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この世界の評価は如何でしたか?  作者: シロナガスハラミ
第一章.人生に色彩あれ。
3/84

2話.家族に初めまして。

好きな、なろう作品が毎週日曜日投稿なので、日曜日に投稿するとか言ってしまった。

なぁんで、楽しみがある日に被せてしまったのか。


今回で家族全員の名前を出すつもりでしたが対面したところで、体力の限界がきました。

次回は家族の名乗りから始まると思います。

 まさか、産まれた瞬間から意識が有るとは思わなかった。

 どうにも、しっかりと見えない目の不快感やら、久しく味わっていなかった体を持ち上げられる浮遊感、纏わりつくような液体、慣れない感覚によるストレス。

 赤子特有なのか、あまりに鋭い感覚など、どれか一つなのかその全てなのか俺は大泣きしていた。

 

 ぼんやりとしてよく見えないが、おそらくおばちゃん、おばさんと呼ばれる年齢層の恰幅の良い女性が俺を抱き上げているようだ。


(産まれた時ってこんな感じなのかよ…それとも、俺もう死にかけてんのか?)


 複数の強い刺激からか、頭も痛くなってくる。冷静な判断といったものもおそらく出来ていない。


「奥様!抱いてあげてください」


 そう言って、俺を『奥様』にゆっくりと引き渡そうとする。


(頭が痛いんだよ…、あんまり動かさないでくれよ…。)


 引き渡された俺は、おそらくこの世界における母にあたる人の少し震えている手に抱かれていた。


「あぁ…、ようこそヴァーミリオン家へ。」


 出産直後だからだろう、疲れ切った声だった。

 そして、不思議なことだが、すごく落ち着く声だった。

 もはや赤子の少ない体力も無くなってしまっていた。


(あぁ、もう無理だ…)


 きっと、白目をむきそうな顔をしていただろう。

 俺は、産まれて早々強烈な睡魔に身を委ねることになった。


 それからは、毎日どころか時間単位で寝たり、起きたりを繰り返していた。

 本当に産まれなおしたのだという実感、そういったものはゆっくり湧いてきた。

 産まれた直後には感じなかった言葉が理解できている状況への疑問、産まれた環境など、考えることは尽きなかった。


 そう思っていた、だが「わからない」「考えてもしかたがない」当初思いついていたすべての疑問は、そのどちらかの結論になった。


 前世から、議題を思いついたり解決策を考えたりというのは苦手だった。

 加えて、この「次の世界」についての情報も足りていなかった。

 

(俺は、賢くないんだった。)


 失意のどん底だったのだ、俺は暇だったのだ。

 赤子というのは、特にこの乳幼児と呼ばれる期間は自身の意思で動くことはできない。

 要するに、自分にできることを探してなんとかこの暇を潰したかった。


 ならばと、どういう理屈か言葉は理解できるのだから、この「次の世界」についての情報を集めようとしてみた。


 しかし、わかったことは少なかった。

 俺の名前はフランク・ヴァーミリオンということ。

 姓がヴァーミリオンということ。

 家族構成は、父母に加え兄と姉が一人ずつ。

 どうも、貴族か富豪なのかその他にも家には、使用人が幾らかいるようだった。


 今いる部屋は、抱き上げられる時に見た程度だが、かなり大きめの部屋だ。

 ただ、その内装は普段俺が寝かされている乳幼児用のベッドとその傍に、俺を着替えさせるときに荷物なんかを置くために使う小さなテーブルと椅子だけで、明らかに部屋の大きさに合っていなかった。

 時間は窓から差し込む日差しから、なんとなくしかわかる程度だった。


(目を覚ますと必ず母親か、使用人の誰か一人は居るが、こんな部屋で退屈しないものなのだろうか。もしいい暇つぶしが有るのなら是非教えてもらいたいものだが…)


 部屋のほかには、母親が「この子も、魔法が使えると良いのだけど…」そう呟いていたことから、魔法というのは一般的であるが使える者と、そうでない者がいるようだということ。

