18.ゾーラの武器①
「よし、訓練場はこんなもんで良いとして、今度はゾーラの武器を創るか」
「私は後回しでよろしいですよ?」
「ゾーラには色々と助けられたし、それにドラゴンに継ぐ実力者はゾーラだと思っている。確かに魔物達を復活させれば話は変わるが、すぐに戦えるかは分からない。ゾーラの武器にした方が確定要素が多いんだ。だから、ゾーラを優先する」
「⋯⋯畏まりました。有難く、受け取ります」
「ありがとう、じゃ101階層の宝物庫に転移するか。あそこに素材がある」
「素材を使って創るのですか?」
「その方がSPの節約にもなるし、多分1から創るとSPが足りなくなる」
「そのような大層な物でなくともよろしいのでは?」
「さっきも言ったが、俺はゾーラに感謝している。だから、これは感謝の気持ちでもある。だから最大限の事はするよ」
「⋯⋯ッ!ありがき幸せ」
「そんなに畏まらなくても⋯⋯まあ、いいや。じゃあ転移するよ」
「はい」
俺とゾーラは101階層にある宝物庫に転移する。
俺達の前には黒に見えるが黒と言い難い物体が美術館や宝石店で宝石が入れられているような小さなケースに入っている。
今回、ゾーラの武器の素材になる物だ。
俺が使う素材は『ダークマター』色々な物質の性質を持つ。
つまりは、色々な物質に変化可能と言う事だ。
「道具創作は使った事あるけど武器は初めてだな」
とりあえず創作を開始する。
・武器:刀
・使用素材:ダークマター
・スキル:性質変化
・使用SP:10万
高!
素材使ってんのに凄い高いぞ!
ダークマターは様々な性質を持つからかなりのSPはするの予想出来るがそれはあるしな。
刀と言う武器の形質が日本由来だからいけないのかな?
えーでも、それって剣の形を少し変えただけやん。
スキルがいけないのかな?サネルどうよ?
《スキルは特に関係ありません》
フーム。
鞘は後から作ろして、これでいいか。
ゾーラに言った通りだが、俺はゾーラに感謝しているのだ。
ここまで付いて来てくれて、ここまで一緒にいてくれて、その感謝に比べたら10万SPなら問題ないだろう。
あとは、形をイメージ図として。
「創作」
ダークマターがケースを突き破って俺の目の前で徐々に形を変えて、刀になっていく。
俺が持っている地球知識の本に刀を入れているのでゾーラも刀だと分かる筈だ。
眩しい光を放ち、収まるとそこに1本の刀がある。
刀身は黒く、柄も黒い。真っ黒な刀が俺達の前に現れた。
俺はその刀をゾーラに渡す為に手に取ろうとする。
「痛!」
「大丈夫ですか!モレク様!」
「ああ、問題ない」
ダークマターの刀に触ろうとしたら、電撃みたいな物が出て来てビリッとした。
これは、俺には触れる事もできないようだ。
「なんだこれ?」
核納してあった鑑定の魔眼球を取り出して鑑定する。
・名無し(ダークマター刀) 神話級
・魔剣:使用者無し
・スキル:性質変化
なんじゃこりゃあ?
神話級?本当に絵本とかの中でしか聞いた事ないぞ。
そもそもなんで分かるんだよ。
《それはダウンロードした事によって鑑定で見える概要が増えたのです》
なるほどね。
神話級って最高クラスの武具じゃあねえかよ。
・ちなみに武具の等級
・『雑魚級』『普通級』『希少級』『特別級』『伝説級』『神話級(ゴッズ』『創造級』の順
え?創造級?なんだよそれ?
《神話級の上です》
ん、見せてくれたからそれは分かるけど、聞いた事が無かったから。
まあ、それは置いて置いて、どうしたものか?
