13.ゾーラの初めてのお使い
ゾーラとドラゴン
「帝国はあっちの方です」
『了解した』
ドラゴンの背に乗り、剣を腰に担ぎ、メイド服を来ているとゆうシチュエーションは奇妙だった。
『ちょっと質問良いか?』
移動中にドラゴンはゾーラに質問したいと問う。
「その代わり私も質問良いですか?」
『ああ、まず、こちらから。管理者様はこの先挑戦者が来たら⋯⋯命を奪えるか?』
「⋯⋯分かりかねます。モレク様はお優しい方ですから。ですが、その代わりに私がモレク様の障害を、どんな人でも⋯⋯殺します。それが例え家族、勇者、魔王であったとしても」
『そこまでする理由は?』
「⋯⋯愛している⋯⋯からです」
頬をピンクに染めながら照れくさそうに語るゾーラ。
『管理者様との出会いを聞いて良いか?』
「分かりました!なら、まずは10年前の出会った日から1日刻みで細かくお伝えしましょう!」
『あ、やっぱり良いや』
ドラゴンは滅茶苦茶話が長くなると察し、話を打ち切る。
ゾーラは特に怒るでもなく、質問を伝える。
「貴方達は死んだら核石に成りますよね?」
『ああ、そうだが?』
「それで、どうやって喰らったのですか?」
『⋯⋯まあ、分かっていたか』
「ええ、味方を喰らって養分を補給していたのですよね?」
『ああ、そうだ。胸糞悪い思い出だよ』
「やっぱり生きている人達を食べたのですね」
『⋯⋯』
「核納庫にはミノタウロスの核もありました。ミノタウロスは非常に美味と聞いた事があります。美味しかったですか?」
『そんな質問するか?普通?味なんて感じないわ!ただ、申し訳なさと感謝、後は悔しさだな。我々では迷宮の総管理なんて出来ないので』
「そうですか、どうして外では魔物は死体で残るのにダンジョンでは魔石になるんですか?」
『核石になるからな。味方に殺されたら魔石は残ってなかったよな?挑戦者は我々を殺すと魔石を得られ、魔石の再生に掛かる時間は我々は再召喚出来ない』
「なるほど、魔石の再生時間がクールタイムって事ですね」
『そうゆう事だ。それと、もう1つ質問だが、⋯⋯管理者様はこの世の人か?』
「フッ、モレク様はモレク様、それ以外は有り得ません。モレク様がどんな人でも私は気にしません。モレク様が私を要らないと申すなら私はモレク様の傍を離れます。モレク様が私に『死ね』と言うのなら私は迷いなく自害を選びましょう。貴方はモレク様がどのような方か気になりますか?もしも違う世界の人だったとしたら否定しますか?拒みますか?」
『いいや、しないね。気になるが、それだけだ』
「それならば良いです」
『なあ、さっき「生きている人」と言ったが我々は魔物だ。「魔なる物」に人と言うのは良いのか?』
「モレク様は貴方達を駒、兵とは思っていません。1個人として見ています。ならば、1人と言った方が合いますので」
『あんたらは変わってるよ』
「そうですか」
『あとどんぐらいだ』
「もう少し先ですね。やはり、その間にモレク様の勇士を⋯⋯」
『⋯⋯遠慮する。そもそもそれを全部話すとどのくらいの時間を有する?』
「ふーむ」
考える素振りをして、口を開く。
「5日くらい?」
『本当に出会ったその日その日の事を覚えてそうだな。あんたの記憶能力はおかしいだろ』
「そうゆう体質です」
『はは、スピード上げるが、良いか?』
「良いですよ」
『んじゃ、行くぞ!』
それから数分後
「この辺りに隠れていてください。ここから徒歩で向かいます」
『ああ、気を付けてな』
「はい」
ゾーラはドラゴンを帝国近くの森の茂みが生い茂っているところに隠れるようにお願いして徒歩で帝国に向かって徒歩移動する。
「メイド服で森の中を歩くのは失敗しましたか?動き易い服で来るべきでした」
本の僅かな後悔を漏らしながらとぼとぼと森の中を進む。
途中雑魚に出会ったが難無く進む。
「はぁ〜速くモレク様に会いたい」
ドラゴンの移動速度が速く馬車では1ヶ月以上掛かる道のりを空を飛び数分で着いて、ラストダンジョンからまだ1時間も経っていない。