 魔法については転生する前から、中世ファンタジーと聞いていたから、ある程度予想していたし、期待していたから、それほど驚きはしなかった。

 むしろ、存在しないのならどこがファンタジーなのだと言っていたかも知れない。


 そんな魔法も使っている人を見なかった。

 想像以上に使える人間は少ないのかもしれない。

 母親の発言もスポーツ選手や世紀の大発明をできる才能が有ればいいねくらいの小さな願いなのかもしれない。


 赤子の体では、強烈な眠気で一日に複数回眠ることになるせいで、時間の認識というものが曖昧だが、朝が来た回数から生まれておそらく三か月程度で分かったことはそれだけだった。


 会話もできない、聞きたい話であっても睡魔によって途中までしか聞けなかったりする。


 そんな状況では、量でも、質でも満足できるような情報はなかなか集まらなかった。


 この凄まじいほどの暇さ、圧倒的なまでの知識欲。

 それに長期間耐えているのだ。


(そりゃ、赤ん坊はハイハイを覚えたら止まることのない暴走列車になる訳だ。)


 自身も動けるようになれば、開放感から絶対に止まることはないだろう。

 異世界ファンタジー風に言うなら宛ら、「長き封印から解き放たれた魔王」と同じ気持ちだろう。

 

(もし、そんな魔王がこの世界にいるなら今だけなら、少しだけ共感できるかもしれない。)


 それを思いついてからしばらくは、もしそんな魔王と出会ったらどんな話をするかを考えて遊ぶことで暇を潰していた。


(だめだぁ、どうやっても魔王にやられる。もう少し、優しい感じの魔王を想像しようかな。)


 そんな遊びも行き詰ったある日のこと。

 いつものように、恰幅のいい使用人に抱きかかえられながら、聞いていたことが気になった。


「フランク様ぁ~、本日はご家族の方が全員お見えになる日ですよ~。」

「ぁあぁ~」

「まぁっ!お返事いただけるなんて!将来は、この国の宰相様かしら!」


 国があるということや、親ばか気味の使用人は置いておくとして。


(やっとかよ)


 産まれて、少なくとも三か月以上は経っているはずなのに、母親以外の家族の顔すら見たことがなかったのだ。

 この世界での常識としてはもしかすると普通なのかもしれないが、俺の感覚からすれば異常だったので、どうにも気になっていたのだ。


(まぁ。俺が寝ている間に顔を見に来たことがあるとするなら、知ったことではないが。)


(それに来るにしても、夕方ごろとか、あと何時間とかなんとなく教えてくれなきゃ起きてる自信がないぞ。)


 赤子をなめているのかと思いながら、今日は小刻みに寝たり、起きたりを繰り返して決定的な瞬間を逃さない作戦にでた。


-----------------------------------


 そうやって、寝起きを繰り返していると、話声で目が覚めた。


「あら、お母さま、起きたみたい。」


 寝ている俺を見下ろしながら、三歳から五歳の女の子が話しているみたいだった。

 少し舌足らずだが、綺麗な声だった。聞いたことがない声だったが、落ち着いた口調ながら、ピアノを弾く指のような、一音一音が弾んでいるような声だった。

 誰かに両脇から手を入れて持ち上げられているようだ。


「あらあらぁ、そうみたいねぇ、タイミングが良くて助かるわぁ。じゃあ、アンバーちゃん下ろすわね。」

「はい、お母さま。」


 間の伸びた話し方をするのは、何度か聞いたことがあった。今生の母親だ。

 そして、俺のベッドを見下ろしながら綺麗な声で話していた、小さな巨人はアンバーというそうだが、俺の視界からみるみると下へとフェイドアウトしていった。


「はぁい、今度はフランクちゃんの番ねぇ~」


 母親がそう言い、俺を抱き上げベッド傍の椅子に腰かけ、俺も母親の膝の上に座る形にされる。

 そうすると、部屋の中央に立つ三人の男女と向き合う形になった。

 待望の家族との対面だった。しかし俺は、別のことに気が向いていた。


 不思議と母親一人だと疑問にすら思わなかった。

 三人全員、いや母も含めれば四人の人間が集まった時に初めて疑問に思った。

 今まで疑問に思わなかったのか、母親だけでも、アンバーと呼ばれた幼児の時もそうだ。


(なんで、みんな髪の毛が赤いんだ?)

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