31話.冒険者対オーク軍団
11話から20話のまとめを割り込み投稿したので、是非そちらもご一読ください。
また、それが原因で続きから読むを押したはずが、一つ前の話に飛んでしまった方もいると思います。
お手数をおかけして申し訳ありません。
ここからは本編の話。
今回は主人公の無双回というか、強くなってるんだよと言う説明のための回なので、タイトルの冒険者「対」感が薄いですが、冒険者達も安全に一つ一つオークを狩っていっています。
また、今回の戦闘がこの世界に限らず主人公にとって重要な戦闘になってきますので、次話も気合入れて書いていきたいですね。
マリウスの思い付きで急遽、オークの異常発生の調査に協力することになった。
「あぁなった師匠は話聞かないしなぁ。」
最高のひらめきを得て、自身の魔法技術が進んだ時以外ならないと思っていた、無限頷きモードに入ってしまっていたし。
セレナは「せめて、あんたもついて行け。」と言っていたが、早々に諦めていた。
装備を整え、依頼内容の説明を受けようと、ひとまず冒険者ギルドに向かった。
王都の街は、普段とは違う騒がしさに包まれている。
冒険者ギルドに武器やポーションを届ける者や、依頼を受けるために冒険者ギルドに向かう者で街道が埋め尽くされていた。
「魔物の異常発生に関する依頼を受ける方はこちらの列にお並びください~!その他の御用の方は隣の列にお並びください~。」
最近冒険者ギルドで見るようになった、おっとりとした新人受付の子が整理する列に並ぶこと数十分。
ようやくギルド内に入ることを許され、魔術塔からマリウスの代わりで指定依頼来たことを告げる。
「ありがとうございます。もうすぐ、依頼の説明があります。中に入って、もう少々お待ちください。」
ギルド内で冒険者の列を整理する受付の、その言葉に頷き、中の様子を確認する。
冒険者ギルドの中は、一人でも多くの冒険者が入れるようにか、椅子や机などが可能な限り脇に寄せられ、中に居る冒険者達は、壁にもたれ目を閉じじっくり待つ者や、仲間内で立ち回りの確認をする者など、様々だった。
その中で、一人見知った人を見つけて声を掛ける。
「お久しぶりです。今回の依頼を受けられるんですか?」
しばらく前まで、ヴァーミリオン家の領地までの商人護衛依頼も受けてくれていた、ピンク髪のモヒカンの冒険者だ。
モヒカンは声を掛けられたことで、こちらに気付いたのか、一瞬ビクリとした後ゆっくりとこちらに振り向き、ニッ!っと歯茎を見せるように笑う。
「おう!本当に久しぶりだな!ほぉ、しっかりと鍛錬を積んでいるようだな!依頼についてはお前さんの予想通りだ!と言うより、ここにいる冒険者は全員そうだろうな!」
組んでいた太い腕をゆっくりと解いて、握手を求めてくる彼に応えながら、よろしくと伝える。
「そう言えば、お前さんの…。姉だったか?最近ここで活躍しているらしいぞ。さっき列で待機しているのも見たし、依頼を受けるんじゃないか?」
アンバーが異常発生の依頼を受ける…。
師匠の頼み?とは言え、同じことをしようとしている俺が思うことではないのかもしれないが、正直なところを言うと、アンバーに危険なことはして欲しくはない。
「本当ですか…。少し、探してきます。」
モヒカンに頭を下げ、アンバーを探す。
アンバーの活躍は聞いているし、二人いるはずの仲間達も優秀なのだろうと思う。
思うのだが…。
「ねえ…。アンバーさん!」
探し始めてから、ものの数分で見つけられたアンバーに思わず、「姉さん」と言いかけて慌てて言い直す。
冒険者をやっている貴族は、その身分を隠していることがあることは、フォルクス達で経験しているし、俺もそのうちの一人でもある。
まして、アンバーは貴族社会のことを嫌っているため、名前で呼ぶことにした。
「あら、フランク?どうしてここに?」
身長など変化はあるが、落ち着いた口調、腰まで真っ直ぐ伸びた少し暗い赤い髪に、鋭い瞳の中には俺と同じ赤い輝きがある、間違いなくアンバーだ。
(冒険者をやっていても、服は赤を好んでいるのか…。)
森などで赤は目立ちそうなものだが、もう数年冒険者と活動している人間の判断だ。
個人的にはどうかと思うが、何も言うまい。
「どうしてって…。」
俺が答えに迷っていると、アンバーの後ろから二つの人影が現れる。
「あれあれあれ、アンバーがナンパされてる?」
その一つは、飲み物の入ったコップを片手に、とんでもないことを言うのは、黒に近い濃い藍色の髪をした女性だ。
黒い肌に、肩までの少しカールした髪、髪と同色のぱっちりとした瞳に、冗談めかして笑っている。
「お帰り、ナタリー。ナンパではないわよ。」
