26話.王都の舞踏会 後編
25話のタイトルが王都の舞踏会 中編 じゃない時点でお気付きの方もいるかもしれませんが、タイトルは書き終わった後の疲れ切った脳の、一瞬の煌めきにより決めてます。
気付いたのは、投降した次の日ぐらい朝でした。
結果、まぁいいか、と思うことになりました。
今まで前編後編みたいなことをしなかった弊害が出ましたね。
慣れないことはするもんじゃないと言うことで。
タイトルのことはここまでとして、物語としてはこの舞踏会までを20話までに収めたかったんですよね。
ただ、思いついたことを全部書こうとしたらこうなってしまったと言うか、これでも削った気になってると言うかって感じですね。
20話~30話で冒険者やりながら、時折マリウスに魔法のことを詳しく話してもらう、みたいな話を書きたかったんですけど、ムムムムムってかんじですよ。
と言うわけで、次の話から主人公が割とどんどん年取っていきながら、魔法やら戦いやらを覚えていく感じになります。
なるはずです。
今後とも、続けることを目標にゆるゆる続けていきたいと思いますので、何卒宜しくお願い致します。
「そもそも、魔術と言うのは魔法を発動させるための術のことでな…。」
本当にこのマリウスと言う少年の姿をした男は、俺の質問に答えた時や、転生者の話をしている時の面倒くさそうな、彼とは打って変わって、魔法に関係のあることであれば彼は真剣に考えるし、楽しそうに話す。
時々、思考がぶっ飛ぶのか、本人の中では繋がっているのだろうが、本題とズレる彼の話し方は、聞き手からすると非常に聞きにくいことこの上ないが。
70回以上の転生を経験したと言っていた彼だが、その経験が特に話術に活かされているとは思えない。
おそらくどの生も、生きることに必要なこと以外は、魔法に傾倒してきたのだろうと理解させられる話し方だ。
「お前は普段どういう風に、魔法を発動させてる。」
魔法の発動…。
これと言って意識はしたことはなかったが、全く考えてこなかったわけでもない。
と言っても、俺が考えたことがあると言えるのは、魔法の発動と、その維持に対する魔力の消費量についてくらいだ。
その方法についてまで、考えたことなどなかった。
「どうって、言われても…。普通にイメージと言うか、想像したことが魔法として発動してくれてると言うか…。」
彼の質問に対する俺の答えは、非常に曖昧な解答だった。
深く考えたことのない事柄に対する、質問なんてそんなものだろう。
「まぁ、そんなところだろうな。なら、この場で俺を含めたこの会場の人間に影響する魔法が、お前に使えるか?」
急に、そんなことを聞く彼の顔は冗談を言っている風ではなく、至って真剣で、好奇心に満ちたものだった。
「いや、出来ませんよそんなことは。」
この質問に対する答えに、彼が倫理的にとかそんなことを求めていないことは、なんとなく理解出来た。
実際に、それが出来るのかと言うことだけを端的に答えておく。
そもそも、俺より彼の方が魔法について詳しいことは明白で、そんな人間をその魔法で傷つけたり、認識を阻害したりと言うことが、可能なのかすらわからない。
「そうだな。想像した魔法が発動すると言うお前の魔法には、どこかで頭打ちがあることはお前も何となく理解しているのだろう。」
それはそうだろう、たった一人の人間が考えただけで何十、何百、あるいはそれ以上の人間を害することが出来るはずがない。
あるいは天災を、それ以上のことを考えただけで引き起こせるなら、国や人間の組織と言うものの運営すら危うくなるほどの、強大な力を一人一人が持つことになる。
「だが、その頭打ちの壁と言うものは本来かなり高い位置にある。だが、それ以外に人間が個人個人で無意識のうちに制限を掛けてしまう。本来存在しないはずの壁を、それぞれで作ってしまっている。」
