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この世界の評価は如何でしたか?  作者: シロナガスハラミ
第一章.人生に色彩あれ。
32/84

29話.弟子入りと乙女の憂鬱と

ブックマークが一つ減っていて草生えましてよ。

それでも、一瞬増えたってことでモチベは上がったので感謝なことには変わり在りませんが。


今回はマリウスの助手で、幼馴染のセレナの視点が主になってますね。

この世界のフランクに対する、アンバーのような関係と言うべきか、そんなキャラクターです。

「よう!お前、遅かったな。」


 マリウスはそう言うと、扉を右手で押さえながら、部屋の中に入るように示した。


 遅かったとはあんまりだろう、ここに来るためには、八年と言う時間が必要だったのだ。

 俺にはどうすることも出来ないもののはずだが、それだけ俺のことを待ってくれていたと考えることにする。


「それは、仕方ないでしょう。急に成長なんかしたら、周りも驚くし、そんな魔法も僕は知りません。むしろ、貴方は全く変わっていないように見えますが。」


 扉の中は、すぐに部屋と言うわけではなく、いくつかの扉がある廊下だった。


 その八年が経過した後も姿の変わっていない、彼の方が異常なのだ。

 おそらく、何らかの魔法で成長や老化と言った、時間経過を止めているのだろう。


「あぁ、これは趣味だ。数個の魔法を組み合わせて、歳を取らないようにしている。」


 人が二人。ギリギリ横に並べるかと言った幅の、まっすぐ伸びた廊下をマリウスのすぐ後ろ歩きながら、話をする。


 彼の姿については、俺の予想は正しかったようで、不老と言うものを実現しているその魔法に、興味がないと言えば嘘になるが、成長を早めることと同様、周りから良くない注目をされてしまうこと必至だろう。

 人間社会において、不死の可能性に対して注目されないはずがない。


 それを使える人間は、その世界で絶対的な力を持った状態でなければ、拘束されたりでその技術を他人に利用されることになるだろう。

 つまり、俺がその魔法、技術を習得しようとも、使う機会がないのだから、習得していないのと変わらないのだ。


「趣味、ですか…?まぁ、いいです。それより、ここの塔の名前ですよ。魔術塔って何ですか。」


 俺は、彼の言っていた魔術の定義が、この世界における魔術の定義と違うことについて言及した。

 魔術塔は魔法使いたちが、魔法を研究するための施設として建設され、マリウスの研究室もその塔の中にある一室に過ぎない。


「あぁ、魔法技術の研究があまり進んでいない世界だと、よくあることだ。魔法と魔術が混同される。この世界だと、威力や範囲の大きい魔法のことを魔術と言ったりしているな。転生者同士の会話であれば、そんな行き違いもないだろう。」


 マリウスは、俺が不老の魔法に強い興味を示さなかったことが意外だったのか、怪訝そうに眉をひそめた後、俺に教えた魔術の定義はこの世界の物ではなく、転生者同士で話すときや、魔法の研究が進んだ世界の定義であると説明した。


「まぁ、その辺のことは後々でいい。取り合えず、俺に弟子入りしたと言う証明のために、書類を書かなきゃいけないんだろう?」

 

 マリウスは廊下の突き当りにある部屋に入り、おそらく彼の定位置なのであろう、炬燵のような家具の廊下から最も遠い場所に座った。

 少し無理やりな話題の切り替えを疑問に思っていると、この部屋を訪れた時に、最初に対応してくれたマリウスの助手の女性が、部屋の中にいることに気付いた。


(この人は転生者でもないし、マリウスが転生者であると言うことを話しているわけでもないってことか…。)


 俺が少しの間とは言え、立ち止まり、無言で助手の女性を見ていることに気が付いたマリウスは、学院に提出する書類をさっさと出せと机を軽く指で叩いた。

 その後、俺に彼の対面に座るように、顎で指した。


「アンバー…。姉のこと、ありがとうございました。」


 教科書などを入れた鞄から、学院側から渡された書類を取り出し、それに記入するマリウスに感謝を伝えた。

 唐突に一人、面倒を見て貰ったことを謝るべきかとも考えたが、感謝を伝えることにした。


「ふん。あいつには、俺から特別何か教えた訳じゃない。ほとんど、あいつが勝手に学び。冒険者になっただけだ。」


 それに、マリウスは書類から目を外さず、不愛想に答えるだけだった。

 ゴブリンから助けてもらった時もそうだったが、基本的にマリウス感謝に対して、気にするなと、言う性格なのかもしれない。


「はい。これ、飲み物ねー。」


 アンバーの話をしていると、助手の女性が明るく、マリウスと俺の分の飲み物の入ったコップを二つ机に置いてくれた。


「ありがとうございます。」


 俺が女性に感謝を伝え、マリウスはいつもの事なのか、視線だけで感謝を伝えている。


 その後、出来るだけこの世界の事だけになるように意識しながら、マリウスから魔法についての話を聞いて行った。


-------------------

<マリウスの助手 セレナ視点>


 フランクと名乗った少年は、アンバーちゃんの弟だったようだ。


 私は、マリウスとフランク君に飲み物を渡した後、二人が座っている特殊な形をした机から、少し離れたところにあるカフェなどにあるような形の机で、二人の雰囲気を観察しながら紅茶を飲む。


 元々マリウスが魔法使いとしても、研究者としても優秀…、優秀過ぎるせいで、弟子入りを申し込む生徒は多かった。

 それが、マリウスがアンバーちゃんを初めて弟子として認めたこと、その弟子が真面目で優秀だったことから、マリウスの弟子になれるかもしれない、なりたいと考える生徒がさらに増した。


