14話.物知りムキムキピンク
最近、一日五分だけフリートークの録音始めて見たんですけど、楽なのに、楽しいですね。
絵を描いてみるのもいいかもしれませんね。
冒険者ギルドを後にして、しばらく歩いていると貴族の住居区では見つけられなかったものが増えてくる。
馬車が通れるほどの大通りには、医者や、理髪店や、服屋の他にも様々な生活に必要な店があった。
ただ、俺が強く関心を引かれたものは、王都に来た冒険者用と思われる宿や、ポーション屋や、鍛冶屋と武器防具屋を兼ねたものなどファンタジーならではの前世にはなかった店だ。
唯一触ったことのある、剣も家庭教師に教えてもらうために与えられたものは、それなりに良い物を貰っていると聞いてはいるが、自分で目利きが出来るわけではない。
相場なんかを見ようとしても、鍛冶屋に置いてあったものは成人の体格に合わせたもので、使わている素材の量も違うだろうから、あまり参考にならなかった。
売っている物が高いか安いか、値段の違いで多分いい物なんだろうと推測するくらいしか出来なかった。
それでも、全く未知のものを見ることは楽しいものだった。
だが、何も学べたことがないわけではなく、店ごとに値段が大きく変わらないことことに気が付いた。
店の経営なんて、やったことがないから細かな戦略なんかはわからないが、極論同じものを周りの店より高く売るか、より多く売るかの二択だろう。
冒険者ギルドのように鍛冶師ギルドや、錬金術師ギルドや、組合のようなものがあってそこで値段をある程度決めているのだろう。
全く違う土地、世界でも自分の理解できる道理のようなものが働いていると感じられてワクワクした。
冒険者ギルドで意外だったことと言えば、冒険者ギルドにいる人間がいかついムキムキの男ががっつり鎧を着こんで闊歩していたり、昼間から酔っぱらって殴り合いの喧嘩をするイメージと全然違ったことだろう。
フォルクスにしてもそうだが、子供がいたり、男性よりは少ないものの女性も多かった。
あまりじっくり聞いていたわけではないが、護衛を依頼した商人らしき人と異常にデカい武器を担いだ冒険者のグループが地図を広げて、馬車の進行ルートついて真剣に話し合っていたり、その光景は前世の感覚からすればシュールと言わざるを得なかった。
街を囲むように作られている石壁を目標に歩いていたが、その石壁が大きすぎるせいか、距離感が上手くつかめていないようで思っているよりたどり着くまでに時間がかかってしまった。
途中の冒険者ギルドやポーション屋に入ったりの寄り道をしなければ、きっと余裕を持って夕方までには帰れるだろう。
「にしても、でっけぇなぁ。」
出入りの激しい門を避けて、石壁を見上げる。
街にあった家は石レンガを使って作られていたが、この石壁はもともとそこにあった石を削って作ったかのように、継ぎ目のようなものがなかった。
「どうやって作ったんだこれ。」
触ってみても、磨かれたかのようにつるつるとしている。
「おう、坊主!いや、坊ちゃんか、城壁なんか見てどうした。」
壁を見ている俺が迷子にでも見えたのか、三十後半くらいで、日焼けして褐色の、腕の筋肉がパンパンに膨らんだ、男性が声を掛けてきた。
「見たことのないほど大きい壁だったので軽く見るだけのつもりが、石と石の継ぎ目がないことに気が付いて、どうやって作ってるのか気になってしまって。」
「あぁ、これは魔法使いの先生方が壊れた部分を、そのまんまくっ付けちまうんだよ、規模がデカいせいで結構魔力を使うってぼやいてるのを聞いたことがある。」
「魔法、ですか。これだけの魔法を使える人を雇うのはかなりの費用が掛かりそうですけど。」
「あー、いや、俺も詳しい話は知らないが、国のお抱えの魔術師がやってたり、そもそも壊れたところが小規模だったりで費用が掛かったって話は聞いたことがねぇな。」
やけに詳しいが、この人は関係者か何かなのか。
貴族には見えないが、意外とどこかのお偉いさんだったりするのだろうか。
「結構詳しいと思いますけど。」
「いやぁ、この壁の修復に使われてる石材を運ぶことが俺の仕事でな。」
どうやら、関係者の方だったようで、照れたようにピンク色の髪を掻きながら、詳しい理由を教えてくれた。
「そうだったんですね、道理で筋肉がすごいんですね。」
俺は自分でも力こぶを作りながら
どうやって石材を運んでいるのかも、どのくらいの距離を運んでいるのかも知らないが、貴族が長距離の移動に馬車を使うのだそれ以上の道具はなかなか使えないだろう。
「ん?いや、これはどっちかっていうと石材を採りに行くときに、通る森に出てくる魔物を倒しているうちについたものだな。」
なんでいちいちそんな危ないところを通らなきゃいけないような所を採石場にしてるんだ。
「他に石が採れるところ所はないんですか、それか、石が採れるとこまで森を切り開いたり。」
「はっはっは。そりゃ俺たちの悩みのタネでもあり、飯のタネでもあるもんだな。」
上腕ムキムキ男は俺の疑問を豪快に笑った後、よくわからないことを言う。
「まぁ、森で採れる石の質がいいってのと、理由はわかんねぇが、森を切り開いたりすると強力なんて言葉じゃ足りないくらいの魔物がわんさか出るようになるらしいぞ。そういう手の付けられなくなった場所は、馬車なんかで町や村を移動するとき用の道もそういう場所を大きく避けて通るように作ってるって聞くしな。」
そんなことになるのか、確かにヴァーミリオン家から王都までは十五日も掛かるほどないと思っていた、予備日にさらに倍の日程を取っているのは魔物を警戒して、馬車に異常があれば町や村で直すための期間も入っていたのかもしれない。
そういえば、法律でも「大規模な伐採や採掘は国に計画書を通したもののみ行える」、みたいなものがあったな。
一つの家だけが広大な土地をもったり、勝手に国土を広げようとして他国との問題を避けるためかと思っていたが、俺が勝手に納得していただけで、この世界ならではの法律というものは意外と多いのかもしれない。
この人は意外と物知りなようだし、もっと話していたかったがそろそろ帰らないと夕方には間に合わないだろう。
「ご親切にありがとうございました。そろそろ帰らないと門限に間に合わくなりそうなので、御暇させていただきます。」
「お、そうかい?もし、気になったなら図書館なんかで調べてみるなりしてみてもいいと思うぜ、俺も一度調べてみたんだがこれだってやつが見つからなくて長年モヤモヤしてるんだよ。もしわかったら、教えてくれよ。」
上腕ムキムキ男と軽い約束を交わして帰路に就く。
(しまった、魔物を狩ってるひとなら、コツや必要な物なんかを聞いとけばよかったか。)
帰りがてら、行きでも食べた何の肉かわからない串焼きを、食べながら後悔した。