その本来高い位置にあるという頭打ちの壁がどこにあるのか、人間が個々人で作らない、本当の意味での魔法の限界がどこにあるかを明言しない話し口は、彼自身もその限界がどこにあるのか体験したことがないと言っているようでもあった。
そして、そういう話は前世にも在ったことを思い出す。
確か、人間は脳に制限を無意識的に掛けており、危機的状況に至るまでは、自身の体や他人の体を壊さないようにしている、とか。
その時は、証明のしようもなく、自身にあまり関係のない事と興味を抱けなかったが、今回は関係がないとは言えないだろう。
「お前の空間魔法が、一定以上の速度で動くと魔力をバカ食いするだのなんだのは、お前が無意識で掛けた制限と言うことだ。魔法も物理も通さない絶対無敵の鎧。それがお前のあの魔法に対する評価だったんだろう?」
自分では魔法に制限を掛けていたなんて、そんな意識は一切ない。
彼の言うことがすべて正しいのなら、おそらく正しいのであろうが、まさしく無意識に掛けていたということなのだろう。
絶対無敵の鎧と言う評価は、確かに俺が「魔力の鎧」に持っていたイメージを言い表すに、ふさわしいものかもしれない。
そして、そんなものに制限がないなど考え難い事でもあった。
一人、自分の無意識と意識の違いを思案する俺を置いて、マリウスは話を続ける。
「そんな無意識による制限は、想像で発動する魔法、魔術を使っているから発生するものだ。刻印魔術はそう言ったものは、人間に意識を一切の介在させる余地がない。」
何らかのセールスのような話題の転換の仕方だが、ようやく刻印魔術についての話題になった。
「どういうことですか。」
俺は教えて貰う側で、この会話では基本的に聞かれたことに答えるだけだったが、もったいぶるような彼の物言いに催促をしてしまう。
そんな俺の様子に、彼は魔法について話すときとは少し違う彼は笑みを浮かべ、話始めた。
「刻印魔術はあらかじめ、何かに魔法の情報を刻み付けて起き、人間も含めた何らかの魔力の持ったものから、魔力を吸収させて魔法を発動させるものだ。」
魔法の情報を刻み付ける、また俺の知らない概念の話が出てきた。
おそらく、この世界の概念ですらないのだろう。
「イメージで発動させた魔法は本人が同じものを使っているつもりでも、その時の体調なんかで微妙に違う部分がある。だが、先に魔法の情報を決める魔術は誰が発動させようと同じ結果が得られる。」
それはつまり、刻印魔術を使えば、俺にも火の玉を飛ばす魔法のような、魔法らしい魔法が使えると言うことだろうか。
望んでいたものに手が届くかもしれないと言う高揚感から、思わず顔がニヤケてしまう。
「それで、その情報を刻み付ける物はなんでもいいんですか。」
俺が普段より少し大きな声でそう聞いてしまうのも、必然であっただろう。
魔法と親和性がありそうなものと言えば、宝石や、ミスリルなどに代表されるファンタジー金属なんかの、希少とされるものを使う可能性も考えられた。
「刻み付ける物は、なんでもいい、紙にインクでも、木彫りの人形に直接彫っても、何なら地面に足で書いても良い。それらの情報の刻まれた魔道具と呼ばれる物を組み合わせて大きな陣として、大規模な魔法を持続的に使うことに優れた魔術だ。その記された情報に魔力を流すことで遠距離の特定の個人を呪うだの、あるいはその逆に祝福を与えるだのに特化している。」
どうやら、刻印魔術と言うものは発動させるために道具が必要なようだが、その道具の素材自体はかなり融通が利くようだ。
問題はその魔道具に刻むもののが文字なのか、あるいは魔法陣のようなものなか、あるいは点を規則的に配置するようなものなのか、一切わからないと言うことだ。
「情報を刻むものは分かりましたけど、普通に文字書いてたらそれが、その魔道具?になる訳ではないですよね。」
もしそうなら、危険なんて話ではないと思ったが、もし赤ん坊であってもやり方さえ知っていれば魔法を発動させられる、この世界で言えば危険度だけなら、それほど変わらないのかもしれない。
