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【義妹SIDE】辺境伯様の周辺に人だかりができている

「な、なんですの! この人だかりは!」


 現地に着いたガーベラはあまりの人混みに驚いていた。そこは辺境伯の領地付近であった。


 人っ子一人寄り付かないと言われていたその領地付近に、大勢の人々が押しかけていたのである。


 なんと賑やかな状況であろうか。とてもあの人っ子一人寄り付かない『辺境伯』の屋敷とは思えないのである。


「ありえませんわ……こ、これは何かの間違いに決まっております」


 ガーベラは慄いていた。


「きゃー! ウィリアム様よ!」


「ウィリアム様! 素敵!」


 周囲の女子たちが黄色い声をあげていた。


「なっ!?」


 そこにいたのは金髪に白い肌をした、どこぞの王子様としか見えない殿方だったのである。


 社交界で数々の美男子を見てきたガーベラではあったが、それでもこれほどの美男子は未だかつて見る事がなかった程である。


「あ、あれが噂に名高い辺境伯……ウィリアム様だとおっしゃいますの。とても野獣のようには見えません。信じられませんわ」


 ガーベラは驚いていた。


 しかしガーベラの驚きはそれでは済まされなかったのである。さらなる驚く事態へと発展していくのだ。


「きゃー! 見て見て夫人のシャーロット様よ!」


「シャーロット様。良いなぁ。あんな素敵な旦那様と幸せになって」


「私もあんなウィリアム様のような素敵な殿方と結ばれたわ」


 取り巻きの女子たちが各々そう述べていた。


「なっ!? ななっ!?」


 屋敷の中にいたのは煌びやかなドレスを着た女性である。間違いない。シャーロットだ。綺麗な恰好をして化粧もしているから別人のように見えるが。


 ガーベラが『獣臭い!』と虐げてきたあのシャーロット本人なのだ。見間違いかと思ったが、何度見ても間違いない、本人だ。


「ど、どういう事ですの! あの獣臭い女! シャーロットは醜い化け物のような辺境伯のところへ嫁いだはず! それがなぜこんな事に!」


 ガーベラは俄には信じられなかった。そして時間が経つにつれて、どういうわけかはわからないが目の前に起きている出来事を現実として信じられるようになってきた。


 その後湧き上がってきた感情は猛烈な嫉妬心。独占欲。


 自分より明らかに劣った存在だと思っていたシャーロットが、美丈夫の妻になっているという事だ。


 これはガーベラにとって絶対に許せない事であった。ガーベラは猛烈にその美丈夫。ウィリアム伯を手に入れたくなったのである。


 ガーベラは恥も何も知らない女であった。ずかずかとその屋敷の領地に入って行ったのである。


 シャーロットからウィリアム伯を横取りする為にである。昔から欲しいものは何でも手に入ると思ってきたし、手に入れてきた女なのだ。ガーベラだ。


 故に今回も手に入れられると本気で信じていた。


 


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