0.プロローグ
この世はクソだと思う。
理不尽な暴力を振るわれる毎日。
親に相談しても、先生に相談しても、のらりくらりと躱される。
両親が愛しているのは俺の妹、先生は不良が怖くて役にたたない。
結局は自分の身が1番重要なんだろう。
「学年1位もあんなに陰キャならね〜」
「仕方ないよね〜」
俺は勉強だけなら出来ていたが、それが妬ましくいじめにあっている。
しかも、俺はファッションに全く興味がなくてそのせいで陰キャと言われている。
家に帰ったら部屋に直行して部屋着に着替えてパソコンに向き直る。
勉強は出来ると言っていたが、そこまで勉強なんてしてない。
ただ、学校でやった事をその場で覚えているだけだ。
「さてと、俺は俺の世界に入りますか」
パソコンのゲームを起動する。
俺は、他人を信用しない。
俺は、他人と協力しない。
俺は、ずっと一人でいい。
これが俺の座右の銘である。
ゲームでもソロなのだが、幾つかのギルドを一人で潰し回っている。
かなり潰したら運営から直接メールがきて色々と報酬が貰えた。
「ゲームなんて、攻撃パータンや攻撃範囲を完全に覚えれば簡単簡単」
少し疲れたので俺は棚から昨日届いたラノベを読み漁る。
面白い。
ファンタジーはとてもいい。
現実では起きない事を感じる事が出来るラノベは最高だ。
この作品も他人が作った物だが、その人はとても素晴らしい発想をしていると思う。
「おい!カス、金貸せよ」
扉を勝手に開けて金をせびるのは我が妹だ。
地域の人や学校の人、両親は妹の事を性格も見た目も良いと言っているが、俺にとってはこの性格はないと思う。
猫を被り過ぎだ。
「嫌だ」
「あぁ?てめぇに拒否権ねぇんだよカス!貸さないなら?お兄ちゃんに襲われそうになったって両親と地域の人達、みんなに言うからな。わかったなら貸せよ」
ほらな、クズだろう?
金を貸して出てって貰って、それから数時間後にご飯になって呼ばれた。
並んだご飯はお米だけで、両親や妹は既に食べ終わっている。
何時もの光景。
俺はただの白米を食べて洗い、部屋に戻ってゲームを起動する。
運営から報酬みたいな物が貰えたが、実際はこれ以上ギルドを荒らすなって事だろう。
『あのボッチチーターに俺のギルド潰された』
オープンチャットをチラッと見たらそんな戯言が書いてあった。
ボッチチーター、それは俺の名称の1つだ。
プレイヤー全員俺がチートを使ってないと知っているが、行動パターンや攻撃のしかたなどがチートに見えるからこの呼び名が付いた。
そもそもこのゲームは大きいゲームで、チーターなんかいない。
「まあ、チーターは悪くないんだけどね」
他には、ギルドクラッシャーとか、孤独のデビルとか、漆黒の実行者とか、少し恥ずかしいモノもあったりする。
しかし、ギルドを荒して、ダンジョンを攻略しているが、俺には攻略ではなくて。
「ダンジョン経営をしてみたい」
それが俺の夢だ。
笑いたければ笑え。
バカにするならしろ。
現実なんて、クソだ。
ダンジョンマスター系の漫画、ラノベは大抵読み漁った。
かっこいい、それが理由では無い。
人とゆうゴミと関わらずにモンスターを育成して強くし、ダンジョンを攻略しに来た人を倒す。
なんて、素晴らしいのだろうか。
だから俺はゲーム運営の1人になりたくてひたすらプログラミングの勉強をしたり、どんな武器が強く、ただしバランスが丁度いいかも色んなゲームで勉強している。
強すぎる武器があると面白さが半減してしまう。
放置ゲーなんてのは甘えだ。
「はぁ〜こんな現実よりもそんな現実の方が楽しそうだ」
そう呟きながら大規模ギルドを壊滅寸前まで荒した。
勿論、俺が最終的に負けている。
大規模相手だと大抵こんなのだ。
多勢に無勢、人は万能では無いのだ。
「さて、寝ますか」
寝ようとした俺の相棒に一通のメールが届いた。
また、何処からかの運営からのメールだと思ったが違う。
「えーとなになに」
そこにはこう描かれていた。
貴方はとても素晴らしい生活を数々のゲームで残し、それをソロで成し、努力も惜しまない。とても素晴らしいです。質問です。
・貴方はこの世界が嫌いですか?