「そろそろ森を抜けて街道に出そうですね。メイド服着ているので目立つでしょうね。それに、剣もあるし。メイドなのに主人が居ないだけではなく徒歩って、⋯⋯結構目立つな」
今更後悔しても遅いので街道に向かって進む。
ここで幸運が起こる。
帝国の入口が空いて居たのだ。
「これなら並んで30分で入れそうですね」
帝国は人口が多いは当たり前で、冒険者も多数おり、商人達の出入りも激しい為に何時もは4時間ほど待たされるのだ。
それが30分程度なので凄い空いている。
「何かあったのでしょうかね?」
そんなどうでもいい事を考えながら列に並ぶ。
前に並んでいる人にチラチラと見られているが気にしない。
男連中はゾーラの用紙にニヤつき、ある男は近くにいる女性に殴られている人もいた。
女性陣でも一瞬呆然するほどの美貌を持っているゾーラは見られてイライラしてる。
ゾーラは人に見られる事を好まない。
メイド服のまま来たことに更なる後悔が降りかかる。
(モレク様なら見てもらいたいですが、⋯⋯こんな有象無象に視線を送り続けられるのは少々辛いですね)
むしろモレクになら自分の隅から隅まで見て欲しいと思っているゾーラであった。
それからそんな列も終わり、帝国に入場を果たす。
門番の兵達にに身分証等を提出して中に入るのだが、門番の兵はゾーラの顔を、スタイルを、色々見て思った事が『頭大丈夫か、この嬢ちゃん?』だった。
その兵達の顔は数日は寝ていないレベルに疲れ切っていた。
休みが取れないで交代するまでの時間ずっと身分証の検査や諸々をこなして疲弊していたのだろう。
「さて、まずは家畜を買いに行きますか。確かあっちの方だった気がする」
昔にモレクと、その他とその側近達と帝国に来たことがあり、その時に見た地図を思い出しながら進む。
動物の絵が描かれた看板がある店に到着する。
この店は家畜の売買を行う店で、動物の家畜を買えるのは勿論、生肉も扱っているので肉の購入もできる。
「それで、牛、豚、をオスメス分けて4頭づつ下さい」
「分かった。金はちゃんとあるんだろうな?」
「こちらで」
アイテム袋から必要分のお金を取り出す。
「持ち運びはどうする」
「それはこちらで準備しております」
「そうか」
店主は奥にいるであろう人に大声で声を掛けて家畜を持ってこさせる。
ここでゾーラはあることをする。
店主の方が背が高いのでとても有能な手を使う。
片手を口もをグーで隠すように、それも照れくさそうに、頬をモレクの事を想いながら染めて、上目遣い、可愛らしい声を頑張って出す。
「これで、お金は全て使い切ってしまいましたが、⋯⋯これで農場が発展すれば⋯⋯」
ぶりっ子風のあざといポーズと声音を使う。
正直普段の冷静クールのゾーラからは全くイメージが付かない言動である。
一般男性が見たら1発で堕ちるであろうその可愛さに、筋骨隆々の頑固者風の店主はとゆうと。
「これで金、全部使っち待ったのか?」
「⋯⋯はい」
目を少しうるうるさせる。
これはモレクに無視された事をイメージして出しているのである。
モレクに邪魔と言われればその場を去るゾーラであるが、本音はモレクの傍を離れるのは辛いのだ。
その場面をイメージする事で半泣き状態にしてキープしている。
「⋯⋯嬢ちゃん、今回だけ特別だからな。牛1頭分の金を撒けてやる」
「ありがとうございます!」
それはとても嬉しいそうな前回の満面の笑み浮かべて礼を述べるゾーラ。
今回はモレク頭をなでなでして貰ったイメージを想像しての笑顔だ。
この笑顔には家畜を持ってきた店員も、店主も『ドキッ』としてしまう。
その後、ゾーラはトラップに動物をしまってアイテム袋にしまう。
店主、店員は『ぎょえええ』としていたが、ゾーラは人差し指を立てて自分の口の中央に持ってきて、透き通る声音で言う。
「私達の秘密ですよ?」
『は、はい』
店主ですらただ、返事しか、できなかった。
店を出たゾーラは植物の種が売っているところの店に向かって歩を進める。
「チョロ」
そう、誰にも聞こえない声で呟いた。




