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夜哀朝喜  作者: 紅玉
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夏休みが終わりそうで辛いです。\(^o^)/

 目を覚ました。虫の声が少し聞こえた。白い天井を見て、思う。


「ここは、どこだろう。」


 少し朦朧とした頭を回転させる。涼しい室内は頭を冷やしやすいように感じた。

 先ずは、周りを見渡そう。

 1人用のベット、今寝ていたもの。申し訳程度の家具、棚は空だ。何時から寝ていたのか、時計は11時を指していた。

 この部屋は使用の痕跡がなかった。なぜ、自分はここに居るのか。謎は解けない。

 

 だが、最も目を引くのは、ベランダに繋がる大窓だった。

 片側だけ開け放たれたカーテンに近づく。夜空が光を吸い込んでいる。

 窓からは、壮大な宇宙を感じさせる、夏の大三角が見えた。

 つい、届かぬと知っていても、手を伸ばす。あの星まで何光年かも知らずに。

 勝手に開けてもいいものか、と少し考えもしたが、状況確認の為にもと理由を付ける。


 なかなか新しい建物のようで、物音一つ立てづに戸は開いた。

 クーラーの付いた涼し気な空気と対照的に、湿気のある空気が皮膚を押し付けていく。真夏に足を踏み入れる。


 白い手すりに掴まって、あぁ。とため息を着いた。

 満天の星空、と言っていいだろう。恐らく始めて見たであろう星々は、優しく光を放つ。

 一瞬だけ、呼吸を忘れるほどには、自分は魅了されている。都会の星空なのに、妙に星は目立って見えた。


 対照的に、眼下には光が目を刺すビル群と、川がある。ここからでは数え切れない程の数の光。そこには、数え切れない程の数の人々が居るのだろう。

 きっとそこに自分は混ざれないのだろう。なんとはなしにそう思った。

 自分の中では、いずれも知識としてしか無かったものだった。

 しばらく余韻に浸っていたい。そう思っていた。


 その時。カツンカツンと、頑丈なベランダの床を蹴る音がした。つい体をビクッ震わせた。

 もしかしたら、寝床の供給者か、と思い安心しかける。だが誘拐の可能性を捨てきれないのでは?と気付いた。

 何しろ中学生男子の肉体では、成人男性なんに勝てる訳もない。これは詰んでいるのか?

 もう一度耳を澄ます。

 

 いや、そんなことは無い。どうやら足音は、随分軽いようで、自分のものと変わりないようにすら思う。

 ならば。それなら、先手必勝!思い切って振り返って見るしかないだろう。


 深呼吸して、一気に背後に体を向けた____


 驚いた。


 腰程まである絹の長髪が、生温い夜風に靡く。月明かりに照らされ、銀色に輝いて見える。

 長く伸びた影の上に、カツンと靴を置いた。

 爛々と輝いた紅玉の右眼は、宙の星よりずっと明るく、ビルの光よりも目を貫いた。


 誘拐者にしては驚くほど華奢な、その体はどう見ても少女だった。

 その視線は、自分の目線と同程度の高さから浴びせられていた。


「綺麗ですよね。この星空も、街も。」


 鈴のような音で彼女は囁く。


「こんな景色、初めて見たので。ついつい見上げていたのです。」

「あ、うん。綺麗、だね。」


 戸惑いながら、応えた。綺麗だ、と言うのは星ではなく。ましてや川やビルでもない。


 美しいな、そう純粋に思った。


 そこで正気に戻る。別段蠱惑的な訳でも無いのに、星々よりも魅了されたような気がした。


「あ、あの」

「はい?」

「ここは何処、貴方は誰って状況なんだど・・・・・・。」


 思わず焦って質問した。


「ああ、そうですよね。ここは日本の星河市。私は貴方の姉の、いちごです。」


 今、姉って言った?


「あの、すみません。えと、見覚え無い気がするんだけど。」


 やっぱり洗脳的誘拐犯が有り得る気もしてきた。自分に姉は居ないはず、と思った。


 でも、記憶にないということに気づいた。姉が居たか、以前に親がいたか、どこに住んでいたかも、思い出せないというより、記憶にそもそもなっていないような感覚。

 見かねて彼女が声を掛けてくれた。


「多分、記憶喪失のようなものであるかと。朦朧とした感じはありませんか?」


 バッチリ心当たりがある。ただ喪失すると言うよりも、ピースすらなく、何も無い気がするのは気のせいだと信じたい。


「そうかも。」

「そうですよ。推測ですが。」


 言い方的に彼女は自信がありそうだ。


「ところでなんでさっきから敬語なの?姉、だよね。」


 気になったので聞いてみた。


「それは簡単ですね。初対面だからです。」


 ・・・・・・やっぱり姉を名乗る不審者とかいうオチだろうか?


 

 

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