 つまりは、私がその生徒達の要件を聞き、マリウスに会わせて試験をさせて、肩を落として帰っていく子供達を見送る回数が急増したと言うことだ。


 アンバーちゃんが来た時も、どうせ弟子として認めないのだろうと、私が一番思っていたことだろう。

 それまでも、何人もの優秀な生徒が弟子入りを断られていたからだ。

 それでも、何の試験もなく弟子入りを断るわけではないマリウスを見て、なんとなくマリウスなりの基準があるのだろうと理解していた。

 理解したつもりでいた。


 それが、アンバーちゃんが持ってきた手紙一つで弟子入りを認め、分からなくなった。


 最初は、まだ幼いとは言え、女性がマリウスの周りに入ることに警戒したが、彼女が真面目に魔法について学んでいく姿を見て、そして、彼女がマリウスを男性として見ていないことに気付いてから、私の警戒は少しづつ解けていった。

 そして、最後には休日に一緒に買い物に行くまでの仲になった。


 アンバーちゃんを弟子として認めたのは、女性的な好み、なんかではないだろうと思う。

 マリウスの好みは年上で、特に二十代ぐらいの明るい髪色の女性を見るときの視線は、何かが違うことくらいわかっている。


 もっとも、私とマリウスは同じ村で、同じ年に産まれたのだから、実年齢の年上ではなく、マリウスにとって重要なのは外見が、二十代程度の女性と言うことなのだろう。

 最近は、その外見的な年齢差のために体の成長を止めているのでは、とすら私は疑っている。


 楽しそうに話すマリウスとフランク君は、どこか気心の知れた昔からの友人達にすら見えるが、ときどき聞こえる話の内容からは、ほぼ初対面と変わらない状態であるようにも思える。

 時折、不自然に止まる会話を不思議に思いながら、ぼーっと二人を眺めていると、アンバーちゃんにも私にも話したことのない、マリウスのいくつかある研究の一部の話が耳に入ってくる。


 私たちの体の中にある細胞?と言うものの中に、マナを魔力に変換する際の効率を向上させる、小さな生物がいるなんて言う話だった。

 その小さな生物がしていることを、魔法で再現して、小さな生物が居なくても同じことが出来るようにしたいのだ、とマリウスは話していた。


 産まれた時から、体の中に居る物なら、なぜ居ない状態を想定しているのかと言う内容ではあったが…。


 他の人間が言っていたなら、笑い飛ばすような内容だったが、マリウスがそう言っているならとそうなのかもしれないと思えた。

 何より、私と同じようにその話を、初めて聞いたはずのフランク君が、マナと魔力が本質的には変わらないと感じていたと言った途端、マリウスの笑みが深まった。


 魔力への変換は、マナの粒?二つをくっ付けて一つにする作業で、その小さな生物が居ないなら効率が悪いなど、いろいろ常識はずれなことを言っているマリウスだが、フランク君はその話を、ふんふんと頷きながら真面目に聞いて理解しているように見える。


 魔力を使わないなら、どうやって魔法を発動しているのか、私も感じた疑問をフランク君が投げかけた時は、親近感を感じたが、マナの純度を上げる精錬と言うものを行っていると言うマリウスの返答にまた、ふんふんと頷く彼を見て一瞬感じた親近感もすぐに飛んで行ってしまった。


 単に魔法について詳しい、と言うわけではないようにも思える。

 マリウスもそうであったが、フランク君も幼い時から他と違う考え方をしている人、所謂天才とも言えるものなのだろうか。


「細胞の中にあるものが魔力の変換を効率化しているなら、人間全員が魔法を使えるんじゃないんですか?」


 慣れない書類仕事に少し面倒くさそうなマリウスに、フランク君が新たな疑問を投げかける。

 普通であれば、作業の途中で別のことについての話をさせられれば腹が立ちそうなものだが、マリウスにとって魔法についての話と言うのは精神的な癒しになりうる上に、その程度の質問であれば頭を使わずに答えられるのだろう。


 フランク君の質問をその程度と断じたのは、私も同じ疑問を持ったからだ。

 マリウスの魔法の知識は圧倒的で、多少魔法を使える程度の私が思いつくことになんて、完璧な解答をすでに用意してある。


 実際マリウスの解答は、教科書にも理論的には誰でも魔法が使えるはずだと書いてあるだろ、と少し投げやりな返答だった。

 魔法についての話で楽しそうじゃないマリウスを、初めて見たかもしれない。


 マリウスの態度は、フランク君に対する期待が大きいのか、「それくらいわかって当然だろう。」とすら言いたげだった。


「そもそも、魔法を使わずに人間が目に負えないような速度で動いたり、凄まじい力を持った魔物と渡り合える訳が無いだろう。」


 マリウスが、当然のことのように言ったことに、私は疑問しか感じなかった。

 魔法を使っていない訳が無いと言うが、実際に冒険者として活動している人の大半が魔法を使えないことは常識だからだ。


 だが、フランク君はそれも納得した、と言うように頷いている。


「僕が空間魔法を使ってた時みたいに、無意識に魔法で身体を強化しているってことですか。」


 身体を強化する魔法?

 魔法と言えば、火を出したり、風を起こしたりするものじゃないのだろうか。


 アンバーちゃんは授業終わりにこの部屋に来て、黙々と勉強をする感じの優秀さだったが。

 フランク君はマリウスと同様の、話について行けない人を置いてけぼりにしながら話す感じの優秀さ、と言うことに気が付いた私は、今後の仕事が退屈になることを察して少し憂鬱になるのだった。

読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。


星1でもいいので評価していただければ幸いです。


ブックマークをして頂ければさらに喜びます。




何卒、何卒ぉ

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