「それは当然だな。実物を見せるのが一番楽なんだが、それ用の文字や魔法陣って言って伝わるか?まぁ、特殊な絵を描いたり方法はいろいろある。」
どうやら、この場ですぐに使えるように、教えてくれたりはしないようだ。
せっかくの機会に手が届かず、惜しく感じながら少し歯噛みしてしまう。
「まあ、そんな顔をするな。さっきも言ったが、学校に入るまでは、今まで通り自分の魔法について考えておけばいい。刻印魔術を学んだとしても、結局使える魔法は、本人が見たり思いついた物、想像の行きつく範疇のものしか使えない。今はゆっくり想像力を養っておけばいい。」
マリウスは何かを感じ取ったかのように、入り口の方を見た後、「そろそろ時間だな。」と独り言を呟き、煙を払うように腕を横に一度振った。
すると、こちらに今まで興味を持っていなかった、周囲の貴族たちの粘りつくような視線が一斉にこちらに向き、獲物の隙を伺う肉食の動物の様に、じりじりとこちらに、正確にはマリウスに近づいてくる。
人払いの結界の魔法を解除したのだろう。
「今日のところはここまでだな。そろそろこの国の王が来て、開会の挨拶を長めにして、お前らが踊ってるのを適当に眺めて帰るだけだ。じゃあな。」
そう言って彼は人ごみの中に消えていった。
(しまった…。貴族としての対応をすべきか迷っているうちに礼を言いそびれた…。)
その後、捕まったと言いたげに貴族と煩わしそうに話すマリウスがを見ていると、入り口の方が騒がしくなり、会場の一番先、入り口の反対側に用意された壇上の玉座のような場所まで、一気に人の波が割れていく。
マリウスが言っていたように、王が来たのだろう。
一人の男性が、一段一段と壇上までの階段を上ることで、その姿が俺の眼にも映るようになっていく。
四十代の俺やロバートよりも濃い赤の髪をしたその男性は、若い頃は端正な顔立ちだったことが窺えた。
さらに、その男性の隣には同じ髪色をした、俺達と同じ年代の女の子がいた。
その二人に続き、新たに黒い肌に黒い髪の体格のいい、顔の威圧感のあるしわが老けて見せるのかもしれないが、三十代に見える男性が壇上にゆっくりと上がっていった。
その男性も後ろに、少年を連れていた。
というよりも。
(あれ、フォルクスじゃないか?)
俺がしばらく見つめていても、向こうが気付く様子はなかったが、壇上に上がった少年はフォルクスに違いなかった。
「私はモーガン・ブラックである。これより、王が開会の宣言される。謹聴されよ。」
何らかの魔法だろうか、会場全体に響く声であるのにもかかわらず、近くで聞いても大音量に怯むと言ったこともない不思議な声量だ。
(ブラックって…。公爵家じゃないか!)
それはつまり、この国において王の次に権力のある家と言うことだ。
確か、以前アディルスティがフォルクスは嫡男と言っていたはずだし。
公爵家の教育であれば、あの聖人ぶりも納得…いや、それだけはなくフォルクス本人の性格と努力をあることも理解してはいるが。
「我がスカーレット王国の諸君、今年も欠員無く、皆無事にここに辿り着けたことを嬉しく思う。今宵の主役は、我が娘を含めた、これからこの国を担っていく子供達だ。日頃の努力の成果を見せながら、存分に楽しんでほしい。」
その後、王の話は確かにマリウスが言ったように、かなり長めだった。
フォルクスのような位の高い貴族ならいざ知らず、俺達のような末端の貴族に言葉を直接伝える機会が少なく、出来うる限りのことを伝えようとしているのだろう。
その後、壇上から降りてきたフォルクスと話して、ダニエル、アディルスティと合流したり。
それにつられた、王女様が壇上から降りてきて少し話をしたりした。
舞踏会は、時間にするとかなり長いもののはずだが、俺はアディルスティを含めた、数名の女の子と踊るだけで時間を使い切ってしまった。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




