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第6話




 温かな風が頬を撫でる。もうすぐ四月だ。

 ようやく冬の寒さも終わりだ。

 私が今いる村も、春らしい温かな空気に包まれていた。


 15歳になった私は、今も冒険者として活動をしていた。

 

 ちょうど、村の防衛依頼を受けながら、子どもたちに剣の指導をしていた。


「ルクスお姉ちゃん、いくよー!」

「うん、かかってきて」


 私が木剣を構えると、少年少女たちが木剣を持ってとびかかってきた。

 それを受けとめながら、私は村の状況について思いだしていた。


 この村には、村を守れるような立場の人がいなかった。

 若い人たちはみんな村を出て行ってしまっている。

 今剣の指導をしているこの子たちも、孤児院で預かっている子たちだった。


 孤児院に泊めさせてもらっているため、自然と仲良くなっていった。

 遠くでは、ティルガが心地よさそうに眠っている。

 その背中には、微精霊たちも乗っている。


 ……魔人は結局、今のところ一度も遭遇していない。

 ティルガと微精霊たちと一緒にあちこち冒険しているけど、特に何もないんだよね。


 まあ、楽しいからいいんだけど。

 子どもたちへの指導も一段落がつき、私が額の汗を拭っていると、


「る、ルクスさーん!」

 

 血相変えた様子の村人が私の前で足を止める。彼は大きく呼吸を乱し、膝に手をつける。


「どうしたの? 何か事件?」

「そうなんですよ!! こ、子どもたちが魔物狩りに行くんだって外に出て行っちゃったみたいで!」


 子どもたち。

 私が指導している子どもたちは、他にもいた。

 確かに、今朝その子たちはこの稽古に来ていなかった。


 焦りの混じった村人の叫びを、ティルガも聞こえたようですっと体を起こしている。

 私は、駆けつけた老人の肩を掴み、じっとその目を見る。

 

「落ち着いて。子どもたちがどの方角に向かったか分かる?」

「に、西門から外に出たのは分かりますが……それ以上は――!」

「それだけわかれば、十分。すぐに探しに向かうから。安心して」


 ゆっくりと言い聞かせるようにそう言うと、私の隣にティルガが並ぶ。


「力を貸そう、ルクス」

「うん、お願い」


 ティルガの体が、ぐんと大きくなる。

 私の魔力を使い、その体を巨大化させた後、私の首根っこをひょいと掴んで背中に乗せてくれた。


「微精霊たち、子どもたちを見かけたら教えて」


 背中に乗りながら近くにいた微精霊にそう言うと、ティルガは一気に駆け出した。

 村を数秒で駆け抜けると、西門に到着する。

 西門、といってもそこまで立派なものではない。

 木でできたそれは、大柄な魔物が体当たりでもすれば壊れてしまいそうなものだった。


 高さも三メートルほどしかなく、ティルガはひょいと飛び越えた。

 着地の衝撃は、ティルガの風魔法によって吸収された。

 その勢いのまま、ティルガは外を走り抜ける。


「ティルガ、どう? 匂いはする?」

「花粉症で鼻がつまっていて……あまり匂いは追えそうにないな」

「……うん、そう」


 ティルガはそこまで鼻が効くわけじゃない。あんまり期待はしていなかった。

 その時。

 私の近くをふわふわと飛んでいた微精霊たちが、耳元でささやく。


『あっちにいるみたいだよー!』

『魔物に襲われて、交戦中だよー! 大変かもー!』

「分かった。微精霊たち、子どもたちの援護をしてあげて」

『うん、分かった!』


 ……子どもたちには精霊魔法も教えている。

 子どもたちが精霊魔法を使おうとすれば、私がお願いした微精霊たちが力を貸してくれるはずだ。

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