13話.レッツエンジョイ王都
父親であるロバートから一人で王都を見て回る許可を貰った翌日。
何も持たずに出ていこうとする俺に、ロバートは子供にしては多すぎる小遣いを渡して来た。
「道を歩いていたらわかると思うけど、王都には常に衛兵が巡回している。ないとは思うけど何か問題を起こすと一瞬で止められるし、少なくともその日一日はつぶれると思って行動するように。」
それだけ告げるとロバートは自身の部屋に戻っていった。
他の貴族達に挨拶をしに行くと言っていたから忙しいのだろう。
玄関を出て、しばらく目的もなくぶらぶらと歩いていた。
窓というよりも隙間というレベルのものしかない馬車のせいで、来たときはわからなかったが、王都というのは石か何かで出来たかなり高い壁に囲まれているようだ。
中央に城があり、その周辺を貴族たちが住む木造の建物が建つ区画があり、その更に外側に壁と同様にレンガのようなものを積んで作られた平民用の家が建っていた。
もしこれが観光地のもう使われていない城であれば、俺もテンションを上げて近づいていたかもしれないが、すくなくとも遠くから見る王城には何となく近寄りがたかった。
だからなのだろう、特に意識をしていたわけではないが、俺は平民たちが住む区画の方へと歩みを進めていた。
王都、都というだけあって大通りは、所狭しと人が居て、小物や食べ物を売っている屋台なんかでかなりにぎわっていた。
寧ろほとんど大通りしかないと言ってもいいほどだった。
「異世界の王都と言えば、獣人とかエルフじゃないのか…」
そんな独り言もすぐに雑踏に呑まれ、誰の耳にも入っていないだろう。
だから、俺の転生した「中世ファンタジー」に対する落胆の声も気兼ねなく吐ける。
確かに、この世界でファンタジー生物と言えるようなものの話は魔物、モンスターの類ぐらいで、ファンタジー御用達の別種族の人類は聞いたことがなかった。
適当に買った何の肉かわからない串焼きを食いながら、道行く人の色とりどりの髪や時折見える瞳の色を見て、違和感を感じなくなっていることに異世界の感覚、常識に馴染んできたことを自覚していた。
それにしても、木造よりも石造りの建物の方が運搬やらで費用が掛かりそうなものだが、この王都では平民のほうがそちらに住んでいるのは何か理由があるんだろうか。
そろそろ、視界に映る建物に石造りのものが目立ってきたころにそう考えていた。
そんな中で、さっきまで見ていた貴族の住居以上の規模を持つ木造の建物はやたらと目立っていた。
「…王都の冒険者ギルドか。」
王都にいる期間は二週間近くあるのだ、一日くらい社会勉強に使ってみようそんな気になった。
結局、ギルド証を作っただけで何のクエストもやっていなかったし、出来そうなものがあればやってみてもいいかもしれない。
王都にはどんな依頼が多いのか知っておくだけでもいい。
そう思った俺は、ギルドに入ることにした。
ギルドの造りや、人の数はうちの領地のものと比べると流石と言えるものだったが、雰囲気自体は変わらないように感じた。
今回は受付の方ではなく、扉をくぐって正面に見えたギルドに来た依頼をまとめて張り付けている壁の方に向かう。
領地の方では紹介されなかった、野営ありの護衛依頼なんかもあったが、俺は夕方までに帰ってくるように言われているから、内容や報酬の相場などを覚えようといくつかの依頼とにらめっこしていると声を掛けられた。
「やあ、はじめまして、突然で申し訳ないんだけど今大丈夫かな。」
振り向くとそこには俺と同じ五歳くらいの男女が三名、立っていた。
声を掛けてきたのはその一番前にいる、黒い肌の男の子だった。
この世界では、様々な髪色をした人がいるが、その子は珍しい黒髪をしていた。
「あ、あぁ、初めまして、依頼を眺めていただけなので大丈夫ですよ。」
その男の子もそうだが、その後ろに立っている子たちも、笑顔ではあるものの何らかの期待とも欲望ともとれるようなものが見え隠れするところが、パーティーで出会った貴族たちの雰囲気と似ていて少し素直に返事するのを躊躇ってしまった。
それを気にした様子もなく、黒髪の男の子は続ける。
「その服、貴族だろ?これは秘密だけど、僕たちもそうなんだ。」
服か、気にしたこともなかったが周りの人とこの子たちの服を見比べると、確かに質がいい物を着ているように見える。
「なるほど、それでどういった要件ですか。」
俺が要件を催促すると、男の子は近くにあった丸い木の机と椅子を指差した。
「あー、ここだと邪魔になるかも知れないし、少し座らない。」
少し考えてから、その提案に従って座ることにした。
全員が着席すると、再び男の子は口を開いた。
「まだ名乗っていなかったね、僕の名前はフォルクス。」
それを聞いてこちらが名前を言う前に、白い肌に緑色の髪の毛と薄い緑の瞳をした女の子が話始める。
「わ、私はアディルスティです!」
あまり人前で話すことが得意じゃないようで、話すと決めた瞬間からかさっきまで張り付けていた笑顔が消し飛んで、それだけで一生懸命という表情になってしまっていた。
ここまで来たら、もう一人も名乗るだろうと残った金髪の男の子に視線を向ける。
「ん?俺か、俺はダニエル、よろしくな。」
屈託のない笑顔で名乗りを上げる。
「私はフランクと言います。よろしくお願いします。」
全員が貴族だという割に苗字を名乗ることがなかったのでこちらもそれに倣っておく。
家庭教師や、家族から教えてもらった貴族的なルールとは別の、マナーのようなものがあるのかもしれない。
「フランク君、なるほど、こちらこそよろしく。君も舞踏会とかに参加するためにここに来たんだろう。」
フォルクスと名乗った少年は、俺の名前を聞いて少し考えるようにしてから言った。
「はい、少し早めについたので、父に許可をもらって数日王都を見回ることにしました。」
「声を掛けたのは一緒にこの依頼を受けないかって誘いなんだけど、どうかな。」
そう言ってフォルクスは一つの採取依頼の書かれた紙をテーブルの上に置く。
それを受け取り内容を確認すると、薬草の採取依頼のようだった。
難易度としては最低ランクのもので王都の近くで採れるものを採る、それだけだった。
「依頼を出しに受付に行くわけでもなさそうだったし、その割には剣や武器を持っていないから、多分魔法が使えるんじゃないかなって思ってね。」
フォルクスは俺が内容を確認し終わったのが分かったのか、そのタイミングで勧誘してきた理由を話した。
武器か、今は机が邪魔で確認できないが、確かに最初話しかけられたとき、フォルクス達は全員何らかの武器を腰に差していた気がする。
「なるほど、確かに魔法は少しは使えます。ただ今日は遊びに来ただけというか、簡単な討伐クエストがあれば明日にでも受けようかなと思って、軽く覗くだけのつもりだったんですよ。」
魔法が使える、そう聞いた時のアディルスティとダニエルの表情は期待通りの人間を引き当てた興奮からか少しニヤけていた。
「そう、なのか。だったら今日は僕達だけで行くことにするよ。明日は討伐クエストも探しておくから、もし気が向いたら明日またここに来てくれ。」
断るつもりはなかったが、どうやら断ったようにとられてしまったようだ。
「はい、それではまた明日。」
誤解を解いてもよかったが、王都もまだ見ていないところばかりだ。
クエストをやるなら別に明日でもいいと、俺はギルドから出て王都探索に戻ることにした。
読んでくれている人がいるとわかるとテンションが爆上がりします。
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何卒、何卒ぉ