「この刀どうしよう」
「よろしいですか?」
「どうした?」
「いえ、少し」
そう言ってゾーラはダークマター刀の塚を握り、掲げる。
⋯⋯これも剣の才能が必要なようだ。
・魔剣は使用者を自ら選ぶ性質がある
・魔剣は自分の意思がある
なるほどね。
「て、ゾーラ!」
ゾーラがクラクラした後に倒れそうだったので、急いで駆け寄り受け止める。
そのまま部屋に転移して、ベットに寝かせて置く⋯⋯事は出来なかったのでこのまま俺はその場で正座してゾーラの頭を自分の膝に置く。
なぜ、部屋に転移出来ないかと言うと、気絶?したゾーラは未だに右手にダークマター刀を握っているからだ。
「どうして⋯⋯」
《魔剣と契約しているのかも知れません》
「契約に移ると気絶するのか?」
《正確には精神世界での契約ですので気絶よりも眠っいるの方が近いかもしれません》
「そうか」
どっちでも良いからこのままゾーラが起きないって事は辞めてくれよ。ほんと、頼むから。
◆
「ここは?」
ゾーラは精神世界にいる。
辺りは見渡す限り何も無く、ただの暗い空間である。
眠っているわけでも無いのか、体は自由に動かせる。
それだけではなく、足場が無いように見えるのに、きちんと立つ事が出来たのだ。
ゾーラは辺りをキョロキョロと見渡している。
地平線すら分からいので見渡しているのが正しいのかも分からない。
「モーレークーさーまー。モレク様ー。モレク様!」
モレクの匂いも気配もしない事でモレクが居ない事は分かっているゾーラだが、どうしても叫びたくなるような孤独感があった。
『おい、そこの人よ』
「モレク様!モレク様!モレク様!」
『おい!聞いておるのか!そこの女!』
「モレク様!モレク様!モレク様!モレク様!モレク様!etc.」
『少しは我の話を聞かんか!モレク様連呼している紅髪の蒼い瞳のメイド姿の女よ!』
「⋯⋯私の事ですか?」
『逆に聞こう、お主以外にこの場に誰がいる?』
「あなた」
『我は物体を持たん故にお主には声しか聞こえんだろうが!』
「そうですね」
『⋯⋯偉く冷静だな』
「早く出してください。モレク様の元に返してください」
『まあ、待て、ここはお主の精神世界だ』
「そうですか教えてくれてありがとうございますさっさと返せ」
『だんだんと口調が悪くなっているな?まあ、良い。なんか面倒だし流す。⋯⋯我はお主が握った刀だ』
「そうですかどうでもいいですモレク様の元に返せ」
『お主はなぜ力を求む?』
「いつあなたに力を求めましたか?強いて言うならモレク様の為ですモレク様の元に返せ」
『我がお主の魂に宿り、我を使いこなせばお主は強くなる。お主が強くなれば我も強くなる。我は依り代を欲し、お主は力を欲し』
「私が欲しているのはモレク様ですモレク様の元に返せ」
『だが、我にもきちんとした所有者が欲しい。故に、お主が力を示し、我が認めたら契約を果たそうではないか!力を示す方法はなんでいい!見せてみよ!そして、我を使いこなす力を示せ!』
「はぁ〜力云々、契約云々、うっさいなぁー」
『え?』
「そんなんどうでもいいですよ。私は私であるが故にモレク様の傍にお仕えしないといけない。こんな胡散臭い声如きに私の人生を邪魔して欲しくありません。そもそもなぜ私だけが力を示さなくてはいけないのですか?あなたも見えせてください。私に使われるような刀なのなら、私に似合う、モレク様の役に立つ武器だと証明してください。さっきから一方的に余裕給、しかも姿を見せずに声だかとか、舐めてます?ふざけてます?常識が無いんですか?第1創られた存在の癖に偉そうなんですよ。モレク様に創られた分際でどしてモレク様に電撃を打った?あれに私は激怒していますよ?モレク様に創られた事を感謝するのが先でしょう?何が依り代ですか?何が魂ですか?私が強くなればあなたも強くなる?あなたが居ないと私は強くなれないのですか?うんな訳無いですよね?分かったらさっさと返してください。モレク様の顔がみたいです」
『え、あ、ああ、えっと、まずは仮の体を持って会話する常識は枯渇していた。今、見せよう』
罵詈雑言はスルーしたダークマター刀。
ダークマター刀の仮の体とは?!




