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世界最高の精霊術師  作者: 木嶋隆太


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第38話




 部屋で目を覚ました私は、用意してもらっていた制服に袖を通した。

 部屋に置かれた姿見の前で自分の服装を確認してから、部屋を出た。

 朝食の時間ということもあってか、隣の部屋からちょうどアレアが姿を見せた。

 私の左右は、運がいいのか悪いのかアレアとラツィの二人だった。


「お、おはようございます」


 ぺこりと慌てた様子で頭を下げてくるアレア。

 その頭には派手な寝癖ができている。


「アレア、寝癖」

「うえ!? あっ、ほ、本当です!?」


 彼女は慌てた様子で髪を整えていた。

 共に歩いていこうとすると、アレアの隣の部屋からのそのそと一人の女性が部屋から出てきた。

 眠たそうに目をこすっているのはラツィだ。


「……おはよう」

「おはよう。眠い?」

「……朝、苦手」


 ラツィは昨日絡んできたときの元気がなかった。

 いつもこれなら静かでいいかも。と思ったのは密かに胸に隠しておいた。

 新人の私たちの部屋は五人とも同じフロアだ。

 まだ私は残りの二人は見ていなかった。


 朝食を食べるため食堂へと向かう。食堂が解放されるのは6時から8時までの間。

 今は7時だけど。


「……人、多い」

「この時間は……次からはやめた方がいいかもですね」

「……うん。今度は六時にしようかな」

「ろ、六時。起きられないわよ……」

「まあ、別に一緒に食べるわけじゃないし」

「ちょっと待ちなさいよ……あたしも一緒に食べたいんだから。そういうこと言わないでよ」


 くいくい、とラツィが服の裾を引っ張ってくる。

 普段と違って随分と弱々しい。

 まだ脳が眠っているのかもしれない。




 それから、私たちは何とか席を確保し、朝食を終えた。

 私たちは所属している師団が違うため、精霊術師棟に到着したところで別れることになった。

 くるり、とアレアが振り返り笑顔を浮かべる。


「そ、それじゃあ、みんな、今日も一日頑張りましょう!」

「うん」

「ふん、負けないわよ!」


 朝食を食べたところで元気を取り戻したラツィが、昨日と同じ調子で声をあげた。

 別にライバル意識を燃やすわけではないけど、私も二人に負けないように頑張らないと。

 階段を上がり、第三師団の事務室がある部屋へと向かう。


「おはようございます」


 事務室の扉を開け、中へと入る。すでにファイランとベールド様が室内にはいて、ベールド様がこちらに気づいた。


「ああ、おはよう。ちょうど良かったよ」

 

 ベールド様がにこりと微笑み、席を立つ。

 こちらへと近づいてきた彼は、一枚の紙を差し出してきた。


「今朝、調査依頼が来たんだよ。キミに、初任務として任せようと思うんだ」

「……初任務?」


 渡された紙へと視線を向ける。


『フィロッソの街にて、子どもが消える事件が発生している。その調査を行ってほしい』


 内容はそれだった。

 私はちらとベールド様を見る。


「それが任務の内容だよ。なんでも一ヵ月ほど前から行方不明者が増えているらしいんだよ。だから、その原因の調査を行ってほしいんだ。現地の騎士や精霊術師ではお手上げみたいなんだ」

「……それで、宮廷に依頼が来た、ということ?」

「そういうこと。任務はそれほど難しいものではないと思われるし、今回は別の新人の子と一緒に調査に当たってもらうことになっているんだ」

「分かった」


 私は首肯し、その紙を折りたたんだ。


「それじゃあ、旅の準備をして一階のフロアに10時までに集合してね。ああ、宿とかは向こうで手配してくれているから、必要最低限の荷物があれば問題ないよ」

「食事とかも全部?」

「そうだよ。宮廷精霊術師の任務は衣食住すべて準備はしてくれているからね。ただ、不満がある場合は自分で別に用意する必要あるけどさ」

「滅茶苦茶豪華」


 たぶん、私はだいたいの生活で満足できると思う。


「はは、宮廷精霊術師になって良かったかい?」

「うん。美味しい物がタダで食べられるなんて嬉しい」

「素直でよろしい。その代わり、しっかりと任務を達成するようにね。それが、宮廷精霊術師の仕事だよ」

「分かってる」


 私がこくこくと頷いていると、ベールド様は少しだけ真剣な目になった。

 それまでとは違う雰囲気。大事な話、だと思う。


「一つだけ、気を付けてね。……たぶんだけど、この事件。魔人が関わっていると思うよ」

「魔人……!」

「なんでそこで嬉しそうな声になるんだいキミは?」

「だって、強い相手と戦える……!」

「まったく……。まあ、そうだね。無茶はしないようにね。五人で連携して、魔人を討伐すること。いいね?」

「頑張る」


 私が拳を固めると、ベールド様は首を縦に振る。


「それじゃあ、十時に一階のフロアに集合だからね。旅の準備をしておいで」

「分かった」


 ベールド様に返事をした私は、準備のために寮へと戻っていった。


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