YES\NO
・貴方はこの世界に未練がありますか?
YES\NO
・貴方は何を望みますか?
入力してください
「なんだこれ?」
しかし、なにかに引かれるような感覚が現れた。
これに従えば人生が変わるかもしれないとゆう何とも不確定要素の高い内容だが、そうする方が良いと感じた。
「この世界が嫌い?当たり前だ。学生は力が全て、大人は世間体、金、権力が全て、こんな世界の何処が良い?未練?ラノベの続き等がまだ残っているが、まあ、それを除くと無いな。望み?」
俺の望みは。
・ダンジョンマスター
「それが俺の願いだ。ただ、もしも、もしもこの流れがラノベ的な展開なら異世界に行きそうなので、1つだけ言います。せめて、アニメ、漫画、ラノベの続きは見させて」
送信した。
それから俺はベットに横になって明日どうなっているか楽しみにしながら寝た。
翌日
「現実ってこんなもんだろうな」
見慣れた天井、見慣れた壁、見慣れたフィギュアに本棚と本達。
何よりも、俺の相棒が机の上に乗っていた。
「まあ、そんな都合の良い話は無いよな。はは、───クソ!」
壁を殴り付ける。
期待してしまった。よく分からん不確定要素に期待をしてしまった。
期待をしたら後悔が降ってくる。
俺の短い人生で学んだ事ではないか!それを、忘れてしまった。
相棒のメールボックスを見る。
「あのメールは夢なのか?」
昨日見たメールはメールボックスにはなかった。
惨めだ、期待して、それが夢で、何も⋯⋯何もなかった。
「こんなんで泣くとか、俺もまだまだだな」
それからいつものように朝飯を食べて学校に向かう。
「学校に着いたらあいつらの机を拭かないとな」
俺をいじめて来るやつらは毎朝俺に机を吹くのを命じている。
従わなかったらカツアゲされるだけではなく、スマホのゲームを消されると脅されている。
叶わなかったら、家まで押しかけると脅してくる。
家にはダメだ。
あの妹と居るし、俺の半身とも言っても過言ではない相棒が居るのだ。
「はぁ〜クソうぜえ太陽だな」
眩しすぎる。
頭を掻きむしりながら何時もの通学路を歩いていると、急に頭が痛くなった。
ただ、数秒で治った。
「なんだ?」
何の痛みだったのだろうか?
「ワン!わんわん」
なんだと振り返ると、野良犬と思わしき凛々しい犬が居た。
「ぐぅーワンワン」
そう吠えて俺にゆっくり近付いてくる。
「なんだ?わんこよ」
「わん?」
「?」
「ワン!」
「がはぁ。な、何しやがる」
痛い、目が、俺の右目が潰された。
犬が跳んできて爪で俺の目を引っ掻き潰したのだ。
俺は、逃げた。
「なんだよ」
しかし、犬には叶わなかった。
「痛い!」
ふくろはぎを噛まれた、噛みちぎられた。
「痛い、痛い。なんだよ。なんだよお前!」
「グルル」
既に足も動かない。
嫌だ、怖い、怖い。
「だ⋯⋯」
誰か!と、叫ぼうと助けを呼ぼうとしたが、その前に顎を噛みちぎられた。
数秒後、俺は事切れた。
そして、この日、ある高校生の死体が無惨に噛みちぎられた姿で道路に転がっていたとニュースになった。
あの犬の姿は防犯カメラにも写ってなかった。
ただ、高校生がもがいて、そしてふくろはぎが削られ、顎を噛みちぎられ、色々な所を不可解にちぎれていく。
このことは都市伝説の1つとなった。
『謎の無惨死』
そして、高校生の魂は違う世界に行く事になった。
その高校生の願いを叶えて。
面白ければ幸いです。