アンバーは、ナタリーと呼んだ女性にかけられた容疑を否定して、しばらく考えた後、俺を「知り合い」と紹介した。
それに、ナタリーは下から上にじっくりと視線を移して観察してから、「ふぅん」と意味ありげに笑った。
「コレ、アンバーさんの分ッス。それにしても、アンバーさんの知り合いッスか…?」
もう一つの人影はアンバーより少し年下、俺と同じかそのあたりの年齢の青年だ。
栗色のクセのある髪をした、眠そうな瞳をした、柔らかい印象を受ける人だ。
アンバーに手に持っていたコップの一つを渡した後、もう片方の手に持ったコップで飲み物を一すすりしながら、ナタリーと言う女性同様こちらを見てくる。
おそらく手紙に書いてあった、アンバーと共に依頼を受けている二人なのだろう。
確か、青年の方は冒険者ギルドで出会ったはずだが、女性の方は魔法学院で出会っていたはずだ、どの程度か分からないが魔法を使える者が二人もいるなんてこの世界ではかなり珍しい。
或いは、青年も魔法を使えるのかもしれないが…。
(この状態でも、食堂で飲み物を買うことは出来るのか。)
出来るだけ貴族であると言う事や、アンバーの弟であることを隠しながら互いに自己紹介をした。
自己紹介を終え、しばらく話していると突然、ギルド内がしんと静まる。
人に呑まれて見えないが、今いる場所からちょうど反対側に誰かが来たようだ。
「これより!今回のオーク異常発生に関する依頼の説明を行う!」
姿こそ見えないものの、軍人の様な独特の発生故か、ギルド内に男性の声がしっかりと響き渡る。
男性の声が言うには、オークに限らず、魔物と言うのは異常発生するときがあるらしい。
その異常発生の可能性として考えられるものは、二つらしく。
この世界の魔物が出現する場所は非常に広大で、英雄と呼ばれるような人間でもなければその中心部にはたどり着けない。
故に、異常発生は単に、森の奥地で勢力争いを制した一つの種族の繁栄が、人間の入る地域にまで現れただけの場合がある。
それを人間が把握しきれず、「異常」としている可能性が一つ。
もう一つは、魔物の中に、今回はオークの中に進化した強力な個体が現れた可能性。
一度進化した程度の魔物ならば、それなりに居るため、魔物同士が勝手に潰しあうことで消えていく。
しかし、二度目、三度目の進化をした個体は、その配下の魔物も含めて進化するため、群れとしての脅威度が一気に膨れ上がる。
当然、冒険者ギルドが警戒しているのは後者であるが、その可能性はかなり少ない。
今回の依頼の目的は後者でないことを確認、あるいは後者であることを確認して、次の対策を考えるための情報を増やすことで、事態の解決が目的ではないらしい。
俺たちが説明を受けたのは、今日二回目の説明で、第一陣はすでに森の付近に向かって出発したそうだ。
俺達も第二陣の部隊として、第一陣とは別の場所で調査に当たる。
そして俺達の後、第三陣が森に到着した後、すべての部隊が調査を一斉に開始するらしい。
モヒカンのおっさんなど、特に能力の高い冒険者は俺達とは別行動し、より森の深くの調査をするようだ。
俺は今回は冒険者ギルド所属としてではなく、外部から呼んだ臨時の援軍のような扱いのためか、第二陣の遊撃と言う名目で、魔物が現れた時の戦闘要員らしい。
準備、休憩時間の後号令がかかり、説明を受ける前とはどこか雰囲気の違う冒険者達と、森へと集団として移動を始める。
しばらく、アンバーに師匠の思いつきで依頼を受けることになったことなどを伝えたり、近況を聞いたりしていると、森の入り口に辿り着く。
「…。もう魔物達の声が聞こえるね。」
まだ森の外で待機しているだけにもかかわらず、オークに限らない様々な、魔物の叫び声が森から響いて来る。
ゴブリンやウルフ系の弱い魔物達が何かから逃げるように森から出て来ては、冒険者たちを見て、また新たな場所へ逃げていく。
時折、逃げ道を見つけられず近くの冒険者に飛び掛かり切り捨てられたり、射貫かれる魔物達を見ていると、森の縁をなぞる様に誰かが走って来たのが見えた。
その人は、第二陣のリーダーであるベテラン冒険者に何か耳打ちすると、また走ってどこかへ行ってしまった。
「第三陣が森に到着したようだ!これより!魔物の異常発生の調査を始める!皆の耳にも魔物の声が届いているだろう!激しい戦闘が予想される!奇襲、強襲を警戒しながら調査を進めること!」
さっきの人は第三陣からの伝令だったようだ。
リーダーの号令に各人が静かに闘志を高めていく。
俺も森へと歩を進めながら、「身体強化」魔法の出力を徐々に高めていく。
かなりの人数での進行ではあるが、歩みも戦闘も、出来るだけ音を出さないように気を付けて進めていく。
