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この世界の評価は如何でしたか?  作者: シロナガスハラミ
第一章.人生に色彩あれ。
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11話.冒険者ギルドに登録

 三歳から五歳までの二年間はそれまでとは違い、ほぼ毎日予定があったからか、あっという間だった。

 ほとんどは授業だったが、四歳になってからは時々貴族の子供達用の小規模なパーティーに参加させられることもあった。


 そこでは子供だけではなく、その親達とも話す機会がある。

 四歳になってすぐ、そういった貴族社会に顔を出す者は少ないらしく、天才やら秀才とまではいかなくとも、ヴァーミリオン家に特別頭が良いのが産まれたということはすぐに噂になった。


 五歳になるまでの一年間で、俺は貴族社会というのはかなり狭いと感じていた。

 確かに煌びやかというべきか、華やかなものではあったが、良いことも悪いこともすぐに広まってしまう。


 誰もが人を品定めしながら生きているような、少しでも気を抜くと喰われてしまう。

 そう感じさせるような圧迫感とも言うべきものを孕んでいた。


 それは、悪意のようなものではなく。

 「生きるために必要な行為をただしている。」そんな感じだった。

 だからこそ真剣に必死に悟られないように、確実に観察され続けていた。


 そうでないと感じる人も少数だがいた。

 貴族の人間でも一部はいたが、パーティーに招待された子供用のおもちゃを売る商人達なんかがより品定めされていないと感じた。


 たぶん、俺に悟られるような人間が下手なのだ。

 商人なんて今後のお得意様を探して当然だろう、そんな人間が品定めしないわけがない。

 そういう人達は、俺のような素人は気付けていないだけなんだろう。


 俺がこの世界に転生することを決めたのは、ずっと笑っていたかったからだ。

 魔法で静電気を起こして髪の毛を立たせたりして、集まったまだまだやんちゃ盛りな子供が何人か友達になれそうだったが、ずっと貴族として生きていたいとは思えなかった。


 しばらくの間、この世界で生きていく手段を探すことを今後の目標にした。

 魔法を研究する研究者のようなものや、俺に授業をしてくれていた家庭教師のように生きていくことも考えた。

 そうやってこの世界の職業と呼べるものを探しているうちに見つけたものが、魔物を狩って生きる冒険者というものだ。


 俺は前世では社会になじめなかったのだ。

 前世にあるようなものは、どうしても拒否反応が出てしまった。


 誰でもなれる職業だが、誰でもは続けられないもの。

 職業を探し初めてすぐに見つけられたものだが、一瞬のミスで腕を失う、命を失う。

 冒険者という仕事を見つけても他のものも探していたが、これぞ異世界そう呼べるようなものはこれぐらいしかなかった。


 これ以上探し続けることも非効率的だと思った俺は、王都に向かう前に何の予定もない完全な休みを一週間作ってもらい、冒険者ギルドに行くことにした。


 家を出てすぐ見える村、そこにある木造の支部に行く。

 初めて行く場所というのは、どうして入る直前で急に今まで感じていなかった緊張が一気に来るのか。

 意を決するように一気に扉を開くと、何かの革で作られた鎧をきて、各々の武器を持った人達がいた。

 異世界の冒険者ギルドというと、喧嘩上等みたいなイメージがあるが、五歳児が来てもちらっとこっちを見られるくらいだった。

 意外だったのは、男女比率が一対一くらいで筋骨隆々の男ばかりみたいなわけではないことだ。

 俺と同じような年代の子供と呼べる人もそれなりにいた。


 冒険者の礼儀なんてものは知らない、俺には可能な限りなめられないように表情を引き締めて中に入ることしか出来なかった。

 受付を探して、適当な席に座って、説明を受けて帰る。

 今日はそれだけやればいい、一つ大きく深呼吸をしてから、おじさんというべき年齢に差し掛かっている受付がいる席に向かう。


------------------

<受付視点>


 スカーレット王国ヴァーミリオン家直下の比較的平和な村で、冒険者ギルド支部に務めて十数年。

 普段通り受付をしながら事務作業をしていると、見たことのないやたら身なりのいい子供が冒険者ギルドに入ってきた。

 このギルドに来る子供は、この村で次男以降として産まれた子しかいない。

 豊かで魔物の少ないこの村は農業が盛んで、長男は家を継ぐだけでちょっとした商人より安定して稼ぐことが出来るからだ。


 だがそんな村の人間よりも、上等な服を着ている子供が来た。

