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第7話 魔王、すれ違う想い。

 私はのら猫、名前はチャッピー(と呼ばれている)。

 ※チャッピーについては第2話を参照


 最近、うざい奴に付きまとわれている。


 今年も冬が終わり暖かくなってきたため、私は新しい昼寝の場所を探していた。


 探すといっても、前から狙っていた場所があるのだ。


 それは、ある家の木製のテラスだ。


 去年使っていた昼寝場所も寝心地は悪くはなかったが、建物に周りを囲まれていて、太陽が陰るのが早かった。


 その点、今狙っている場所は寝心地も良さそうな木製のテラスであり、目の前は駐車場で建物がなく太陽が陰るのも遅い。


 まさに、一級の物件なのである。


 しかし、その場所は既に図体の大きい白猫が陣取っているのだ。


 端っこで良いのでと、何度か前足を踏みいれようとしたが、そのたびに追い返されてきた。


 しかし、今年はあの白猫は別の物件を見つけたようで、ここは素通りして近付こうともしなくなった。


 これはチャンスである。


 優良物件が空き家になるなど、そうなかなかある事ではない。


 そして、本日、めでたく私はこの物件で背中を丸めることができたのだ。


 木製のテラスに背中を擦り付けて、入念にマーキングをする。


 もう、この物件は私のものなのだから。


 しかし、それは突然にやってきた。


『ガシャ!』


 ビク!


 何かと思い、テラスに繋がる窓に目を向けると。


『ガシャ! ガシャ!」


 うわー(棒読み)


 茶白柄の家猫が、網戸に爪をかけて仁王立ちになり、私を見下ろしていた。


 たまにこういう家猫がいるのである。


 社会生活を営んでいる外猫は挨拶を重んじる。


 ましてや、初対面の場合は挨拶に特に気を使う。


 敵意がないことをアピールし、少しずつ近づいてやっとの事で鼻先を重ねられるのだ。


 この時に、万が一にでも相手と目が合ってしまったら敵意があると判断され即喧嘩になってしまう。


 挨拶は慎重に何十分もかけて行うことだってある。


 限られた場所でお互い上手くやるためにも、猫は社会性を大事にする生き物なのだ。


 だが、猫の社会性とは幼い時の失敗を糧として養われるものであり、その失敗を知らない者は社会性という言葉すら知らない。


 この私の前でドヤ顔をしているこの家猫もその一匹なのであろうと思う。


 無礼な行いをした奴には、ひとまず拒絶を意味する言葉をなげかける。


「シャーー!」


 これで大体の家猫はビビって家の奥に……あれ?


 なんか、満足げな顔をしているのはなぜだ!?


 流石に本能的に伝わってくれるとは思っていたが、当てが外れてしまったようだ。


 では、次は怒りを意味するこれで伝わってくれるだろうか。


「う゛〜〜……」


 この時、相手の目を見ることで、より敵意があることをアピールする。


「……」


 な、なぜだ!


 全くコミュニケーションが成り立たない。


 なぜ、こんなにも屈辱的な仕打ちをされているのに、お前は満足げな顔をしてるんだ!?


 あ、わかった気がする。


 あの、白猫がここを離れた理由が。


 優良物件が空き家になるということは、それ相応の欠陥が発生したということだ。


 まぁ、でも寝心地、日当たりは申し分ないので、無視することで上手くやっていこう。


 気にしないという事も、社会性の一つなのだから。


『ガシャ!』


『……』


『ガシャ!』


『……』


『ガシャ!』


『……』


『ガシャ!』


『……』


『ガシャ!』


『……』


『ガシャ!』


『……』


 ウゼーーーーー!!


 こいつのこのモチベーションは一体どこから来ているんだ。


 翌日も、そのまた翌日も状況は変わらなかった。


 でもまぁ、なんだ。


 向こうは私を拒絶しているわけではないようで、むしろ友達になりたいという眼差しをむけてくる。


 私はお断りだけど。


 まぁ、悪くはないかな。


 それに、毎日来ている私もどうかしているのだと思う。


 今日も、あいつの視線を感じながら昼寝でもするとしよう。


『ガシャ……』

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