森に入ってしばらく、幾度かの戦闘をしていると、緑の肌に豚の頭とでっぷりとした腹をした、オーク達が他の魔物を追い回しているのが目立ち始めた。
そんな時突然、部隊の進行が止まった。
前方から今までは使われていなかった、魔法による戦闘音が鳴り響いた瞬間、中列以降に居た全員が前方に走り始めた。
森の木々が切り開かれたかのように、開けた場所、そこで多数の人とオークが戦闘をしているのが見えて来る。
どちらから、手を出したのか分からないが、戦闘が始まった以上、俺がすることは変わらない。
前世ではありえなかった挙動を、「身体強化」の魔法で行う。
木々を蹴って、冒険者の頭上を飛び越え一気に前線へ着地する。
その際、勢いそのままオークの首に剣を突き立てる。
早速、装備が血で汚れてしまったが、今は気にしていられない。
急いで、もはや意識の失われたオークから剣を引き抜き、軽く血を払う。
(後ろは任せて大丈夫だろう。)
いったいどれほどのオークがいるのか分からないが、一体一体力任せに首を狙い、切り捨てていく。
本来、俺より身長の高いオークだが、あまり頭がよくないのか、その体格に余程の自信がある種族なのか、その多くは腰を低くして真っ直ぐにタックルを仕掛けてくるため、頭の位置が下がってしまっている。
オークとの戦闘で意識することは、デカい腹を切るのではなく、首や肩、膝などの肉の少ない場所を狙い、確実なダメージを与えることだ。
腹を切ろうとも、オークの脂肪を支える腹の皮は柔軟性に富み衝撃を吸収してしまう。
切ろうともなかなか致命傷には至らない。
(何のために武器を持ってるんだ…。)
こん棒、剣、斧、どこから持ってきたのか、持っている種類は様々だが、それを活用してくる個体は少ない。
また一体、突進してきた個体の首と肩の境目を左手で掴み、それを支えにオークの体を飛び越える。
手を放す前に空間魔法で左手を包み「爆発」を使うことで、しっかりと首の一部を吹き飛ばす。
その「爆発」を利用して前方へ加速できればいいのだが、俺の空間魔法の特性上それは出来ない。
跳ねるように、木々を利用しながら一体また一体と倒していく。
しばらくすると、流石に学んだのか、脇から攻める冒険者達の対応に追われているのか、あるいは突進してくるような勇敢な者はすべて倒したのか、オーク達も突進してくるようなことがなくなった。
そのまま、見合ったままで居てやることも出来るが、今の俺は一つ試してみたいことがあった。
師匠に教えて貰った刻印魔術で作った杖だ。
背負った杖を左手で構え、中距離用の刻印に魔力を注ぐ。
キィキィと虫が鳴くような音が杖からなり始め、杖の先から火の玉が、一体のオークに向かって飛んでいく。
火の玉は狙った個体には当たらなかったが、密集していたためか、躱し損ねた一体に命中した。
「あぁ、クソ!」
命中したにもかかわらず、俺が悪態をつくのは、杖の性能のせいだ。
魔法が命中したオークは、多少皮膚が焦げ付いた程度で大したダメージは与えられていなかった。
飛んでいく魔法の速度は想定通りだったが、精度や威力、耐久面が期待した物より明らかに低かったのだ。
キィキィと音が鳴ったのは、杖に使用した木材が注がれた魔力に耐えきれなかったためだ。
思わず杖を投げ捨ててしまいたい気持ちに襲われるが、グッとこらえ、冒険者達と合流して少し下がったところで、杖を背負い直す。
休憩もかねて、後ろから戦況を見ると、左右から冒険者達に押されているはずの、オーク達が何かを恐れるかのように冒険者達を押し返し、中央から左右に割れていく。
「なんだ?」
誰が呟いたか、その状況に気付いた全員が持った疑問だったが、すぐに答えの方から現れた。
ドッドッっと何か重い機械の駆動音のような一定間隔の音が徐々に、オーク達が割れた道を滑走路に一体のオークが戦場へ乱入してくる。
「ブオオオオオオオオオオオ!」
辺りに散らばった同族の姿を見た怒りか、あるいは単に敵に対する威嚇行動か、乱入した多くは戦場の中心で吠える。
周りのオーク達より明らかに二回りは大きく、他のオークの同様に脂肪が目立つ中にも、明確に隆起した筋肉が他より上位の存在であると物語っている。
「オークウォーリアーだ!」
おそらく、魔物に詳しい冒険者なのだろう。
その乱入者の種族名を、その正体がオークから二度の進化を経た個体であることを全体に告げた。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
星1でもいいので評価していただければ幸いです。
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何卒、何卒ぉ