 遠目から見ても目立つ赤い髪、対面すると瞳の色も同じだとわかる。

 それだけなら、平民でもいるが服まで良いものとなると、この近辺ならヴァーミリオン家の方だけだろう。


 王族に近しい髪色を持つ方々で、貴族社会においてはそれだけで羨ましいがられるとか。

 我々平民において「貴族」というのは縁遠く、それ故に憧れでもある。

 私がヴァーミリオン家で見たことがないのは、次男のフランク様と最近お生まれになったという次女のケイト様だけだ。


 見るからに男児で、ケイト様とは年の頃もあわないことから、この方はフランク様なのだろうと推測して業務に当たる。


「初めまして、冒険者ギルドは初めてですか?」


 笑顔で質問する。

 私の推測が正しければ、初めてなのは知っている。

 だがロバート様もクリスティアナ様も見えないことから、お忍びの可能性も考慮して私は気付いていませんよというポーズを取っておく。


「はい、今日は具体的な仕事内容などを伺い来ました。」


 この年頃としては落ち着いていると言うか、表情も声の抑揚も少ない話し方だ。

 私の密かな自慢として、ロバート様も私も幼かった頃、一度だけお話させていただいたことがある。

 オーランド様もそうであったが、この方も顔立ちこそクリスティアナ様に似ているが、声や、雰囲気がその頃のロバート様にそっくりだ。


「なるほど、まず冒険者ギルドで仕事をする場合は登録が必要です。そして、冒険者の仕事というものはその土地で必要とされていることをする何でも屋の側面が強く土地によって様々です。この村では近辺の森で指定された種類の薬草を取ってくるものや、魔物が村の近くで確認された際にそれを討伐するものが多いです。」


 貴族として言うならフランク様は、オーランド様に万が一のことがあった時に家を続けるための人だ。

 フランク様も立ち回りは、苦しいところではあるだろうが、私が紹介した仕事でフランク様にもしものことがあれば私はこの村に住み続けることは出来ないだろう。

 私個人としては、フランク様には危険なことはせずゆっくりと生きていてほしいものだ。


「冒険者の登録というのは何か費用が掛かるようなことはありますか。」


 聞くことを事前に決めて来られているのだろう、あくまで淡々とした受け答えだ。


「いいえ、そう言ったことはございません。魔物を討伐した経験であるとか、いくつかの質問にお答えいただくだけでどなたでも登録可能です。」


 冒険者ギルドというのは結局依頼を紹介するだけだ、冒険者自身は各々の生存に直結する強さを重要視する者が多いが、ギルドとしては依頼の成功率が高いのなら簡単な仕事をこなす弱い人も構わない。


「しばらく依頼を受けることができないかもしれないですが、一定期間依頼を受けないとその登録が解除されるなど、今登録してしまうと何か不都合が発生する可能性がないなら今日登録してしまいたいのですが。」


 おそらく、五歳になるとあるという王都でのパーティーに参加するためだろう。


「冒険者ギルドからの除名は、依頼に対する虚偽の報告等の発覚や、手足を失ったなど冒険者として依頼が依頼が完遂できないとギルド側が判断した場合、王国法に違反した場合などで起こります。」


 つまりは王国の貴族として生きるのであれば、ほとんどギルドから除名されることはないということだ。

 ロバート様はそれを聞いても安心した様子でもなんでもなかった。


「そうですか、わかりました。登録の手続きをお願いします。」


 それから、名前や、魔物の討伐経験、魔法が使えるかなど事務的に聞きいていった。

 魔法を使えるのは知らなかったが、名前をフルネームで偽名も使わなかったことでお忍びではないのはわかった。


「以上で登録は終了です。こちらが発行したギルド証になります。身分証にもなりますし、再発行は有料となりますので紛失しないようご注意ください。」


 登録完了の際に言うことになっているセリフをいい、ギルド証を渡す。


「ありがとうございました。また、しばらくしたらお世話になると思います。」


 フランク様はそう言い、席を立ち、貴族の式の礼をされた。


「かしこまりました、その際にまたご不明なことがございましたらお声がけください。」


 私も立ち上がり、頭を下げてそう言う。

 そうして、フランク様はギルドから去っていった。


 お一人で来られていたことは、ご両親にお話されているのだろうか。

 一度ギルド長に相談しよう。


 ただ今日こうして、私が登録に立ち会えたことは、今後また一つ私の密かな自慢になるだろう。

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