝ることはない。緊急事態だったし、使える物はなんでも使った方が良い。それより、オークに取られた物だと思っていた。寧ろ返って来たことを喜んでいるところだ。」
その剣がどの程度の価値の物か正確なところは分からないが、この世界にしては珍しい叩き切る用の分厚い剣ではなく、切りや突きを主体とする、他と比較すると少し細めの剣だった。
恐らく、鍛冶職人に特注した物か、それに近い物であることは予想がつく。
購入するとしたらかなりの値段がする物だろう。
「防具の方はすいませんが、回収してる余裕がなかったので、その場に置いたままです。」
あの時は必要ないと思って止めを刺さなかった一匹のオークがすべて持って行ってしまっているかもしれないが。
「そっちの方は仕方がない。未帰還者の捜索のついでに回収してもらえることを願おう。とりあえず、今回君のおかげで助かった者は俺を含め、多い。卑下することなく、誇りを持っていいことだ。もう一度言わせてくれ、本当にありがとう。」
ベテラン冒険者は他にも行くところがあるらしく、互いに再び一礼をして別れた。
「話し込んでしまって、すみません。以来の報告をさせてください。」
ベテラン冒険者と話している間、俺に用を残していたのか、こちらを見ているギルド職員に、冒険者ギルドまできた本題を告げる。
「あっ!はい。あちらの受付の方で確認させていただきます。それと、このリストの中に名前のある方で今どこにいるか知っている人はいませんか。」
俺と共に受付に向かいながら、手に持っていた紙を渡してくる。
(俺の名前の横には印があるだけなのに、横線で名前が消えている人は…。)
「すみません。帰ってくるまでに森の中では人を見かけませんでした。」
職員に一通り確認した紙を返しながら、素直に答える。
名前の他に特徴も書いてあったが、そもそも人を見かけていないのだからわかるはずがなかった。
「ありがとうございます。それでは、お話を伺わせてください。そちらにお掛けください。」
俺は職員に師匠にした話と同じものをした。
「それでは、オークウォーリアーの危機は去ったということですか?」
驚きながら、再度確認してくる職員に首肯する。
「離した通り、止めを刺せたわけではありませんが、あの状態ではしばらくは動けないでしょう。」
魔法で腹を大きく削がれ、片眼を潰したのだ。
如何に生命力に長けたオーク種の進化した個体と言えど、腹を治すまでには時間がかかるだろうし、瞳に関しては再生は不可能だろう。
「…。かしこまりました。これで未帰還者の捜索範囲を拡大することが出来ます。報告に感謝します。」
ギルド職員は何かを考えこむようにした後、こちらに一礼をし、言葉を続けた。
「ただ、オークウォーリアーのもそうですが、オークキングも撤退しただけと聞いています。今後も森に入る際はご注意ください。」
オークキング…。
おそらく今回のオーク達の親玉だろう。
それも討ち損ねたと言うことは、今後さらに勢力を拡大したオークの群れが、再度街に襲撃を仕掛けてくるかもしれないと言うことだ。
「わかりました。ご忠告、痛み入ります。」
俺が報告できることは全て報告した。
席を立ち、冒険者ギルドを後にする。
その後、俺が向かうのは魔術塔。
師匠の話では、魔法で眠らされたアンバーがそこにいるはずだった。
そのまま一晩預けてしまっても、特に文句は言われないだろうが、あまり迷惑もかけていられないだろう。
師匠の部屋をノックすると、すぐに扉が開く。
「あれ?フランク君?どうしたの。」
扉を開いたのは師匠の助手である、セレナだった。
「アンバーがここにいると聞いて来ました。」
俺がそれだけ言うと、セレナはすぐにこちらの意図を読み取ってくれた。
「あぁ、別に一晩くらい、いいのに。」
部屋に入り、アンバーを背負う俺にセレナが言う。
実際俺も、師匠に付き合ったり、自分の研究でこの部屋で寝ることが多い。
きっとアンバーも学生時代、そうだったのだろう。
(親戚みたいなことを言う関係になってしまったな…。)
毎日一緒にいると、互いに情も沸くと言うものだろう。
それが良い事かどうかは判断つかないが、今は心地よく感じてしまう。
セレナの言葉に、アンバーを起こさぬよう、首を横に振るだけで答える。
アンバーが止まっている宿を知らない俺が王都で、アンバーを背負って行くのは五歳の頃一度訪れただけの、ヴァーミリオン家の別荘。
当主であるロバートと、次期当主であるオーランドは定期的に来ているためか、掃除はしっかりとされていた。
使われる予定のない、俺とアンバーの部屋もそれぞれ、綺麗にされているのは王都に居る俺達がいつか使う日が来るかもしれないと言う気遣いだろうか。
アンバーの部屋に行きそのままベッドに寝かせて、二度三度髪の毛を撫でる。
何年か前まで俺がアンバーにされていたことを、やっていると考えると、少しおかしく感じてしまう。
(起きたら怒られるんだろうが、なんにしても生きていてくれてよかった。)
本当は、アンバーを抱えて逃げてしまいたかった。
それでは俺もそうだが、それ以上にアンバーが納得しないことは目に見えていた。
(その点で見るなら今日のは、及第点といかずとも妥協点だっただろう。)
穏やかな寝息を立てるアンバーを見ていると、俺自身の眠気も限界を感じた。
「ふあぁあぁぁぁ。もうダメだな。お休み、姉さん。」
大きなあくびをしてから、自分の部屋に戻り、装備を外してから横になった。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




